プロイセン王国邦有鉄道 K. P. St. E. 急行旅客用蒸気機関車 S 10 1008号機 Breslau (TRIX 22503)
K.P.St.E. S 10はプロイセン王国邦有鉄道が製造した急行用蒸気機関車です。
<主要諸元>
型式:2'C h4、バッファ間距離:20.75m、運転重量:77.2t、軸重:17.5t、軸配置:2C、動輪径:1,980mm、過熱式四気筒、出力:861kW、ボイラー圧力:14bar、最高速度:110km/h
1910年から1914年の間、シュヴァルツコップフで202両が製造されました。
誕生の経緯
20世紀に突入してからの10年間、鉄道輸送は飛躍的に増大しました。
その結果、交通量の増加による編成輌数の増加や客車の重量増も相まって、それまで使用されていた駆動軸2軸の急行用機関車では力不足が明白になりました。
そこで、プロイセン王国邦有鉄道K. P. St. E.は、傑作機P 8をさらに発展させた急行旅客用機関車としてS 10を開発しました。
開発にあたってはP 8が基礎とされましたが、ザクセンXII H(後のBR 17.6)を参考に、第一動輪を駆動する四気筒機とされました。
この変わった構造はスムーズな走行を期待してのものだったようです。
完成した車両は性能こそ、予定通りでしたが、燃費が非常に悪く、勾配線区での性能低下も著しかったようです。
一般的に複式四気筒機の燃費は良く、戦後DBにより性能向上工事を受けたBR 18.6は最も燃費が良かったようですが、この機種は同じ四気筒機でも真逆の結果でした。
これは想像ですが、S 10は、いわゆる複式(シリンダーを出た蒸気を再利用する)ではなく、四気筒それぞれを直接駆動するものだったのでしょう。
いずれにしてもこの燃費の悪さは、本機の決定的な弱点となり、引退を早めました。
実際、202輌作られたS 10は135両がBR 17. 0-1として、DRGに継承されたものの、1935年までに退役してしまいました。
プロイセン王国邦有鉄道の蒸気機関車は、G 8.1(BR 55 29-55 約5,300輌)やP 8(BR 38.10-40 3,948輌)をはじめとして、日本からすると信じられないくらい大量生産されたものが多いです。
明らかな失敗作とも言えるS 10でさえ、202輌も作ってしまうのですから、当時のドイツの生産力というのはすごいものがあったのですね。
なお、BR 17.0-1は戦後、ブレーキ機関車として3両が残りましたが、最後に残った一両は1954年に廃止されました。
以上、Wikipedia 独語版 Baureihe S 10を引用、参照いたしました。
それで模型の方ですが、S 10は、早期に引退した失敗作だけに製品化は少ないです。
HOの量産製品ではこちらのMäklin/TRIXが唯一の存在ですね。
こちらK.P.St.E. S10 1008 Breslauは1995年にカイザーツーク用の機関車として発売されました。
この製品はあまりにも高額になったためか、機関車と客車2両セット×3種類を分売するという、HOではほとんど例を見ない特殊な発売のInsider製品だったように記憶しています。
ゆえに1995年当時としても、破格の値段でした。
確か全部揃えると20万円くらいしたのではないでしょうか?
ただし、それから約30年が経過した今、客車の方はよく見かけるアイテムになりましたね。
しかしながらこちらの機関車はあまり見かけないし、また客車も6両揃うことはほとんどありません。
そうしてみると、この機関車は当時のモデルとしては珍しく、炭水車までダイカスト製です。
出来の方は30年前としては良い方でしたが、その当時の水準でさえ、スーパーディテールとまでは言えないと思います。
少なくとも当時のきわめて特別なモデルというべき出来ではないように個人的には感じます。
ただし、ダイカストの質感は良いですね。
モーターも特殊なものを使っています。
Cサインのようなものでしょうか? 詳しくはわかりません。ご存じの方がいらっしゃいましたら、よろしくお願いします。
いずれにしてもPWM方式は使わない方がよさそうです。
この製品には大きな問題があるようです。
一つは動力系に問題があり、不動になってしまうことが多いようです。
原因がよくわかりませんが、部品が壊れてしまうそうです。
もう一つは排障器で、硬いブリスターに寝かせて入れるという構造、そして材質が結晶化しやすいことから簡単に折れてしまいます。
中古で出ているS 10はかなりの確率で排障器が折れていますので、求められる際には十分ご注意ください。
構造上の問題があったせいか、この製品はほとんど再生産されておりません。
調べた限りでは2002頃までを除くと、2009年にメルクリンがBR 17 099として作ったきりです。
<各部のディテール>
上記の説明通り、第一動輪を駆動するという大変珍しい方式です。
カイザーツークの機関車という性格上、ロッド周りは黒染めにはなっていませんね。
車輪はいい感じの黒染めです。
キャブ脇のプロイセンの紋章や車番、レタリングは流石と思わせる印刷です。
ディテールはいかにもTRIXらしいですが、Fleischmannなどに比べると繊細さは負けているように感じます。
反面、金属製のバッファはとても薄くて実感的ですね。
この機関車はオリーブがかった緑、マルーンぽい赤ですが、1980年代の機関車はもっと緑っぽい塗装が一般的で、下回りの赤もDBの赤のような感じでした。
プロイセン蒸気機関車の色も正確なところはわからないのでしょうね。
スポーク動輪が美しいですね。
ハンドレールは太いですが、金属製なので質感が優れています。
車体各部やテンダーの赤黒線はとても綺麗で気持ちいいですね。
構造上の問題があったせいか、この製品はほとんど再生産されておりません。
調べた限りでは2002頃までを除くと、2009年にメルクリンがBR 17 099として作ったきりです。
私は今から20年位前に某中古店で客車ともども購入しました。
実は長年の売れ残り品であり、特別に半額にしてもらいましたが、それでも7万円弱と相当高額でした。
その頃はこの製品の価値は相当高かったし、欧州型を志すならば持っていたいと思いました。
ただし、今買うかと言われたら絶対に買わないでしょう。
何よりも機関車に致命的とも言える欠陥があるようですし、客車も確かに良い出来ですが、いかんせん昔のTRIXなので、ごつく感じますので。
2023/8/3 記
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