ドイツ国鉄 DRG 急行旅客用蒸気機関車 BR 18.5 534号機 (Rivarossi HR 2029)

 今回は、邦有鉄道の最後の栄光を飾り、その後も戦前ドイツの鉄道において最高峰の列車であったFD-Zugラインゴルトを牽引したことで、つとに有名な四気筒急行旅客用蒸気機関車BR 18.5について紹介します。

 BR 18.5は、バイエルン王国邦有鉄道が開発した傑作急行旅客用蒸気機関車 S 3/6を、ドイツ国鉄DRG Bayerngruppeが追加生産した形式です。

<DRG BR 18.5 主要諸元>

 型式:2'C1' h4v、バッファ間距離:21.396m、運転重量:88.3t、軸重:18.3t、軸配置:2C1、動輪径:1,870mm、過熱式四気筒、出力:1,300kW、ボイラー圧力:15bar、最高速度:120km/h

 ドイツの鉄道が統一される前の1910年頃、ドイツを構成する各王国は、急行用の高性能蒸気機関車をこぞって開発しました。

 これら軸配置2C1の多気筒パシフィック機のうち、最も成功したのがバイエルン邦有鉄道のS 3/6形です。

 S 3/6はドイツ最初のパシフィック機であるバーデン大公国邦有鉄道G.Bad.St.E.のIVf型を基礎とし、設計されました。

 主任設計者はIVfと同じ、J. A. Maffei社の製造部長であったアントン・ハンメルです。

 同社は四気筒高速蒸気機関車を得意とし、バイエルンやバーデンへ納入してきましたが、S 3/6はバーデン大公国邦有鉄道のIVhと並び、その完成形となりました。

 上記のように、S 3/6の設計はIVhを基礎としつつ、バイエルン王国邦有鉄道の特性や、新技術を取り入れました。

 動輪径は、一部を除き、IVfより70mm大きい、1,870mmとなりましたが、これにより平坦線だけでなく、勾配線においても速度と牽引力を確保できました。

 最高速度は動輪径にかかわらず、全て120km/hでした。

 出力は当初の1,770PSから、ボイラー改造などにより1,830PSへ増加しています。

 S 3/6は長期にわたり製造されましたので、タイプが細かく分かれています。

 a~c:1908-1911年の間、23輌製造。1,870mm動輪、風切り式のキャブを持つ

 d~e:1912年、18輌製造。平坦線の急行用に2,000mm動輪を装備、角形キャブ、炭水車変更

 f:1913年、3輌製造。a~cと同じ。

 g:1914年、10輌製造。プファルツ鉄道用。1,870mm動輪、19m転車台用に長さが150mm短縮された

 h~i:1914-1918、35輌、バイエルン用最後の製造

以降はドイツ国鉄DRGの製造

 k:1923-1924、30輌、BR 03の開発遅れに対するドイツ国鉄DRGバイエルン支局による追加製造。1,870mm動輪、角形キャブ、過熱面積増大、ボイラー圧力も増大

 l~o:1927-1931、40輌、BR 03の開発遅れ、幹線の軸重20t強化対応が遅れたため、引き続き製造されたS 3/6。過熱器が再度大型化され、シリンダーもボアアップされている。

 最後のo型は、世界大恐慌の煽りを食って経営機器に陥ったJ. A. Maffei社に代り、Henschel社で18輌が製造された。

 このシリーズの最後の11輌には、新型のテンダー2'2' T 31,7が装備されました。

 S 3/6は、1908年から1931年までの23年という長きに渡り、合計159輌が製造されました。

 この数字は、DRG BR 18となった他の邦有鉄道パシフィック機の合計よりも多く、BR 01やBR 03よりは少ないですが、それ以外の制式パシフィック機よりも多いです。

 S 3/6は、第一次世界大戦敗戦の戦後賠償により、89両中、19両がフランスとベルギーに引き渡され、残りが80両がドイツ国営鉄道にBR 18.4として継承されました。

