ドイツ国鉄 DRG 入換用 タンク式蒸気機関車 BR 89 005 (Fleischmann 4020)

 今回は、ドイツ国鉄 DRGが開発したC軸貨物用タンク蒸気機関車 BR 89を紹介します。

<BR 89.0 主要諸元>

 型式:Cn2t(001-003)/Ch2t(004-010)、バッファ間距離:9.6m、運転重量:46.6t、軸重:15.6t、軸配置:C、動輪径:1,100mm、飽和(001-003)/過熱式(004-010)二気筒、出力:飽和式235kW/過熱式385kW、ボイラー圧力:14bar、最高速度:45km/h

 BR 89.0は、ドイツ国鉄DRGのもっとも小型の制式機関車(Einheits Lokomotive)として、合計10輌が製造されました。

 1934年、飽和式3輌 (001-003) と過熱式3輌 (004-006) が発注され、比較検討の結果、性能の優れた過熱式が1938年に4輌追生産されました。

 翌年に第二次世界大戦がはじまったため、より優先度の高い機関車を製造することになり、これ以上の生産は行われませんでした。

 ベルリン等の駅で使用されましたが、1944年にシュレージェンの首都ブレスラウの西にあるドイッチェ-リッサへ5輌が移りました。

 シュレージェンは戦後ポーランドとなりましたので、これらはポーランド国鉄PKPへ継承されています。TKh 5

 また残りの5輌もすべてソ連占領地区に残存したため、3輌がPKPへ継承、残りの2輌は東ドイツ国鉄DRに継承されています。

 PKPの機関車は早くも1954年までに引退しましたが、DRが継承し、本形式の最後の一両となった008号機は1968年に廃車されたものの、現在でも保存されています。

 以上、Wikipedia 独語版 DR-Baureihe 89.0より引用、参照いたしました。

 それで、EinheitsのC軸入換機としては、BR 89.0よりも古い、1927年にBR 80が作られています。

 それから7年後にどうして同一の形式を製作したのか、この記述は、Wikiにはありませんでした。

 実際にBR 80と比較してみると、BR 89/BR 90で比較すると、運転重量:46.6/54.4t、軸重:15.6/18.1t、出力:385/423kW、バッファ間距離:9.6/9.67mとなり、ほぼ同サイズながら、相当軽く作られているのがわかりました。

 そういう意味で、BR 89.0とBR 80は違う目的の機関車だったのですね。

 ただ、戦時下にあっては線路規格の低い軍用線があったと思われるので、なんで小型軽量なBR 89.0が生産されなかったのかは、よくわかりません。

 あと1927-28年製造のBR 80は全て過熱式ですが、それよりも6年後に製造されたBR 89.0において、なんでまた飽和式が試されたのでしょうか?

 BR 89.0は制式機関車最後の飽和式と思われます。

 このあたりご存じの方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いします。

 この2形式は、同じC型機ですが、スタイルは大きく異なります。

 BR 89.0です。

 こちらはBR 80です。ROCO製品です。

 こうして見ると、この両機には相当大きな差異があり、BR 80の方が強力な分、ボイラーが太く見えます。

 サイドタンクの有無が、大きく印象を変えていますね。

 ところでBR 89.0は、世界で最もたくさん作られた模型鉄道機関車です。

 メルクリンのHOのBR 89.0は1953年より製造が開始され、なんと現在まで500万台以上生産されたそうです。

 このモデルは89 006としてDBマークを描いていますが、上記の通り、BR 89.0にはDBに継承された機種はありません。

 同様に1972年より生産が開始された同社初のZであるBR 89.0も、大量に供給された製品ですが、こちらもDBマークで車番は2004と、HOと同様、ファンタジーモデルになっています。

 一方、こちらで紹介するFleischmann製品も、同様の入門用機関車です。

 1980年に発売されました。

 ただし他社とは異なり、FleischmannのBR 89.0には、初心者向け製品4018(DRG) / 4019(DR)(取り扱い及び、コスト削減を図り、ロッド回りを簡略化したもの)と、こちらで紹介する足回りが通常製品と同じグレードの4020が存在します。

