ドイツ連邦鉄道 DB 急行旅客用蒸気機関車 BR 012 064-2号機 (ROCO 43340)
今回は、ドイツ連邦鉄道 DB において、旅客用蒸気機関車の終焉を飾った名機 BR 012を紹介します。
DB BR 012は、ドイツ国鉄 DRG が開発した流線型三気筒式急行用蒸気機関車 BR 01.10を戦後、ドイツ連邦鉄道 DB がボイラー更新、各部の改造を施した上に、重油炊きに改造した機関車です。
<DB BR 012 主要諸元>
型式:2'C1 'h3、バッファ間距離:24.13m、運転重量:111.6t、軸配置 2C1、軸重:20t、動輪径:2,000mm、過熱式三気筒、出力:1,817kW、ボイラー圧力:16bar、最高速 前進:140km/h、後退:50km/h
上記の通り、BR 012はもともと、ドイツ国鉄 DRG が150km/hで走行する D 及び FD 列車の牽引用として開発した流線型蒸気機関車 BR 01.10です。
それまで急行用として使用されてきたBR 01 及び BR 03は、120/130km/hまでしか承認されておらず、それ以上の速度の場合、二気筒式では振動が酷くなることから、BR 01.10は三気筒が採用され、また全面流線型カバーが取り付けられました。
BR 01.10は好成績を収め、量産が開始されましたが、折しも第二次世界大戦が勃発し、戦時輸送用の貨物機関車が優先されたため、シュヴァルツコップフで55輌が作れられるに終わりました。
車番:01 1001、01 1052-1105
1944年、戦争の敗色が濃厚となるに伴い、BR 01.10は全機が西ドイツへ移動しています。
これは他の機種でも見られる傾向であり、一つは、東部戦線における部隊の移動が、燃料不足により鉄道を利用することが多くなっていたため、旅客機より貨物機が必要とされたこと、そして何よりも敗戦を見越して、ソ連の手に落ちないようにしたためでしょう。
ただドイツ国鉄は、次官ガンツェンミュラーを代表に、ナチス体制に全面的に協力したので、ともすれば敗北主義と取られるような行動が許されたのか、不思議な点もあります。
戦時中は他の流線型機と同様、下回りのカバーが外されるなどのみすぼらしい姿となりました。
しかし、それ以上の大問題として、当時ボイラーに使用された鋼材 St 47Kに早くも疲労の兆候が見られたのです。
そんなこともあり、敗戦直後の1945年6月20日、全機が一旦退役してしまいます。
この時点での走行距離は、僅か50万km以下だったそうです。
しかしながら、日本と同様、荒廃しきったドイツでは車両不足が深刻であり、本車も修理を行い再使用されることになりました。
それでも1949年まで使用されず、最終的に廃車となった01 1067を除く、54輌が修理されることになりました。
このように簡易的な補修で現役復帰したBR 01.10ですが、ボイラー材質の劣化は如何ともしがたく、遂に54両全機が新型火室を備えた新設計のボイラー載せ替え、各部ローラーベアリング化などを含む全面更新 Umbau を実施することになりました。
この改造は1953-56年に実施され、BR 01.10は晴れて全力発揮できるようになりました。
また1956年、01 1100が試験的に重油炊きに改造されました。
結果、性能が向上し、また火夫の労働が大幅に軽減されることが確認できたため、33両が重油炊きに改造されることになりました。
1968年、ドイツ連邦鉄道 DB のコンピュータナンバー化により、蒸気機関車の型式には先頭に0が追加された3桁番号 (例えばBR 01→001) となり、また車番も001-999の3桁、その後にハイフンを付してチェックデジットが付けられることになりました。
この結果、従来の.10などの主要形式の後に付ける区分け番号や、車番が1000以上のものは対応できなくなりました。
本形式ですと、001.10という形式は使えません。
そこで、石炭炊き幾を011,重油炊き幾を012と番号付けしました。
BR 012は、その軸重の大きさから幹線でしか使用出来ませんでしたが、特に北ドイツの非電化区間で大活躍しました。
そして、最後まで急行や準急の先頭に立ち、文字通りドイツ旅客用蒸気機関車の最後を飾ったのです。
