ブリーク・ヴィスプ・ツェルマット鉄道 BVZ ラック式電動貨車 Deh 4/4 24 Täsch (Bemo 1363 514)
今回はスイスの南西部の山岳地方鉄道 フィスプ・ブリーク・ツェルマット鉄道 BVZ Deh 4/4形 電動荷物車を紹介します。
BVZ Deh 4/4は、フィスプ・ブリーク・ツェルマット鉄道のラック式の山岳用電動荷物車です。
<BVZ Deh 4/4主要諸元>
軌間:1,000mm、電化方式:AC 11kV 16.7Hz、架空線式、軸配置:Bo’Bo’、全長:16.9m、自重:49t、動輪径:1,070mm、定格出力:1,094kW、牽引力:113.8kN、最高速度:65km/h、ラック:35km/h、制御:サイリスタ位相制御
フィスプ・ブリーク・ツェルマット鉄道は、スイスの南西部に位置する軌間1,000㎜の山岳私鉄であり、マッターホルンの玄関口として、そしてスイスでも有数の高級リゾート地としても名高いツェルマットへの鉄道として開業しました。
本線の東側はブリークで、フルカオーバーアルプ鉄道、SBBやBLSと接続する重要な駅です。
風光明媚なこの路線は、観光路線として古くから知られており、西のツェルマットから東のサン・モリッツまで同じメーターゲージであるBVZ、FO、RhBの3社の路線を通しで走る氷河急行で有名です。
なお、FOとBVZは、2003年1月1日に合併し、マッターホルン・ゴッタルド鉄道 MGB となりました。
BVZも最大110‰の急勾配を要するので、ラックレールが採用されています。
そんなBVZには他の鉄道には見られない大きな役割があります。
それはツェルマットへの輸送です。
世界的に名高い高級リゾート地として有名なツェルマットは、官公庁の緊急車両などを除き、内燃エンジンの自動車を禁止しているため、観光客は車で行くことができないのです。
そこで、リゾート客は手前の町に車を止めて、鉄道、電気バス等の指定の交通機関を使用しなくてはなりません。
この交通機関で最も使用されているのがBVZであり、手前の駅のTäschの大駐車場に車を止め、鉄道に乗って移動するのです。
ちょうど日本の上高地と一緒ですが、ツェルマットはリゾートとは言え、地方都市ですのでずいぶん思い切ったことをしていると思います。
軍事施設などを除き、極めて特異な運用であり、日本の都市では絶対に真似できないでしょうね。
1970年代初頭、BVZでは老朽化が進行した機関車6輌と、いわゆる電動客車5輌で対応しておりましたが、上記、テッシュ‐ツェルマット間をはじめ、輸送力不足が顕著になっていました。
今回紹介するBVZ Deh 4/4は、輸送力強化に対応するために作られました。
製造にあたっては、隣接するFOでの成功例に鑑み、終端駅での機関車付け替え作業を合理化できるプッシュプル列車とされ、その設計にあたってはFOのDeh 4/4 51-55をベースとし、新技術の導入、BVZ線の特性を反映したものとなりました。
具体的には、制御装置がサイリスタ位相方式になり、電動機やブレーキ装置、連結器なども変更されました。
とは言うものの、外見的には非常によく似ています。
1時間定格出力:1,054kW、最大牽引力:213kNで、ラックを使用して125‰勾配で90tの列車を牽引できます。
BVZ Deh 4/4は車体SIG、台車SLM、電気部品、電動機をSAASにより製造されました、
1975-76年に21-24までの4輌が製造されています。
4輌全てに名称がつけられております。
こちらの24号機はTäschであり、上記の通り、ツェルマット手間の村の名前です。
なお、BVZ線にはラック区間が存在しますので、本形式もラック式歯車を装備しています。
ちなみに型式Deh 4/4とは、D=荷物、e=電動車、h=ラック式、4動軸数/全軸数を表現しています。
当初Deh 4/4は旅客及び貨物列車牽引を想定して製造されました。
基本的に運転車との間に数輌の客車を挟んで運用されます。
一見日本の電車に見えますが、運転車を含め、付随車は客車です。
運転台は両側ですが、幌は片側にしかついていません。
欧州でよくみられるPendelzugですね。ちなみにPendelzugとは機関車と制御客車がセットになったプッシュ・プル運転であり、日本のような動力分散型の電車は含みません。
またドイツではPendelzugではなく、Wendezugと呼ばれているようです。
なお、BVZでは増結する際には編成全体で客車を牽く形態のようです。
以前はFOの客車も増結したことがありました。
そういう意味でもいわゆる荷物電車ではなく、電動荷物車と呼んだ方がよい気がします。
イレギュラーな運用とは思いますが、運転車を使用せずに貨車を牽いたり、パノラマ客車を牽いたこともあったようですね。
特にツェルマットには自動車が乗り入れられないため、物資の補給用に貨物列車が設定されており、以前は本形式も使われたようです。
恐らくですが、貨物列車には引き通し線がないので、推進運転は行われなかったのではないでしょうか?
なお、Deh 4/4も寄る年波には勝てず、4輌中、2022年に24号機、2023年に21号機が廃車となりました。
以上、Wikipedia日本語版 マッターホルン・ゴッタルド鉄道Deh4/4 21-24形電車、独語版 BVZ Deh 4/4より引用、参照しました。
それでこちらのBemo製品はいつも通り、HOmの量産品では唯一の存在です。
発売時期は不明ですが、2005年頃でしょうか?
マシマの缶モーター、4本ネジで分解という現在の同社の標準的な構成です。
ご覧の通り、大変繊細な出来です。
レタリング類はかねてから水準以上でしたが、こちらもとてもきれいです。
ほんといい感じですね。
これだけ良いと、床下のダイカストが未塗装のは目立ってしまいますね。
ルーバー類もシャープです。
ただし、同社の通例で結晶化の進んだ碍子が折れてしまいました。
取り出しにくい箱と言い、高額商品だけになんとかして欲しいです。
なおこちらもいつも通りですが、元箱はやめてすぐにIMONの車両箱に入れ替えました。
ジャンパ栓など別付け部品が硬質プラでシャープなのは、塗装ができることも相まって良いですが、碍子と同様、樹脂の材質が悪くて折れやすいのは難点ですね。
こちらも中古入線です。
この形式はあまり見ることがないので、良かったです。
こちらの前面に客車を連結します。
貨車などを牽いたときは折りたたんだのでしょうか?
走りも標準的です。
それでDeh 4/4の最大の問題は模型としての出来の話ではなく、推進運転車が入手できないことです。
向こうにも新品はありません。
日本では共立工芸にありそうですが、やはり高い!!
また、同店は当方の居住地からは行きにくい場所ですし、営業時間も非常に短いです。
共立模型ストアという通販店もあるようですが、当方が在庫を確認したところ、残念ながら返事をいただくことは出来ませんでした。
店主のKさんもご高齢であり、なんでも2024年で閉店とのこと。
大昔お世話になった身としては、なんとも寂しいです。
2024/4/28 記
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