ドイツ鉄道 DBAG 特急旅客用電気機関車 BR 103 132-7号機(ROCO 63742)

 今回は、ドイツを代表する高速特急旅客用 電気機関車である BR 103.1について、ROCOの模型を紹介します。

<BR 103.1 主要諸元>

 バッファ間距離:19.5m、運転重量:114.0t、軸配置:Co'Co '、軸重:19.0t、連続出力:7,440kW、短時間出力:12,000kW、電動機:6、実用最高速度:200km/h

 1965年に試作車 4両、1970-1974年に量産車 145両が製造されました

 BR 103.1の実車については、当方の過去記事を参照お願いします。

 それで模型の方ですが、ドイツを代表する機関車であり、なおかつ実車の登場が模型鉄道勃興期にあったこともあり、ドイツの主要メーカー、ほぼ全てが模型化したと言っても過言ではありません。

 反面、人気車種であり、その分趣味人、一人一人の思い入れが強いこと、また、形状把握が難しい流線型であることから、発売されている模型には、完全に満足できるものはなく、それぞれ一長一短がありました。

 登場時期が1970年代初期でしたので、スライド金型などの高度な成形技術はまだ普及しておりませんでしたし。

 私がこの道に足を踏み入れた1980年代半ばにおいては、GFN製品の評価が非常に高く、またこの時点では入手が難しかったMärklinの試作型も人気がありました。

 ちょうどその頃、とれいん1989年10月号において、「永遠の名機ドイツ103電機」という座談会がありました。

 この中で有名な南 正時さんが、ROCOの旧製品について、メルクリン、フライシュマン、リマと比較して、「いちばんよくできていますね。」とおっしゃっております。

 上記のように、当時GFNが圧倒的に指示されておりましたので、南さんの意見は大変珍しいものでした。

 こちらが1981年のROCOの旧製品です。

 私にとって欧州型HO第一号機でもある製品で、そういう意味では確かに思い入れもあるのですが、正直なところ実車らしさという点では、残念ながら今一つという感がありました。

 うまく言えないのですが、下部ライトケースが長すぎてイメージが違うとか。

 ただしROCOの旧製品は長胴型でもあり、あくまで個人的には、太っちょのGFN製品よりはスマートさが再現されているように感じておりました。

 いずれにしても、1990年代の半ばには、1981年のROCO、1972年のGFN、1971年のMärklin、1977年の玩具的なLimaしかありませんでした。

 ちょうどこの頃、HOが1/87に統一され、また精度の向上が著しかったので、はっきり言ってこれらの製品はこの時点において時代遅れになっていたと思います。

 そんな中、1998年に満を持して発売されたROCOの新BR 103には当然のことながら、大きな期待が集まりました。

  しかし……、正直なところ当時の日本では、この製品にはあまり高い評価が与えられなかったように記憶しております。

 側面の形状は流線形でスマートな感じが出ていて、悪くないと思います。

 塗装自体はきれいだと思います。

 クリーム色はFLMよりも色が深くて、実車らしく見えます。

 この角度から見た感じは、悪くないと思います。

 形態に関してはアップ写真で触れるとして、走行についてですが、動力はROCOの一般的なタイプであり、両軸モーター(85060)を中心に置き、両方の台車を駆動します。

 ROCOの旧製品は4軸駆動でしたが、こちらは6軸駆動になっています。

 なお、もっと新しいMärklinの新規製品は、旧製品同様、DCMの3軸駆動です。

 90年代の製品なので、低電圧から静かに走りますが、ギア比が低めに設定されており、速度は出るものの、存外トルクが低いです。

 よって長編成を低速で牽くと、カーブで減速する場合があります。

 90年代製品にはよく見られますね。

 なお、ROCOの新BR 103ですが、Modellbau-wiki DB-Baureihe E 03 によりますと、1997年に発売された品番 43839 103 181-4 TEE塗装、黒裾、ひし形パンタDBS 54装備が最初とあります。

