イタリア国鉄 FS 貨物用電気機関車 E 636 091号機 (ROCO 43607)
今回はイタリア国鉄 FS の電気機関車 E 636について紹介します。
FS E 636はイタリアを代表する電気機関車で、469両という大量生産がなされ、貨物列車や旅客列車を牽いて大活躍しました。
<FS E 656 主要諸元>
バッファ間距離:18.25m、運転重量:101.0t、軸配置:Bo'Bo'Bo'、軸重:16.8t、連続出力:2,100kW、電動機:6基、動輪径:1,250mm、最高速度:95km/h、後に110ないし120km/h
イタリアでの電化は、1902年より開始されましたが、最初、イタリア国鉄 FS ではイタリア北部において三相交流方式で電化を進めました。
しかし三相交流方式は架線が2本必要など問題も多いことから、1927年より、直流3000Vが導入され、イタリア全土に広がっていきました。
1934年から1941年にかけて、ミラノから長靴のつま先に当たるレッジョ・カラブリアに至るイタリアの主要鉄道網は完全に電化されました。
これは当時のヨーロッパでは早い方でした。
さて、三相交流線には大変興味深い形態の機関車が採用されていましたが、イタリア全土をカバーする直流3000Vの機関車としては、428両が製造されたE 626、12両のみに終わったE 326、425両が製造されたE 428が存在しておりました。
この三種類は、技師ジュゼッペ・ビアンキが提唱した「相互運用性」の理念に基づいて考案されたもので、保守コストと保守時間を削減することを目的として、スペアパーツの互換性を持たせていました。
ドイツの Einheits や Austauschbauart に通じる考え方ですね。
それにしても戦前の時点で、上記3車種のみで900両弱の電気機関車を生産できたイタリアもすごいですね!!
E 636はこれらのうち、E 626の代替として1937-1938年にかけて設計されました。
カーブの多いイタリアの鉄道路線の特徴に合わせ、イタリア初となる二分割車体と3つの独立した2軸台車で構成されていました。
この時代、このような軸配置の電気機関車は、他国には存在しなかったと思います。
Bo'Bo'Bo'の軸配置、分割車体により、当時の鉄道設備の許容範囲内で、より多くの車軸に重量が分散されました。
結果として、イタリアの曲がりくねった路線に非常に適しており、後のE 645/646、およびE 656にも継承されています。
また、イタリアの鉄道網には多くの急勾配路線があり、車輪の数が多いことは粘着限界が高くなり、機関車が車輪滑りを起こしにくくなるため重要だと考えられていました。
E 636は、当時のファシスト・イタリアの技術的成功例として喧伝され、最初のシリーズ10両(E.636.001-010)が1938年9月1日に発注され、1940年5月から9月にかけて納入されました。
そしてその後、戦中戦後の長年に渡り生産されました。
第1シリーズ(001~108) 108両 1940年-1942年
第2シリーズ(109~243) 135両 1952年-1956年
第3シリーズ(244~469) 226両 1957年-1962年
合計469両となります。
この数字は同時代のドイツの6軸貨物用電気機関車 BR E 94の2倍以上となります。
初号機であるE.636.001は1940年5月に就役し、戦時中の1943 年までにさらに107台が Breda、OM、CGE、Officine Meccaniche Reggiane、Magneti Marelli、Officine Ferroviarie Saviglianoなどのさまざまな企業によって納入されました。
戦災により6両が廃車されましたが、終戦後、マーシャルプランによりE 636の製造が再開されました。
戦後は、上記に加え、フィアット、TIBB、オフィチネ・メカニケ・ピストイエジ、アンサルドなどの他のメーカーも参加しました。
電動機はE 626と同じ32-200でしたが、性能が不十分なため、伝動装置や制御装置が変更された32R-200が採用されました。
第3シリーズの5両は、32R5-200電動機が採用され、台車も変更されてます。
面白いのは路線状況に合わせてか、複数のギア比が存在することで、1つは勾配や重量列車用の高変速比(21/65)で、最高速度は95 km/h(後に1948年に105 、1982年に110に引き上げられました)で、もう1つは低変速比(28/65)で、最高速度は120 km/hでした。
第3シリーズの5両には、特定の変速比(24/74)が与えられ、これも最高速度は120 km/hでした。
E.636は古い機関車のため、乗務環境は劣悪であり、騒音がひどく、居住性も劣悪でした。
一方、運転台の構造が脆弱で、前方に位置していたため、万一の衝突事故の際、乗務員を保護する機能はほぼ皆無でした。
このためトレイタリア貨物向けのE.636の200両につき、労働環境改善のため、運転室の改善が実施されています。
外観的には、夜間視認性を向上させるために義務化された第3ヘッドライトを追加したことでわかります。
ただし、運転室の安全性向上策は実施されませんでした。
大量に生産され、客貨両用で大活躍したE 636ですが、初号機の誕生から66年が経過した2006年に用途廃止となりました。
現在でも動態機を含む、複数機が保存されています。
以上、Wikipedia イタリア語版 Locomotiva FS E.636 英語版 FS Class E.636 より引用、参照いたました。
また、イタリア鉄道の電化に関しては、A brief visual history of rail electrification in Italy の記事が大変参考になりました。
模型の方ですが、Modellbau-wiki FS-Baureihe E.636 によると、Rivaossi(1970年代)、ROCO、A. C. M. E. (2014)から発売されており、ROCOの発売年は不明でした。
modellbahninfo.org には、ROCOの43607は1989年5月とありました。
Rivarossiは、1/87よりも大きく、大時代的な出来なので、本格的スケールモデルは、ROCOが初めてと言えると思います。
他製品と同様、ROCOの精度が向上していた頃の製品だけに、パンタやレタリングなど、現在でも通用する出来と思います。
独特の形状の運転室ステップですね。
車体二分割のB-B-B電気機関車は山岳線でカーブや勾配の多いイタリアの風土によく合致し、独自の発展を遂げました。
この後もE 645/646、E 656と続き、総計1,200両以上の成功作となりました。
一方、他のヨーロッパ諸国では、2両しか作られなかった SBBの Re 6/6 試作型くらいです。
分割車体の面間も狭いです。
台車も独特の形状をしていますね。
直流機なので屋上はあっさりとしています。
このマロンと濃い茶の塗装はイザベラ塗装と言うそうです。
イタリアの旧型電気機関車と言えば、この色ですね。
ダミーのエプロンのため、連結面のディテールは豊富です。
FS機は警戒色のエプロンなのですね。
前の持ち主の方が、エアホースのコック部分を塗装していますが、実感が増しますね。
ライトレンズのカバーが面白いです。
パンタはいかにもイタリア機らしい形状です。
案外表面がのっぺりとしています。
091号機なので、戦前製の第一グループに属す機体です。
走りの方はROCOスタンダードで、静かによく走ります。
E 636はこの形状の先駆者となった、イタリアを代表する電気機関車です。
その割にはROCO製品くらいしか入手できるものがなく、中古もそれほど多くはないように思います。
また時代的に塗装が発泡スチロールの害を受けてしまうことが多く、こちらも若干被害が出ています。
だいぶん前にEGSで見せてもらったのも、塗装の状態が悪くてやめたことがありました。
こちらを手に入れたのは2020年代に入ってからで、ラッキーでした。
2025/7/30 記
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