 これらの車番は、18 401 - 18 434(a型・b型・c型・f型・g型)、18 441 - 18 458(d型・e型)、18 461 - 18 478(h型・i型)となり、DRGになってから追加生産されたkは、当初バイエルンの車番3080-3709として納入され、すぐに18 479-508に変更されています。

 さらに追生産されたl~o型40両は、18 509-18 548となりました。

 S 3/6は構造が複雑な複式四気筒機としては、長きにわたり使用されました。

 他の四気筒機が早々に引退する中、原型機は1962年まで、DBにより更新改造(ボイラー換装等)されたBR 18.6は1965年で使用されました。

 最後の一台はミンデンの機関車研究所で使用されていた18 505で、1969年に引退しています。

 有名な運用としては、DRGの最高峰列車であるFFD-Zug Rheingoldの牽引でよく知られます。

 1928年から1934年の間、ゼーフェナールからマンハイム間を牽引しました。

 大変残念ながら、ラインゴルト以外のS 3/6の具体的な運用については、明記された資料を見つけることはできませんでした。

 素晴らしい写真でDB時代を表現しているHP Die BundesbahnzeitMit HS unterwegs - Röthenbach zum Hundertjährigenによりますと、S 3/6は、1960年代のはじめ、バイエルン地方で運用されたようです。

 こちらでは、試験機となった505号機以外で、最後のS 3/6原型機となった528号機をはじめ、性能向上型のBR 18.6の美しい写真をいくつも見ることができました。

 こちらにおいて、S 3/6はドイツで最も美しい機関車と称され、更にはUmbau機よりも原型機の方が美しいとの標記が見られました。

 これは私も全く同感です。

 ボイラーの太いEinheitsもかっこいいですが、美しさの点ではS 3/6の方が勝っているように感じます。

 S 3/6は大変古い機関車ですが、現在、2m動輪を持つ451、最後まで活躍した505、508、528、Umbau機612、バイエルン時代の478の6両が保存されています。

 このうち478は、邦有鉄道時代に製造された最後の一台で、保存機中唯一のバイエルン機であり、風切りキャブを装備している唯一の機種でもあります。

 本機は1996年に動態復帰し、その後、ボイラー期限切れや動輪の変形というアクシデントがありましたが、現在、また動態へ復帰しているそうです。

 もう100年以上前の機関車ですが、すごいですね。

 以上、Wikipedia 日本語版 王立バイエルン邦有鉄道S3/6型蒸気機関車 より引用、参照いたしました。 

 S 3/6の模型、総論は当方の以前の記事を参照いただくとして、DRGになってからの追加生産型の製品化は、必ずしも多くありません。

 私の知る限りでは、BR 18.5の模型は、Limaの玩具的製品が一番先(1970年代後半?)、1980年代後半のRivarossi(Lima)、その次がGFN(Fleischmann)、MTH(Busch)、Märklin/Trixの5社しかありません。

 付言しますと、この5種類とも入手が難しい部類に属します。

 玩具的なLimaは今日では存在価値は低いと思いますし、私も実際に見たことがないので除外します。

 Rivarossiは種類が多いものの、1990年代の同社の倒産に伴いあまり出回っていません。継承会社のHornbyはこちらで紹介するHR 2029を一度作ったきりです。

 一番出来が良いと思われるFleischmannは高額でしたが、それ以上にこの製品の発売から時を経ずして、同社はHOの生産をやめてしまいました。

 継承会社のROCOは、自社製の原型機は何度か再生産を実施していますが、FleischmannのBR 18.5は作っていないと思います。

 ただし最近、新品にはとんと疎いので正確なところはわかりません。

 余談ですが、あくまで個人的意見ながら、ROCOの原型機は素晴らしい出来と思います。

 こちらもあまり作らないですが、それでも数年前にまた作りました。

 MTHはデジタルサウンド仕様のようですが、ごく短期間販売されただけで消えてしまったようです。

 Märklin/Trixの出来は良さそうですが、インサイダークラブモデルが発祥のためか、生産機会が少なく、せっかく作っても、ラインゴルト客車との豪華セットなどとても手が出せるような価格帯ではないのが残念です。

 上記のようにドイツで最も美しい蒸機と称される本機ですが、模型の世界では不人気なようですね。

 昨今、ドイツの蒸機はBRAWAが積極的に製品化していますが、S 3/6も出すでしょうか?