 当方の記憶では、同じ仕様の43839 103 140-0ではないかと思います。

 こちらの103 132-7は、2002年発売との記載がありました。

 私は同じ車両を2両(1両新品、1両中古)保有していますが、両方とも2002年に入手しています。

 いずれにしてもその後、同社からは膨大な仕様が発売されており、当方は全く把握できていない状態です。

 面白いのは膨大な仕様が発売されているものの、日本の中古市場で見かけるのは、2000年代前半までの初期に発売されたものばかりです。

 私が一番好きな仕様であるEp .IVb仕様(DB、赤裾、ヨーダンパー、SBS 69)は全くと言って良いほど見たことがありません。

 1980年代後半のIC全盛時の仕様は、日本での人気は高いと思うのですが、彼の地では不人気極まりないようですね。

 また昨今は、欧州でのインフレ加速&記録的円安なので、個人輸入などもはや不可能時になってしまいました。

 話を戻しまして、さすがに2000年を目前とした製品だけに、屋上は細かいです。

 パンタはGFNよりもずっと細かく、実感的です。

 ただし華奢ですし、閉じた姿勢を保持しにくい。

 また、前後で上昇位置が違ってしまう欠点もありますので、どちらが良いとは一概には言えません。

 細くてシャープな屋上配線、きっちりしたエアフィルタは好ましいです。

 金属製の手すりはとても良いですね。 

 一番よく見る視点からの写真です。

 これを見る限りでは、結構いい感じに思えます。

 台車はさすがにいい感じです。

 ただしスカートと干渉するので、台車上部は省略されています。

 BR 103やIC客車には、200km/h走行時の横揺れ防止用のヨーダンパーが取り付けられました。

 ところが、このヨーダンパーを再現している製品は、思いの外少ないのです。

 客車では一番古いADE以外に、正確な形状が再現されものは未だにありませんし、BR 103においても、装備されませんでした。

 具体的には、2000年代のMärklinの完全新製品でさえ、ヨーダンパーは省略されています。なお、現行製品には装備されているかもしれません。

 一方、GFNは4376の後期製品、ROCOはこちらが初だったりします。 

 前頭部の側面形状は悪くないと思います。

 こちらはBR 103の最終形とも言える形態なので、特徴あるバッファーカバーが撤去されていますが、個人的にはイマイチなスタイルと思います。

 ROCOは車体が一体成型になっています。

 一方、GFNやMärklinの新規製品は、クリームとマルーンの線が分割線になっていますので、どうしても段差が目立ってしまいます。

 塗り分けもきれいだと思います。

 上記の通り、最終仕様に近いのでDBAGマークになっています。

 個人的にはDBAGマークは、TEE塗装には似合わないような気がします。

 モニターの窓は良い感じです。

 ROCOのSBS 69はオリジナルのままだと、上昇時の高さが低いような気がしますね。

 一部の方に似ていないと指摘された前頭部形状です。

 詳しいことはわかりませんが、私が見た感じでは、そんなに悪くないという感想を持っております。

 これだけアップにすると、マルーンの線の重なる部分がわかってしまいますね。

 少なくとも一部の人が言っているように、ROCOが全くだめで、GFNが素晴らしいとは金輪際思いません。

 実はGFNの窓下の曲線は不連続になっています。

 ちょうど頬骨が張った感じです。

 一方、写真の通り、ROCOは連続となっていますが、実車の写真と比べるとROCOの方が正しいと思います。

 ナンバー文字の大きさは、ROCOの方が感じがいいです。

 とは言っても相手はドイツです。

 実車の文字サイズは必ずしも一定ではないようですが。

 端梁、バッファー周りは明らかにROCOが優れています。

 別稿の通り、GFNのバッファーは間隔が広すぎて、完全に実感をスポイルしていますので。

 ライトケースの銀縁は明らかに太すぎて、実感を損なっている気がしますね。

 別体のワイパーは、印刷よりも遥かに優れています。

