鉄道模型 ドイツ連邦鉄道 DB 2軸無蓋車 Omm 55 888 289(TRIX 23932)

Güterwagen DB Gattung Omm 55 (TRIX 23932)

 今回は、戦後ヨーロッパの標準型無蓋車となったUIC TYPE 2のDB版 Omm 55について紹介します。 

 なお、今回もそうですが、確たる証拠が少なく、下記の内容には誤解や間違いが少なからずあると思われます。

 どうかご容赦お願いします。

(For English/German speakers: Review of the TRIX 23932 HO scale DB Gattung Omm 55. Please use your browser's translation feature to read the full text!)

Güterwagen DB Gattung Omm 55 (TRIX 23932)

 互いに国境を接し、線路の接続がある欧州では国境を超えた車両運用が昔から行われてきました。

 欧州では機関車牽引が一般的なので、多くの場合、機関車は国境で交換し客貨車のみが他国へ乗り入れることになります。

 そうなりますと、必然的に連結器やブレーキホースなど共通性がなくては運用できません。

 そこで1922年、国際列車運行の円滑化や、技術の標準化を通じて国境を越えた鉄道輸送を改善することを目的としてUIC(国際鉄道連合)が設立されました。

 なお、UICは欧州中心で構成されますが、日本も国鉄、JR共に参加しています。

Güterwagen DB Gattung Omm 55 (TRIX 23932)

 このUICで最初に取り組んだのが、自国以外での貨車の取り扱いでした。

 欧州における国際貨車運用に関しては、ドイツにおけるデンマークの鉄道研究の第一人者である Sebtus-Dänische Einsenbahnに非常に上手にまとめられておりますので、参照をお願いします。

 いずれにしても、1922年にRIV(国際貨車規則)が定められ、技術基準を始め、ルールが定められました。

 しかしRIVでは、国境を超えて使用された貨車を空荷で本国へ返却する必要があるなど運用上の問題がありました。

 これを受け、国をまたいだ形で貨車をプールし自由に使用できる取り組み「共同貨車プール「EUROP」」が1950年、ドイツとフランスの間で発足しました。

 この取り組みにはその後、多くの西欧諸国が参加しています。

 一方、当時の東側諸国では、西側に対抗してOPWという貨車プールが設立されています。

 また、EUROPで使用する貨車の共通規格(UIC 571)について、有蓋車と無蓋車がまず最初に定められました。

 このうち欧州で最も一般的な2軸の無蓋車については、UIC 571-1として定められました。

 理解しにくいのは、有蓋車の規格も同じUIC 571-1であることです。

 なんで有蓋車と無蓋車と車種が異なるのに、同じ規格番号にしたのでしょうか?

 なお、ハイフン以下は統一されており、-1は2軸、-2はボギー車とのことです。

 それはともかく、2軸無蓋車のUIC 571-1については、TYPE 1とTYPE 2の2種類が定められました。

 以前のフランス型無蓋車の記事でも書きましたが、TYPE 1はフランス、ベルギー、オランダの無蓋車が基礎となっており、片側の側面には積載ドアが二個所あり、全長は9mです。

 ただし、SNCFのSTANDARD Dとは異なり、妻面に積載フラップを装備しています。

 一方、TYPE 2は、ドイツ起源の無蓋車であり、側面のドアは1箇所で、全長は10mと長くなっており、妻面に積載フラップを装備しています。

 以前紹介したOm Ludwigshafenの記事でも触れましたが、ブレーキなしは両側の、そしてブレーキ操作台付は片側の妻面に装備された「妻面フラップ(Stirnwandklappen)」は、当時の欧州の主要港や工場、発電所などにあった傾斜高架台(貨車を前後に傾けて中身を落とす荷役設備)で、石炭や鉱石を一気に荷下ろしするために不可欠な構造でした。

 国民性の強い仏独だけに、標準化でも譲らなかったのでしょうか?

 EUROプールでは、TYPE 1、2の両方とも使用できましたが、TYPE 1はフランス、オランダ、ベルギーが採用し、残りの加盟国はTYPE 2を採用しました。

 なお、フランス、オランダ、ベルギーも後にはTYPE 2を採用しています。

 反面、ドイツではTYPE 1の採用はありませんでした。

 ただ一つ、ザール地方から編入したOmmp 50はTYPE 1に類似していますが、当方過去記事通り、妻面にフラップがなく、側面にピラミッド状の膨らみがあるのでTYPE 1ではなく、生産時期が合致するもっと古いSTANDARD A/Cだと思います。