 もっともBRAWAはとても高いし、正直な話、私は模型として好きではないので、買わ(え)ないでしょう。

 それでこちらはRivarossi製品です。

 同社は一番最初にBR 18.5を発売しましたが、上記の通り、こちらはHornbyグループになってからの製品です。

 RivarossiのBR 18.4-5は決して古典製品ではありませんが、率直なところ、その評価は低いものです。

 その最も大きなものは走行系であり、本製品には模型鉄道には致命的とも言える欠陥がありました。

 まず、私が一番嫌いな、動力伝達にゴムを使っていることです。

 詳細は当方の過去記事を見ていただきたいですが、本機は伝達に直径約1mmの極細のOリングを使用しております。

 このゴムは合成ゴムと思われますが、合成ゴムは黙っていても劣化して、固化、収縮してしまいぼろぼろになり、切れてしまいます。

 実際、私が保有した機関車でも同様のトラブルが起きてしまいました。

 ではなんで買ったのかと言いますと、Hornbyブランドになって、構造が変わったからです。

  たまたまWebでHR 2029の説明書を見つけたのですが、見ての通り、モーターからの動力伝達が明らかに変更されていることがわかりました。

 こちらにはゴムベルトの図示は無く、ユニバーサルジョイントで接続されていることがわかりました。

 以前の製品はモーターに貧弱なプーリーが直結されていましたので、間違いありません。

 

  こちらは旧製品です。

 わかりにくいですが、赤丸部分にゴムベルトがあります。

 モーターの形状も全く異なっていますね。

 テンダー部分にはデコーダーも装備できそうです。 

 次に大きな欠点はSドライブという特殊な駆動機構です。

 詳しい仕組みはよくわかりませんが、動力を切ると、モーターからの伝達が解除される……、すなわち、手で押すと車輪が回る……というものです。

 昔高級ブラス製品に使われたコースティングギアとは違いますが、目的は同じかもしれません。

 ただし、理想と現実は乖離しており、坂道で停止すると暴走するという大問題がある以外にも、ギアの不良も起きやすいとのこと。

 上記分解図ではこの点がわかりませんでしたので、思い切ったのですが、この点は昔のままでした。

 まだ負荷をかけて運転してませんので、どうなりますやら。

 最後の欠点はドイツのフォーラムにあったもので、動輪が全く似ていないというものです。

 このように正直な話、リスクが相当有りましたが、当方にとって、BR 18.5は入手がまず無理なので、思い切ってしまいました。

 正直安価だったこともありますが。 

 元は1980年代製品ですので、昨今の素晴らしい製品に比べれば落ちますが、それでも繊細さはありますね。

 ただドイツのフォーラムにあった動輪の形状はいかがでしょうか? 

 風切型ではないキャブです。

 窓ガラスの感じなど、古さがありますね。 

 バッファやサイドステップが金属なのは好ましいです。

 透けた感じが良いですね。

  

 バタフライスクリーンは枠が別整形です。 

 スケール感は別として、Rivarossiの手すりは金属製で、スタンションに取り付けるのが良いですね。 

 

 金属の手すりは良いと思います。 

 テンダー。

 台車が前後で違います。 

 同じアントン・ハンメルのバーデンIVh (BR 18.3)は、転車台に乗せるために、炭水車の長さを縮める必要があり、台車を変えたように記憶していますが、こちらはいかがでしょうか?

 ということで、正直、この模型は未知数であり、今後、運用してみてからの評価となりますね。

 今回は、RivarossiのDRG BR 18.5を紹介いたしました。

2024/7/18 記 

 

 

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