1975年5 月31日の夕方、ライネ車両基地のBR 012 063-4が牽引するE 3265 (ミュンスター-エムデン) が、BR 012によるDBの最後の定期列車となりました。
現在でも保存されている機種が多数あります。
引退からしばらくの間、動態保存機が複数ありましたが、流石に引退から半世紀近くが経過した現在、各部の劣化や資金不足等により、現在ではほとんど静態機になってしまったようですね。
以上、Wikipedia 独語版 DR-Baureihe 01.10 より、引用、参照いたしました。
それで模型の方ですが、Modellbau-Wiki DR-Baureihe 01.10 によりますと、重油炊きのBR 012のHO量産模型には、1983年初回発売のMärklin 3310、1980年代後半のオーストリアLiliput 品番不明、そして、1996年のROCO製品43340の三種類があります。
なお、Märklin は同じ品番3310ながら、1993年の012 063-4号機では足回り、ロッド、弁装置が改良されています。
また、ROCOも後に発売された製品(品番不明)は、金属車輪に変更されていますね。
こちらで紹介する012 064-2号機は、品番43340で、初回生産1996年の製品です。
<各部のディテール>
いかにもROCO製品らしい仕上がりですね。
車輪やロッドは黒染めになりましたが、輪芯がプラなのが残念です。
黒は以前のようなベタのつや消しではなくなりました。
ディテールは良いですし、レタリングもきれいです。
なんとなくキャブが後方に傾いているような。
バッファは金属の挽物のようですね。
金属製のハンドレールとプラの部品の違いがよくわかりますね。
1980年代のROCOの赤に比べると、大分感じが良くなったように思いますが、それでも、プラの無塗装部分は塗ってやりたい気もします。
とは言ってもROCOの材質は経年劣化が著しく、弾力性が失われている場合が多いため、分解するのには躊躇しますね。
もう27年も前の製品ですが、十分な出来です。
窓ガラスもそれほど黄変していないようですね。
制式キャブ。
バタフライスクリーンも透明部品です。
実にかっこいい 2' 3 T 38 Öl テンダー。
赤い台車と台枠は塗りたくなりますね。
BR 012は大好きな機種なのですが、ROCO製品は発売当時、買い逃してしまい、爾来、探し続けておりました。
こちらは2004年になって、今は閉店してしまったEGSで見つけたもので、程度は良かったのですが、不動でした。
ともかくようやく出会えた機種ですし、なんとかなると思って買いました。
今はとてもそんな冒険はできませんね。
それで分解したら、なんとモーターの接触不良であり、すぐに走るようになりました。
これはラッキーでしたね。
ただし、テンダーの分解時に指が滑って、ご覧のように擦り傷がついてしまいました。
ROCOやFleischmann製品は、分解しにくいので本当に困ります。
ところで、こちらはROCOの1990年代製品ですので、テンダー及び機関車の両方を駆動します。
ROCOだけが採用しているこのシステムですが、私は牽引力増強と安定走行のためと思っておりました。
しかし、井門さんによりますと、テンダードライブで動輪を確実に回すためではないかとのことです。
テンダードライブの場合、機関車は確かに押されるだけですので、動輪が滑って回りにくいことがあり、製品によっては車輪が滑らないように、わざわざゴムタイヤをつけている場合もありますから、この説が正しいような気もします。
何れにしても、ROCOのBR 012はスムーズに走ります。
BR 012はDBの最後を飾る名蒸機であり、UIC-X、n-Wagen、Unbauwagen、戦前型等、幅広い車両を牽引しました。
上記の通り、新品はもちろんのこと中古市場でもそれほど多く見かける車種ではありません。
コレクションにも有益な車種と思いますので、もっと入手しやすくなるといいですね。
2023/8/26 記
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