 確証はありませんが、スイスやオーストリア、イタリアでもTYPE 1の使用はなかったか、あっても少数だったと思われます。

 なお、歴史のタイムラインとしては、共同貨車プール「EUROP」の発足(1950年・1953年拡大)と、UICによる標準貨車の設計作業は「ほぼ同時並行、あるいはEUROPの要求が先」というのが正確なニュアンスとのことで、理由として、プール組織「EUROP」を真に効率よく運用するためには、「どこの国の貨車であっても、同じ容量で、同じ部品で直せる共通の貨車」が絶対に必要でした。

 そのEUROPからの強い現場の要請(および1950年の設立合意)を受けて、UICが急ピッチで「欧州標準車(UIC Wagen)」の仕様(のちのUIC 571規格)を策定したという、「現場の必要性(EUROP)が、共通規格(UIC 571)を後押しした」という密接な関係にあルトの情報が得られました。

Güterwagen DB Gattung Omm 55 (TRIX 23932)

 話を戻しまして、戦後のDBの2軸無蓋車の経緯を簡単に説明しておきますと、第二次世界大戦によりドイツの鉄道は車両、施設共に壊滅的な打撃を受けました。

 既に東西冷戦が始まっており、ドイツの復興は西側諸国にとっても必要であり、その重要基盤となる鉄道は最優先事項でした。

 中でも最も数を必要とする2軸無蓋車については、戦争で失われた車両を急ぎ充足する必要がありました。

 そこで、ドイツの鉄道(DB発足は1949年)は、戦争で損傷を受けたり、戦時中の酷使で損耗した車両の修理を急ぐとともに、積極的に新車の導入を行いました。

 車両の充足は、喫緊の課題であったことから、時間のかかる新設計ではなく、実績のある戦時型Ommu Klagenfurtをベースにし、戦災の打撃が残るドイツ国内の生産工場だけではなく、外国での生産も行いました。これがOmmu Duisburgです。

 Ommu Duisburgは1949-52年の間、約26,000両が製造されました。外見上、殆どOmmu Klagenfurtと同じですが、車体下部がトラス構造になっています。

 また損傷修理は単なる復元ではなく、車体更新なども行いました。

 DBは、1952年にウェルディンゲン貨車工場との協力のもと、戦前型とは異なる全金属製のOmm 52を開発しました。

 1952年から1962年の間、14,919両が製造されたOmm 52は、戦前型無蓋車とUIC571-1に準拠した貨車の中間的な位置づけの車両です。

 具体的には、中央にドア1箇所、妻面フラップありなど主要寸法はUIC規格に準拠しているものの、構造は大きく異なり、側面の柱がドアの近傍にしかありません。

 

 次に作られたのが、UIC 571-1 TYPE 2に準拠したOmm 54と55です。

 実質的には同一の車であるOmm 54と55ですが、額面上、Omm 54は戦前型Om 12と21の更新車(Umbauwagen)、Omm 55は新造車ということになっています。

 しかしBRAWAの説明では、 Omm 54はUmbauwagenと言いながら実質上、新造車であり、ブレーキだけを元車から転用したとあります。

 一方、こちらで紹介するOmm 55は、新造車です。

Güterwagen DB Gattung Omm 55 (TRIX 23932)

<Omm 55主要諸元>

 バッファ間距離: 10.0/10.5m(ブレーキ操作台の有無)、軸距: 5.4m、積載量: 20t 

 Omm 55は1955年から1962年の間、17,300両以上が製造されました。

 DBでは1994年に引退しています。 

 型式はEp. 3 Omm 55 → Ep. 4 E 040となりました。

 1970年以降、ブレーキを変更し、100km/h対応のEs 040になった車体もあります。

 見ての通り、Epoche 3仕様です。

 EUROPプールの車両なので、国境を超えて使用してもドイツに返却する必要はなく、その国で整備すれば使用し続けることが出来ます。

 ただし、全検は所有国で実施する必要があります。

 模型的にはEUROP標記の車は、時代が合えば国が混じっていても問題ないことになりますね。

 さて、このUIC 571-1 TYPE 2ですが、戦後型のドイツの無蓋車Ommの標準的なボディとなりました。

 DBは資金的に苦しかったのか、貨車の製造において、新造車がなかなか認められなかったようで、Omm 54が実質上ほぼ新造車だったのに、議会対策として表向きはOm 12/21の全面更新車とされていたことなどその顕著な例かもしれません。

 そんなこともあり、旧車の全面更新(主要部品のみ転用し、その他は新造)や車体更新が多く実施されました。

 新造車よりも生産量が多いこともあるくらいです。

 それでOmm 52以降に製造されたUIC 571-1準拠のボディを持つ2軸無蓋車は、下記の通りです。

Ep. 3  Ep. 4  生産数 備考

  • Omm 54  E 039  10,589  上記説明通り
  • Omm 55  E 040  17,300  UIC Typ II 新造車。
  • Omm 44  E 034   2,563  戦時型貨車Omm 34のシャシーとブレーキを転用し、  UIC Typ II準拠ボディを架装。
  • Omm 43  E 033   5,352  戦時型貨車Omm 33のシャシーとブレーキを転用し、UIC Typ II準拠ボディを架装。
  • Ommr 42 E 032   1,922  戦時型貨車Omm 32のシャシーとブレーキを転用し、UIC Typ II準拠ボディを架装。
  • Omm 49  E 036   1,145  チェコタトラ社製のOmm 39にUIC 鋼製ボディを架装
  • Omm 46  E 035   6,523  解体されたOmm 343537の部品を使用して製造