 Fleischmannの入門用としては、他にBlack Anna 4000、MV 9型DL 4203/4204、BR 53.77がよく知られます。

 面白いのは、BR 89.0及びBR 53.77ともに入門機ですが、入門用にロッド周りを簡略化したタイプと、通常の製品と同じロッド周りになっているものが設定されるところですね。

 これは同社の特徴でもあり、BR 212やBR 218でも、入門用は本来取り付けられる部品が省略されています。

 なお、BR 53.77の初心者向けはセット商品だけで、単品販売の設定はないようです。

 

 BR 89.0の特徴的なのは構造です。

 同社の蒸気機関車としては極めて異例なことに、ボディがダイカストの一体成型になっています。

 製品番号が1000番代の古い製品はいざ知らず、同社の1980年代以降の蒸気機関車では唯一の存在ではないかと思われます。

 ダイカストの質感は優れますが、こちらは塗料ないしプライマーの質が悪かったのか、あるいは保管状態が悪かったのか知る由もありませんが、ところどころ塗膜が浮いたり、剥がれたりしています。

 幸いなことに、シーズンクラックは発生していないようです。

 ダイカスト一体成型のため、配管類や手すりは別体にはなっていないのが残念です。

 腐食が進んでいますが、金属製のバッファーは良いですね。

 シリンダーブロックはプラ製です。

 同社製品なので、金属製車輪です。

 1980年代のはじめの製品、かつ初心者向けでは珍しいかもしれません。

 ロッド周りは黒染めにこそなっていませんが、なかなかシャープな仕上がりです。 

 レタリングはきれいです。

 キャブの幌部品はモーター隠しに有効ですね。

 シリンダーブロックの印刷は少々色があせていますが、Heschelのマークがよくわかります。 

 所々の色ハゲが惜しいです。 

  塗装がこの状態なので、いっそ塗り替えてしまいたいところですが、キャブ脇のレタリングが繊細であり、入手する手段がないので、このままにするしかないですね。

 ダイカストの一体成型ですが、繊細ですね。

 窓ガラスはやや黄ばんでいます。

 こちらは連結器がベーカーなので、初期の製品と思われます。

 Fleischmann製品は、NEWに準拠していると思うのですが、なぜか連結器はベーカーを採用しています。

 これらの製品は連結器の交換が必須なのですが、これには大きな問題があります。

 NEM362ポケット採用以前の同社は、

 

6520 こちらが一般的です。

ビューゲルカプラー交換用ヘッド6523

 

BR 212やBR 110.3には6521

ビューゲル対応6524

 6521は古い製品の一部だけに使用され、BR 89.0を含む殆どの製品が6520を採用しております。

 簡単には6523へ交換すればよいのですが、日本では入手するのが難しく、現地でも1個3.9ユーロもします。

 そこで今回、6521を改造して、ビューゲルを取り付けましたが、既存部品の改造なので、取付時に上下を反転させる必要があります。

 ところがBR 89.0は、構造上、入らないんです。

 そこで、今回改造で作ったものを他へ転用し、6523を使いました。

 そもそも6520の基部で、NEMポケットがあればいいんですが、なぜかそういうものは存在しません。

 またこのタイプの非伸縮カプラーはポケットになっていないのが非常に困りますね。

 私的には連結器の交換がFleischmannの大きな弱点と思っています。

 それにしてもすごいワンピースボディですね!!

 Fleischmann製品は分解しにくいものが多いですが、こちらはボルト1本で外れます。 

 伝統的な円形モーターを採用しています。 

 このモーターは、性能が低い上にばらつきが多く、私はあまり好きではありません。

 反面、ウォームを使っていないのでスムーズに動くという利点もありますね。

 

 ということでようやく入手できたスケールのBR 89.0、程度は良くないですがラッキーでした。

 2024/7/13 記

 

  

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