プファルツ鉄道 高速試験用機関車 S 2/6 3201号機 (BRAWA 40252)

 今回は、今から116年前の1907年に154km/hという、当時としては驚異的な速度を記録したドイツの試験用高速蒸気機関車 S 2/6を紹介します。

<S 2/6主要諸元>

 型式:2'B2'h4v、バッファ間距離:21.183m、運転重量:83.4t、軸重:16.0t、軸配置:2B2、動輪径:2,200mm、過熱式四気筒、出力:1,618kW、ボイラー圧力:15bar、最高速度:150km/h 

 S 2/6は、バイエルン王国邦有鉄道 K. Bay. Sts. B. が1906年に開発した高速試験用の機関車です。

 用途からJ. A. Maffei社で僅か1輌のみ製作されました。 

 S 2/6は、1904年にプロイセン王国邦有鉄道 K. P. St. E. が同じ目的で開発した流線形試験用蒸気機関車 S9 Altona 561/562に触発されたものです。

 開発にあたっては、J. A. Maffei社の製造部長でバイエルン王国邦有鉄道の名機S 3/6など数々の機関車を設計したアントン・ハンメルが設計主任となり、彼が共同開発したバーデン大公国邦有鉄道のIId型を基本とし、各シリンダー部や弁装置などの駆動装置はプファルツ鉄道P4型のものをそのまま使用したようです。

 したがって本機は複式四気筒方式です。

 ボイラーは新設計、また過熱器は当時の最新式のものが採用され、その膨大な蒸気を生むために大型の火室が採用されました。

 このサイズたるや後の高速試験機BR 05とほぼ同等であり、これよりも大きなものはバーデン大公国邦有鉄道IV h型(後のBR 18.3)、ドイツ最大の貨物用蒸機BR 45及び試作に終わった高速機BR 06だけでした。

 これはバイエルンで使用されていた石炭の質が、プロイセンよりも劣ることにあるようです。 

 試運転はミュンヘン-ニュルンベルク間、ミュンヘン-アウグスブルク間で実施されました。

 1907年7月2日、ミュンヘンーアウグスブルク間で4両の急行型客車を牽引し、154.5km/hを記録しました。

 S 2/6が叩き出したドイツの速度記録は、29年後の1936年、DRGの高速試験機BR 05 002号機よって、200.4km/hが達成されるまで保持されました。 

 S 2/6は試験機ながら実際に配属されましたが、1輌しかなく、同等の性能を持つ機関車も存在しなかったことから、運用には適してなかったようです。

 そんなこともあってか、1910年にはプファルツ鉄道に移管され、ルートヴィヒスハーフェン機関区に配属となりました。

 移管に伴い、塗色が緑からこちらのBRAWAのモデルのように茶色に変更になりました。

 なおWikiによると、茶と紫とあります。

 こちらでは同鉄道のP 4等と一緒に急行列車を牽いたようで、バイエルン時代よりも有効に活用されたようです。  

 その後、1922年に再度、バイエルン王国邦有鉄道へ復帰しましたが、1920年に発足したドイツ鉄道公社DRGでは1925年に称号規定改正の際にBR 15を付番され、15 001となりました。

 しかし、早くも同年中に廃車となりました。

 その後、ニュルンベルク交通博物館において、現在まで保存されております。

 以上、Wikipedia 日本語版 王立バイエルン邦有鉄道S2/6型蒸気機関車 から引用、参照いたしました。 

 それで模型の方ですが、Modellbau-Wiki によりますと、有名機ではありながら、たった1台しかない特殊な機関車なので、HOでは長らく、1969年、1993年 Fulgurex 、1994/5年 Lemaco 、1995年 Micro Metakit 、1999年 Trix Fine Artsのようにブラス製品の独壇場でした。

 そんな中、初めて製造された量産品は、こちらのBRAWA製品で2004年のことでした。

 その後、2015年 Märklin/TRIX製品が続きます。

 両社とも多数のカラーバリエーションを発売しています。

 こちらは1910-1922年の間、プファルツ鉄道への移籍により活躍していた時代です。

 今回初めて知りましたが、本機の短い生涯の半分以上がプファルツ鉄道での活躍だったのですね。 

 BRAWAらしく、大変繊細な出来です。

 他方構造的には弱いところもあり、正直取り扱いには相当注意を要します。 

<各部のディテール> 

 主要構造はダイカストです。

 少々曲がっていますが、前面のステップはさすが金属製ですね。

 弁装置周りもとても細かいです。 

 動輪をはじめとするスポーク車輪はどれもとても繊細、かつシャープな出来です。

 2.2mの大動輪の美しさには惚れ惚れしますが、取り扱いが怖いです。

 この機関車は大変美しいことで有名ですが、側面から見た際にボイラーの下部が透けているのが効いているんでしょうね。

 このタイプの角の付いたキャブは、S 2/6とヴュルテンベルク Cだけだそうです。 

 BR 05の様な流線形ではありませんが、尖った煙室扉、傾いた煙突、傾斜角のついたキャブなど、いかにもスピードが出そうなスタイルですね。

 とても今から117年も前の車両とは思えません、  

 2000年代以降の高級量産製品にはダイカストボディが増えましたが、BRAWAはその嚆矢となりました。

 塗装も含め、いい感じと思います。

 テンダー転落防止板は?ばねで可動します。 

 それでこの製品には大きな欠点があります。

 一つは異様に細かすぎること。

 そのため強度が弱い部分や、変形しやすい部分があります。

 そして最大の難点はBRAWA製品の常で、プラの材質が悪いことです。 

 2018年6月30日に、久しぶりに出して遊んだのですが……、 

 走行中、突然ショートしました。

 調べたところ、テンダーの車輪がショートしています。 

 更によく見ると、テンダーの中空車軸が見事に割れてしまいました。

 わかりにくいかもしれませんが、中心で割れているのがわかると思います。

 これで車輪がずれてショートしたのですね。

 恐らくプラの材質がとても悪く、経年による収縮により、割れてしまったものと思われます。

 同社で多発しているギア割れも全く同じ理由でしょう。

 幸い今のところギアは大丈夫なようですが、いつまで持つのでしょうか?

 とても不安です。

 なお、この中空車軸ですが、代替になる材料が全く入手できません。

 よって、Gクリアで仮接着するしか方法がありませんでした。

 精度の高い中空プラ棒があれば、中空車軸などいくらでも作れるのですが、私が知る限り、市販されている精度の高い中空プラ棒は全く存在しませんでした。

 と言うことで、私の個人的な意見ですが、率直なところ、BRAWA製品は好きではありません。

 よく出来ているし、何よりも珍しい機種が多いのですが、他と比べて相当高額ですし、ここまで細かい必要を感じません。

 何よりも、動力系にギア割れのような致命的なトラブルが起きましたので、最近は買ったことはありませんね。 

 プファルツ鉄道時代ですが、 テンダー側面に"K. Bay. Sts. B. "と記されていますね。

 思えば昔、ブラス製のTRIX FINE ARTのS 2/6を持っていましたが、こちらも大変高価な割には、真鍮がすぐに変形したりするので、好きになれず手放してしまいました。


 こちらのBRAWAのS 2/6はDCCサウンド機ですが、私はサウンドも要らないので、もっと安心して長く使える製品が欲しいと思います。


2023/8/10 記 ・8/11 追記 
 

 

 

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