鉄道模型 フランス国鉄 SNCF 無蓋車 CMt 20t(Hornby-ACHO 708)
以前も記したように、1984年に欧州型HOを始めた私にとって、フランスの鉄道模型は縁遠いものでした。
それもそのはず、当時から2010年頃まで、フランスの鉄道模型メーカーは極めて低調な時期にあったからです。
今回紹介するHornby-ACHO、Frans Train、RMA、AS、SMCF、VBなどは既に活動を停止していたはずですし、TABは高級すぎる上、まず入ってこなかった。
僅かにJouefが入ってくることもありましたが、当時のオーストリアやドイツのメーカーより明らかに出来が悪いように見え、手を出すことはありませんでした。
この状況が変わったのは2020年代以降の話で、REE Modeles がそれまでどこも手掛けなかったフランス型車両の大変精度の高い製品を発売しているようですが、高価な上に入手が難しく、私にとって、フランス型が身近にならないのはあまり変わりません。
そんな中、Hornby-ACHOの貨車だけは、なぜか安価な中古が一時期出回りました。
同社が発売していた貨車は、色違いを除くと全部で20種類に満たないくらいと思いますが、結果として半数以上を入手することが出来ました。
そのどれもが他社から発売されていないか、あるいは2020年代以降に、REEが発売したような珍しい形式ばかりです。
今回はそんなHornby-ACHOの貨車の中から、SNCFの無蓋車を紹介したいと思います。
とその前に、Hornby-ACHOですが、英国の老舗鉄道模型メーカーHornbyが、欧州大陸に進出するにあたり、1960年に立ち上げたHOの新ブランドです。
ちょうど、英仏Dinkyのようなものですが、鉄道模型の場合、プロトタイプの違いだけでなく、1960年当時においても、OOとHOは一緒に遊べない別規格だったことが認識されていたからですね。
しかし、Hornby本体が1965年に経営危機に陥ったこともあり、その活動は1973年で終了しました。
同社が盛んに活動していたのは、1967年頃までのようなので、この無蓋車も約60年前のものとなります。
それで貨車に限らず、鉄道車両を調べるには形式記号が役に立ちます。
しかし、この製品にはなんて書いてあるのかいまいちよくわかりませんし、フランスの型式記号についてはちんぷんかんぷんです。
日本とは違い、欧州において鉄道車両の詳細を説明しているHPは全くと言っていいほどなく、Web検索を行っても出てくるのは模型店の販売ページばかりで、実車について調べるのには、正直とても苦労します。
今回もHorby- ACHO 708について調べましたが、実車との関連が伺われるような記事は、残念ながら皆無でした。
そこで、昨今流行りのGoogle AIに「Hornby-ACHO 708について教えて欲しい」と聞いてみたところ、「SNCFのStandard D」であるとのこと。
ただGoogle AIには間違いが多いので、根拠ページを見てみました。
正直言ってこのページはすごいです。
解説文が少ないのがやや残念なものの、貨車の写真がこれほど豊富なページは見たことがありません。
写真自体も大きく、鮮明ですし。
ドイツ系の鉄道フォーラムは著作権の関係からか、写真がほとんど削除されてしまっていますので、尚更そう思いました。
それでこの車両ですが、少なくともStandard Dではありません。
理由として、Standard Dは、車体側面の2個所の積載ドアを除いた車体側面と妻面は平面で構成されていますが、この模型は全てにピラミッド状の膨らみがあります。
よって、Standard Dではないことは明らかです。
