鉄道模型 Bemo HOe DB BR V 51走行改善について

 以前より気になっていたBemoのナロー機関車の走行改善工事を行いました。

 DB BR V 51は、ドイツ連邦鉄道DBが、1960年代に残存していたヴュルテンベルクの750mm軌間のナロー線の蒸気機関車を淘汰するために全く新たにGmeinderで新造した液体式のディーゼル機関車です。

 1964年にV 51 901~903の3両が製造され、それぞれが別な線区に配属されました。

 しかしながらDBにおいても、狭軌線の廃線が続き、働く場所を追われてしまいました。

 もともと本機も代替交通手段が整備されるまでの間に合せ的な存在であり、両数も最小限に抑えられています。

 DBにおいては、最後に廃止された750mmであるÖchsle線で、1982年までRollbockを牽いていました。

 なお、以前も紹介しましたようにRollbockとは標準軌の貨車を狭軌の台車の上に乗せて運ぶ方法で、日本ではありませんでしたが、欧州では割と見られた方法です。

 さらに余談ですが、DBには11の狭軌線がありましたが、モータリゼーションの進展でそのほとんどが1960年代までに廃線となりました。

 しかし、北海に浮かぶWangeroogeではDB最後のナロー線である1000mm軌間のWangerooger Inselbahnが現在でも運行され続けています。

 話を戻しまして、3両作られたV 51は数奇な運命をたどりましたが、製造から60年以上が経過した今でも、901と903が残存しています。

 最後まで現役だった902はÖchsle保存鉄道で運用されましたが、同保存鉄道の内紛の際、個人に売却され、2006年ころ解体されてしまったようです。

 こういう話は世界共通なんですね。

 

 この車両は当方のあこがれの車両でした。

 初めて入手したのはBR 251 902-3でしたが、とてもうれしかったです。

 ただ当時のことゆえ、高かったですね。

 こちらのV 51 901を入手したのは2011年のことで、今は亡きEGSでした。

 購入時から車体が少し浮いていましたが、当時のBemo製品によくある発泡スチロールに被害も少なく、何よりもまず見ない車両なので、思わず買ってしまいました。

 EGSには同時にDBのナローがたくさん出ていたので、どなたかのコレクションでしょうね。

 それで本品ですが、ボディの浮き以外にも、気になる点がありました。

 それは集電が異常に悪いこと。

 こちらでも何度も書きましたが、初期のBemoは性能が極めて悪いキャラメルモーターを使用しているのに、とても走りが良いです。

 もちろんギア音は相当高いですが、信じられないくらいです。

 当時、同じキャラメルを使用していた乗工社等の日本製品とは、全く比較にならないほどよく走ります。

 この秘密は当時の私には理解できなかったのですが、理由は下記の2つでしょうか?

〇集電が根本的に優れる

 全輪から集電し、なおかつ可動車軸となっている。当時の日本型ナローと比べれば、フランジが高いのも集電には有利。

 車重があり、軸が可動なので車輪がレールに密着して、スパーク汚れが少ないため、集電が良い状態で維持される。

〇駆動系

 ギア比を十分に取っている。平ギアで一段減速した後にウォームで台車へ伝達している。

 動力伝達が等価になっている。

 モーターからのすべての車輪までの距離が等しい。

 キャラメルを使った当時の日本型は等価でないものが多かった。

 例えば、モーターのウォームで一軸を駆動し、その軸から平ギアで伝道するなど。

 

 しかし、こちらは集電が悪いのです。

 それも全く同じ構造の251 902-3はそんなことはありません。

 どうもこの点が気になっておりましたが、この度ふと思い出したので、確認してみました。

 この製品はもっとも初期のBemo製品ですが、集電は一般的な同社製品そのものです。

 台車に取り付けられた集電シューで全ての車輪から集電しています。

 にもかかわらず集電が悪いのです。

 そこで一つずつ当たることにしました。

 よくあるケースは絶縁側の給電線が途中で切れたり、何気に基板で半田が外れていることです。

 ところが給電点を変えて試したところ、なんと絶縁側ではなく、非絶側の集電が悪いことがわかりました。

 そうなると、シューと車輪の間に毛埃がたまっていることが多いので確認しましたが、そうではなく、非絶側のシューに給電しても、うまく動かないことがわかりました。

 要は非絶側がうまく通電していないのです!!