 ただし、破損したり紛失しやすいのが欠点です。

 こういうのは予備を入れておいていただきたいところです。

 そうそう、よく知られることですが、ROCO製品には、塗装が発泡スチロールの箱に侵されるという致命的なトラブルが発生することがあります。

 具体的には、塗装に縞状の光沢シミを生じる、塗装面に発泡スチロールの模様がつく、発泡スチロール自体が貼り付いて、塗装が剥がれてしまうというような致命的なものです。

 中でもこちらの製品が発売された2000年代中盤までの製品が、最もひどいようです。

 実際、今まで私が見てきた、103 132-7の中古品は、ほぼ全てが何らかの形で塗装を被害を受けていました。

 当方所有の2台もポリシートで包んでいたにも係わらず、光沢シミを生じたり、DBインレタが侵されて傷んでしまいました。

 こちらでも何度も書いているように、ROCOの箱に対しては何で包んでも決定的な対策にはなりません。

 購入したら、すぐにIMONの箱に入れ替えることを、個人的にはお勧めします。

 IMONの箱も絶対に安心とは言い切れません。

 メーカーでも警告しているように危険がないわけではないでしょう。

 あくまで当方の経験に過ぎませんが、現在までのところ、少なくともROCOのようなひどいことには現状なっておりません。

 ただし、もともと塗装が劣化している大昔のHAGでは一部紙が貼り付きました。

 

<追記>

 1989年に撮影した実車写真を掲示しますので、模型と比較してみてください。

イメージ 27

 DBAGの車両も汚いことで有名ですが、当時もひどいですね。

イメージ 28

 これらの写真からは、BR 103の前面の曲率が途中で変わっているようには見えず、スムーズな曲線に見えますね。


<追記>

 模型鉄道の世界では、一部の声の大きな方や模型店の言うことが、あたかも絶対的評価に聞こえることがあります。

 より意見が多様化したはずの、Web時代において、却ってひどくなったような気がします。

 ですが、多くの場合、そういう人に限って何か別の意図がある場合が多く、必ず正しいわけではありません。

 特にむきになって相手をこき下ろしている場合、明らかにその裏に意図がありますから、疑って掛かった方がよいと私個人は思います。

 少なくとも私は、どこの組織にも属さない極めて弱小の趣味人の一人に過ぎませんから、趣味誌等のように広告主の顔色を伺ってしか記事を書けない方々とは異なります。 

 ということで、いつもそうですが、当方の記事はあくまで個人的感想に過ぎません。

 肝心なのは、この記事をご覧になった皆様が自分で判断していただくことかと存じます。

 そうそう、何か感想を書くと「ドイツの○○にはそう書いてあった」とか「○○ではそう言っていた」と言って反論する人がいます。

 定量的な数値や歴史的事実は別として、似てるとか似ていないという個人的な感想に対して正誤はナンセンスと思います。

 一例を上げますと、「ROCOは図面通り模型化しているから、あんまり似ない」ってよく言いますよね。

 これって本当でしょうか?

 こういうことを言う人は、きちんと図面と照合してから言っているのでしょうか?

 少なくとも私個人には、とてもそう思えないんですけど。

 こちらのBR 103にも傾向がありますが、傑作と言われるDB BR E 10.3(110)は明らかにデフォルメがされております。

 ううん、AFVもそうなんですけど、他社に比べ、ROCO製品はデフォルメがむしろ強めに感じます。

 そして……、あくまで私個人の意見では、それがあまり上手くない場合があるような気がするんですけどね。

 いずれにしても、エビデンスのはっきりしない他人の受け売りは、良くないと思うんですよね。

 人の意見を参考にするのはよいことですが、一番大切なのは自分の目で見て、自分で考えて、判断することですから。

2012/10/14 初稿

2025/10/19 写真全更新、文章全面見直し


 

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