この側面の膨らみは、フランス型貨車特有のものと思いますが、上記のHPには、模型のように頂部が尖っているものと、ピラミッドの頂部が平らになっているのものがありました。
数としては、後者の方が多く、後述のように模型は全長が短いので、さらに調べますと、尖った形状の膨らみを持つ戦前型のOCEM 19/29というのがあることがわかりました。
幸いなことにREE ModelsのHPに写真や図面がありました。
その結果ですが、軸距がStandard A~Dの5mよりも短い4.5mであるなど、模型に近い点もあるのですが、大きな違いとして、積載ドアのストッパーが棒状であることが明確に違うので、OCEM 19/29ではないと結論しました。
ということで、上記HPの写真、そしてスポーク車輪を装備していることから、Standard Aであると判断しました。
なお、Standard Aですが、HPの内容を引用しますと、
「フランス国鉄(SNCF)は、戦時中に策定された設計図と仕様に基づき、アメリカの民間企業に1万両の無蓋貨車を発注した。これらはStandard A型貨車であった。納入は1947年から1949年の間に行われた。これらの貨車にはブレーキは装備されておらず、白いパイプ(主ブレーキラインとの連続性を確保するための単純なパイプ)のみが取り付けられていた。最終組み立てはフランスのブレスト兵器廠とシェルブールのアミオ工場で行われた。これらは通常ブレーキのないA型であった。2度目の発注として無蓋車 4,000台が発注されたが、部品として納入され、フランスの工場で組み立てられた。これらはスタンダードC型で、1949年から1950年にかけて運用が開始された。これらは通常ブレーキを装備したタイプ「C」ワゴンであった。」
以上、引用終わり。
上記の説明からするとC型かもしれませんが、C型の写真はないので、詳細は不明です。
それから今回根拠にした車体のピラミッド状の膨らみですが、無蓋車の性質上、痛むので側板を交換できるようにリベット構造になっているそうで、実際、平板に交換した写真も掲載されておりました。
さて、一見してHorby- ACHOの無蓋車はショートスケールであると思っていましたが、上記HPに掲載されているStandard Aの図面と比較すると以下の通りでした。
HO実物/模型 バッファ間距離(以下全長): 102.2/92、車体長: 88.6/78.5、軸距: 57.5/46.2 単位mm
やはり1/87よりも約1cm小さく、スケール換算ではそれぞれ、1/96.7、1/98.1、1/108.2となりました。
なぜか車体よりも軸距が相当狭くなっていることがわかります。
本件、面白い話があり、Google AIに聞いたところ、「Hornby-ACHO 708は全長110mm??であるため、完璧なスケールモデルである」との返答がありました。
しかし、何度実測しても全長は92mmです!!
これはおかしいと思い、さらに調べたところ、なんと同社のカタログで、多くの貨車が110mmと書いてありました。
それも明らかに模型の全長が異なる車種まで全く同じ110mmと記されていたのです。
こんないい加減なことがあるのかと、正直呆れましたね。
いずれにしても、708は完全なショートスケールであること、そして軸距は車体以上に短縮されてしまっていたことが確認できました。
あと残された疑問として、Standard Aにはブレーキは装備されていないという記述がありますが、こちらには装備されています。
これもAIに聞いたところ、後に装備された車両があるそうです。ほんとかどうかわかりませんけど。
板厚は厚いですが、各部がしっかりと作られているのがHornby-ACHOの特徴と思います。
この無蓋車の形式名ですが、写真からはTであると思います。
T=Tombereaux 自動翻訳ではダンプカーだが、無蓋車?