 車輪の両側に集電シューがついている製品では、今まで経験したことがありませんでした。

 原因がわかったので、さらに確認するため、車体を外すことにしました。

 この製品、元々車体が外れやすいので比較的簡単に外れました。

 とは言うものの、Bemoのプラは経年結晶化が進んで脆くなっていることが多いので、無理な変形や力を加えないように慎重に作業しました。

 やはり多少引っ掛かりがあるので、気を付けた方が間違いありません。

 この製品はプラ製の赤い上部車体、黒い下部車体がダイカストシャーシーに取り付けられていますが、作業の邪魔になるので、両方とも外してしまいます。

 ここで注意があります。

 初期のBemo製品は導光体が外れやすいのです。

 これ作業中に不意に外れたりすると、紛失したり、最悪、破損するので作業前に取り外しておきます。

 案の定、車体を裏返しただけで外れてしまったものがありました。

 下部ライト用だけではなく、上部ライト用も外してしまいます。

 外したものは箱に入れて無くさないようにしましょう。

 私はついその辺においてしまい、あとで探し回るといった無駄が実に多いのです。

 また後でプリント基板を外すので、電球、黒い電球カバーとダイオード板も外してしまいます。

 当然のことながら、ダイオード板には極性がありますので、ペンで印をしておきます。

 裏返してつけてしまうと逆に点灯してしまいますので。

 ここまで準備作業を行ってから、さらに確認することにしました。

 非絶側の集電は、車輪〇集電シュー〇台車(半分ダイカスト)〇台車留めピン〇ダイカストシャーシー〇ねじ〇プリント基板となっています。

 〇印は接触による伝導です。

 各部に給電しつつ確認すると、どうも台車〇台車留めピンのところがうまく伝導していないように感じました。

 しかし後で考えてみるとプリント基板を止めるねじのねじ山がばかになっていたので、そこでうまく伝導していなかった可能性もあります。

 本来であれば、金属接触同士なのでうまく伝導するはずですが、接触面が汚れたり、あるいは十分ではない可能性が考えられえたため、台車集電板からプリント基板まで直接結線してやることにしました。

 非絶側の金属の接触電導による集電が可能な場合でも、リード線により直接集電するというのは、一見無駄なようですが、はんだ付け教室のIMONの北陸重機がそうなっており、なおかつあのような二軸機にしては集電が良かったので採用しました。