 このように多くの無蓋車でUIC TYPE 2(に準拠した)のボディが使用されています。

 なお、Omm 52より後に製造されたDBの2軸無蓋車について、ボディが概ねUIC 571-1準拠ではないかとGoogle AIに訪ねたところ、「そんなことはない」という回答でした。

 首を傾げましたが、同AIから同時に、

  • Omm 51とは、UIC TYPE 1のことであり、DBでは約18,000両が使用された
  • Ommr 42のボディは木造である。理由として元車であるOmm 32の全長は「9.1m」なので、Omm 32のボディを新造したOmmr 42はUICボディではない。

 というような明らかに事実ではない回答がありました。

 上記の間違い2点ですが、当方が調べたところ、Omm 51とはUIC TYPE 1のような積載ドアが2個所ではありません。

 18,000両が量産されたOmm 52の試作車であり、形状は中央にドアが1箇所です。

 生産も試作の少数に終わっています。というかOmm 51の経験も活かしてOmm 52が量産されています。

 一方、Ommr 32の全長は、回答とは異なる10.1mです。また当方が写真で確認したOmmr 42のボディはどう見ても木造ではなく、細部の形状は異なるものの、UICに準拠しておりました。

 Google AIはまだまだ発展途上にあり、ドイツの無蓋車のような超ニッチな話題には、追従しきれていないのでしょう。今後に期待と言ったところですね。

 その後AIから、「AIは、側方ダンプ貨車である「Ommi 51(のちのF-z 120)」、もしくは試作車である「Omm 51」の形式名と、生産数を完全に混同しています。」との返答がありました。なるほどですね。

 

 実際、超辛口で鳴るModellbahnfloklerのページにおいても、Omm 53/54/55、そしてリビルト車Omm 46を全く同一の車種としています。

 そういう点からも、Omm 53/54/55以降の2軸無蓋車は、UIC TYPE 2に準拠したボディを持っていたのではないでしょうか?

 なお、言うまでもありませんが、上記の内、新造ではなく、元車のシャシーを転用しているOmm 44~49は、軸距が異なる場合がありますし、UIC TYPE 2そのものではなく、転用シャシーに合わせてサイズが変わっていたり、構造が違っている可能性があります。

 ただし、この手のリビルトないし車体更新無蓋車の実車写真は、探してもほとんど見つ蹴ることができなかったため、残念ながら肝心な実物との検証は、現時点では取れておりません。

 このあたり、ドイツの貨車の聖典(バイブル)とも言える、Stefan Carstensの著作(MIBAのGüterwagenシリーズ等)があれば判明するのでしょう。

 Carstens氏は現在もご自身のブログ(Eisenbahn-Dokumentation Stefan Carstens)などで精力的に貨車研究や新刊の情報を発信されており、その飽くなき探究心には本当に頭が下がります。

 それにしてもこの手の話は、日本なら盛り上がりそうなんですが、彼の地には本当に情報がありませんでした。

 大分話が脱線しましたが、TRIXのOmm 55はMärklin製品であり、合併後の2000年代以降の製品であるためプラスチック製シャシー仕様となっています。

 Modellbahnfloklerの評価詳細や同サイトの傾向を踏まえると、古い古典金型を用いた製品に比べ、本製品はディテールや走行性能において現代水準に近付いていると考えられます。

Güterwagen DB Gattung Omm 55 (TRIX 23932)

 そのせいかどうかわかりませんが、Märklinのボディは同社の軸距が異なるOmm 44などにも転用されています。

 HOのOmm 53/54/55の模型は、BRAWAが大変よく出来ているようですが、私は実物を見たことがありません。

 第一、欧州でも47.41ユーロ!!と破格の価格であり、歴史的円安の中、私にはとても手を出せるような代物ではないのが残念です。

 BRAWAの製品は、従来の製品とは一線を画す繊細な出来ですが、他社に比べて価格が高く、特に貨車は日本ではほとんど売っていないようで、中古市場に出回ることは殆どありません。

 また仮に出回ったとしても、なぜか一般的ではない私有貨車ばかりなのが不思議です。

 その後のAI情報では、BRAWAは多種の製品を出しているが国鉄制式機は手放さず、その代わり実に多く発売されている私有貨車は、手放されやすいのではないかとのことでした。

2026/8/12 記

 


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