妻面には積載ドアはありません。
フランスの無蓋車には妻面の積載ドアはなく、Standard Dのヨーロッパ共通規格UIC TYPE 1になって初めて設置されました。
TYPE 1はStandard Dだけでなく、類似の形状のSNCBやNSの無蓋車の設計も取り入れられているようですが、当方のDB Ommp 50の記事の通り、少なくともNSのE 222(GTOW)にはドアがありますね。

60年前の製品としては、別パーツのエアタンクなどよくできている方かと。
特筆すべきは軸受と車輪で、軸受には金属板が使われ、またプレーン軸端の車軸や車輪もしっかり作られています。
このあたり、Jouefとは明らかに作風が異なる模型と思います。
連結器はアメリカ型のX2Fに類似したHornby-ACHO特有のもので、他と連結できないため、ROCOのカプラーを使って自作しました。
バッファの基部が異様に短いように見えます。
上記の通り、ショートであると言ってしまえばその通りなのですが、ややゴツいながらも車体のモールドはシャープですし、オーバースケールながらカバーや荷物を止めるリング、ピラミッド状の膨らみがドアは平坦で、車体は尖っているなど、今から60年前の模型としては、結構良い出来と思います。
Modellbahnfroklerで問題視される車軸受けの形も悪くありません。
あくまで個人的感想ですが、間延びしてしまっているMärklinのOmmpu 49よりは、まだ似ているような気がします。
ただし、なぜか軸距が車体よりもさらに短くなってしまっており、これが実感をスポイルしてしまっていると感じます。
Standard Aの軸距は5.0mであり、決して短い方ではないので。
そこで、手持ちを調べたところ、本製品のシャーシーは同社のNo. 700車掌車と全く同じでした。
というか、Hornby-ACHOの貨車は、多くの例で何種類かのシャーシーを兼用しているのですね。
このように実際にはサイズの異なるシャーシーを兼用している例は、欧州の多くのメーカーが行っていますけど。
車体が無塗装なのは、時代的に仕方ないのかもしれません。
ただし、SNCFの無蓋車 T ******は茶色だったはずなので、Google AIに聞いたところ、確かに一般的には茶色だが、石炭輸送用の貨車は灰色に塗られていたとの回答でした。
確かにうちには、灰色に塗られたPikoのSNCF(SGWの私有貨車)のUIC TYPE 2(DB Omm 54/55と同型)があります。
時代的にレタリングは良くないです。
CMt 20tでしょうか? 意味がさっぱりわかりませんでしたが、Google AIの回答では、
「C:ダンプワゴン(石炭、鉱石、木材などのばら積み貨物を輸送するために使用される、側面が高い開放型ワゴン)を指します。
M :中型貨車(当時の標準的な積載量)を示す。
t:貨車に制動手用のプラットフォームまたは警備室が装備されているか、または停車時に使用できる特定の構成のハンドブレーキ装置が装備されていることを意味します。
20t:注文された最大積載量、つまり20トンを示します。」
だそうです。
一方、上記HPの写真によると無蓋車のレタリングは、白枠で中にSNCF +数字、改行してT、さらに改行で******の6桁車番になっており、本車とは明確に違います。
そこでこちらについても聞いたところ、SNCFでは1950年に型式標記が大きく変更されたそうで、CMt 20tは旧標記、T *****は新標記との回答がありました。
軸受に金属板が使われていますが、目立たないですね。
これは耐摩耗や走行抵抗を減らすという意味で、とても価値があると思います。
欧州型HOの貨車は今でもプラ軸受のものが多いので、これは見習って欲しいと個人的には思います。
ということで、いつもとは異なり、車種の推定記事になってしまいました。これだけのことですが、調べるには時間と手間を要しました。
なお、いつも通りですが、当方の記事には間違い等多々あると思います。
どうかお許しの程を。
<追記>
手持ちのHornby-ACHOの貨車を調べていて、面白いことに気づきました。
当方手持ちの以下の車種で同じシャーシーを使っていました。
<全長: 92mmシャーシー>
車掌車700、タンク車702、無蓋車708
<全長: 102.5mmシャーシー>
セメントサイロ車703、穀物サイロ車706
<全長117mmシャーシー>
こちらの家畜用無蓋車701、冷凍車 STEF705、牛乳運搬車712、柵柱平貨車717、平貨車718
<ボギー台車軸距: 84.5mmシャーシー>
ボギーゴンドラ車728、ボギー有蓋車7240、ボギー低側無蓋車7270
<オリジナルシャーシー>
化学コンテナ車707、ボギー石炭車ARBELL726、大型石炭車729、TP-1917ボギータンク貨車7250は、オリジナルのシャーシーであり、他とは兼用しておりませんでした。
なお、シャーシーの兼用は他社も行っておりますが、現在ほどスケールにこだわりはない時代であり、コストダウンのため、シャーシーを兼用したのでしょうね。
そうであればこちらの708がショートなのも至極当然であり、統一されたシャシーを使用したTP-1917を除くと、他のモデルも実物の長さが反映されていない場合もありそうですね。
2026/7/27 記
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