 なにせHOeの小型機で、配線を通すスペースが限られますので、これには細いリード線を使います。

 まず台車枠を外します。

 車輪にはゴムタイヤがあるので、向きをよく覚えておきます。

 私のように認知機能が怪しくなってきている場合、写真を撮っておいた方が良いかも。

 Bemoの台車枠はキツキツで、外す際は破損するんじゃないかって、いつもひやひやしていますが、こちらは割と簡単に外れました。

 枠を外すと、車輪はすぐに抜けてしまいます。

 私ははんだ付けが下手ですが、はんだ付け教室の教育の成果か、集電板へリード線をうまくはんだ付け出来ました。

 あとはリード線をプリント基板まで引いてやればいいだけです。

 とは言うものの、リード線を通す場所は普通ではありませんでした。

 この機関車は駆動台車とシャーシーの隙間がほとんどないため、駆動台車に切り欠きを作って、リード線を通しています。

 当然のことながら、この切り欠きは絶縁側だけで、非絶側にはありません。

 さらによく調べると、元々リード線を通す側のダイカストシャーシーには穴が開いていますが、反対側には穴は開いていないのです。

 従って一般的な模型とは異なり、絶縁側と同じ経路でリード線を通すことになりました。

 幸い、台車の切り欠きは細いリード線を通しても大丈夫でした。

 この際、既設側のリード線は太い上に、経年劣化でビニール被覆が硬化してしまっており、通すのを難儀しました。

 いっそ、非絶側のリード線も新しいものへ交換してしまった方が良かったかもしれませんね。

 ただし、台車に取り付けられている集電版ですが、非絶側はダイカストですが、絶縁側は台車の材質がプラなので、手際良くやらないと台車が熱で溶けてしまいますが。

 あと台車の切り欠きにリード線を通す際ですが、この製品はなぜか台車の裏側に平ギアが飛び出しているので、リード線が引っ掛からないように逃がすことが必要です。

 しかしこういう駆動方式の台車で反対側にギアが飛び出しているのは初めて見ましたね。

 ダイカストシャーシーまで達したら、プリント基板のリード線が通る穴を拡径し、はんだ付けしてやれば完成です。

 この際、プリント基板を止める2か所のねじ穴のうち1個所がばかになっていたのですが、手持ちの1サイズ上のものに交換し止めました。

 さて、この状態で試運転を行いますと、あら不思議。

 あれだけ途中で止まったものが全く止まらなくなりました。

 上記の通り、動力伝達は優れていますので、あの非力なマブチモーターとは思えない走りです。

 とは言うものの、何せ古いモーターなので、大したことはないですし、恐らくモーターの磁力も弱まっているのだと思われます。

 いっそ、モーターを変えてしまいたいですが、これは存外難しいです。

 マブチのキャラメルはろくなもんじゃないんですが、一つだけ優れている点があります。

 それはモーターの長さが短いこと。

 性能が比較にならないほど優れるKATOのGM-3やスロットレスは筐体が長すぎて入らないのです。

 TOMIXのM-13も難しいような気がします。

 入手が難しいM-5あたりでもどうでしょうか?

 

 下回りの試運転が成功したので、復旧します。

 まず電球を取り付けます。

 先にも触れたように、ダイオード板の向きに注意してください。

 電球を取り付けたら、試運転して接触と方向切替が正しいか確認します。

 その次は車体の組み立てです。

 最初にシャーシーに黒い下部車体をはめてから、導光体を取り付けます。

 次に赤い上部車体を取り付けますが、導光体は抜けやすいので、車体を傾けたりするとすぐに抜けてしまいます。

 十分注意してください。

 で、導光体がうまくセットされたのですが……、車体がうまくはまりません。

 どうにも浮いてしまうのです。

 こういうのは無理すると絶対に壊すので、再度ばらして確認すると、なんとプリント基板がシャーシーから浮いていました。

 どうもリード線がシャーシーと基板の隙間に入ってしまっていたようです。

 これで組みなおすと少し良くなりましたが、まだ完全には解決しません。

 おかしいと思って調べますと、運転室側後方のプリント基板のはんだが盛り上げっていることに気づきました。

 リード線をつけなおした際に、盛り上がってしまったようです。

 そこで、やすりで削ると後方はしっかりはまりました。

 しかし前方は少し浮き気味です。

 これは大型化したねじが干渉していたようで、仕方なくオリジナルに戻し、ゴム系で止めました。

 ここまでやってだいぶん良くなりましたが、まだ少し浮きます。

 購入当時と変わりません。

 そこで確認すると、元々のはんだが盛り過ぎだったことがわかりました。

 要ははんだに押されてボディが浮いていたんですね。

 そこではんだを削ったところ、はまりは良くなりましたが、最終的に浮きはなくなりませんでした。

 要は長年のボディ浮きで車体裾の爪が変形してしまったようです。

 爪の形状はどうにもなりません。

 少なくとも何かに押されて浮いているわけではないので、ごく少量のゴム系で接着しておきました。

 それにしてもこんなことでえらい時間を食ってしまいました。

 でもこれ、ダイカストシャーシーが1mm低ければ全く問題にならない話です。

 要はボディとダイカストシャーシーの隙間が小さすぎるんですよ。

 無理な設計ということになりますね。

 実はHOでもNでもこのようにシャーシーとボディの干渉によりボディが浮いたり、車体の裾が広がってしまうことは実は結構あります。

 私はKATOのNのEF64 1000や中古入手の個人のDCC改造、あるいはそれに伴うLED改造車で何度か経験しました。

 改造車は部品を追加したことで、ボディと干渉してしまい車体が浮いて、その結果、車体裾が広がってしまうんですね。

 

 という訳で、いろいろありましたが、完成し安定した走行を発揮しました。


 簡単な改造の割に時間が掛かってしまいましたが、効果は抜群であり、これはやって良かったです。

 でも走行性能が良い251 902-3の方はやるつもりはありません。

 もしかしたら、こちらとはどこか変わっているのかもしれませんね。

2025/2/21 記

 

 

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