KATOの近鉄21000系アーバンライナーはJ、HO?

 

 KATO近鉄アーバンライナーは、今から40年くらい前、突如として発売されました。

 正しく何にもないところに突如誕生した、ビッグバン的エポックメーキングな製品でした。

 しかし……、大変残念なことに、プラアレルギーなる実体のない扇動に思い切り煽られていた保守的な日本の模型趣味界には受け入れられることはありませんでした。

 1990年当時、6連で52,000円と言う価格も破格でしたし。

 そんなこともあり、あまり売れず、だいぶ後年まで残っておりましたね。

 本製品はその後再生産されていません。

 当時、プラ製16番などほぼ皆無なのに、こんな地域性の限られるアイテムを選んだのか、なんで予告されていた当時非常に人気のあった485系をやらなかったのか、私にはさっぱりわかりませんでした。

 昔、私が属していた模型クラブの大先輩の方々も、同じようなことを話していましたし。

 私も昔持っていましたが、結局手放してしまいました。

 模型としての出来は決して悪くはなく、パワトラ式の動力を除けば、現代でも通用する出来と思いますが、少なくとも商売としては、失敗作の最たるものでしょう。

 遅ればせながら、プラ製のJは盛り上がってきましたが、この製品はたぶん再販されないでしょうね。

 さて、KATOの近鉄アーバンライナーは車体1/80、軌間16.5mmの模型です。

 言うまでもなく、アーバンライナーの実物は1435mmです。

 1067mmではありません。

 KATOはHOと言っていましたが、HOとは、「標準軌」の模型を「16.5mm」軌間のレールで走らせるために縮尺1/87で製作する模型です。

 アーバンライナーについては、軌間16.5mmは正解ですが、1/80という車体スケールは、今日的な取り扱いでは1/87に対し、誤差範囲ではないので、HOに入れることは困難でしょうね。

 

 それでどうして軌間1435mmにも係わらず、車体スケール1/80にしたか。

 もちろん、これはJと並べるためです。

 Jとは、実物の軌間に係わらず、車体スケール1/80を用い、模型の軌間16.5mmを使用する規格ですので。

 だからKATOの近鉄アーバンライナーは、Jということになります。

 

 ということで本論はおしまいなんですが、屁理屈を少し。

 

 上記のように、欧米の鉄道模型の規格は、HOにしろ、OOにしろ、Nにしろ、何にしろ、全て「標準軌を模型化」する際の規格です。

 これらの規格が定められたときには、狭軌については全く考慮されていませんでした。

 従って狭軌については、HOでもOOでもNでもないのです。

 鉄道模型の世界で明確に「狭軌」について定められたのは、戦後のことであり、HOn3、HOe、HOm、HOn30、Oe、OO009、Nmなどのように、縮尺を表す文字の後に軌間を表す文字や数字を使って表現します。

 このことは、今から約70年前の1950年代には既に決まっています。

 

 ところで狭軌はその通りなんですが、実物の軌間が1435mmで、模型の軌間が16.5mmのものは、当然のことながら、HOやOOになる可能性があります。

 これは車両限界も何も関係ありません。

 ですが、少なくとも2023年現在、HOは1/87、OOは1/76なので、1/80のKATOのアーバンライナーはHOでもOOでもないことになります。


 しかし……、時が1980年代以前だとすると話は変わってきます。

 欧米の鉄道模型規格が、実物の標準軌1435mm軌間の模型を表すことは1930年代から不変の事実です。

 しかし、少なくとも欧州では、縮尺については、1/87に統一されておりませんでした。

 具体的にはスイスのHAG、イタリアのRivarossi、ドイツのFleischmann、TRIX(BR 18.6など古い製品)、Sommerferdt(の古い製品)、フランスのASの何れも、決して1/87ではなく、16.5mm軌間ながら、概ね車体スケール1/82~1/85程度を採用しておりました。

 他方、古いJouefなど、フランス製品は明らかに1/87よりも小さいものが見られます。

 

 ですから、1980年代初頭なら、KATOのアーバンライナーはHOと言えたかもしれない、 ただそれだけの話です。

 

 まあ個人的意見としては、日本でも既に1960年代には、1435mmの新幹線模型を1/87で作っていたので、1067mmはともかく、近鉄、京急などの1435mmは1/87で作って欲しかったですねぇ。

 勝手な言い分かもしれませんけど。

 なお付言しますと、上記のメーカーも1980年代の製品から1/87を採用し、今では再生産品を除くと、大きなスケールの製品は作っていないと記憶しています。 


<余談>

 HOの車体スケールが1/87に決着して以降、1/87ではないHO製品は作られています。

・スパニッシュ ブレトリ(スイスの1号機関車) メルクリン

・Der Adler ドイツの1号機関車 TRIX

・ヴュルテンベルクC型 メルクリン

 これらは明らかに1/87ではありませんが、HOとして発売されています。

 ただしこれらについては、多少の申し開きも必要でしょう。

 これらの古典機は、1/87で作るには小さすぎました。

 またTRIXのDer Adlerはドイツ国鉄150周年を記念して1962年の古い製品を再生産したもので、こいつは相当大きいです。


 他方、欧州で狭軌の模型を16.5mm軌間で作り、HOと称した例は、私が知る限りではPRIMEXの1000mm軌間Zugspitzeisenbahn(ツークシュピッツェ)鉄道の電車わずか一例だけです。

 Web情報によると、この模型の全長は、1/87になっているようです。

 欧州には、決して少なくない1000mm軌間の鉄道がありますが、この模型以外、最初から16.5mmで作った例を私は知りません。

(BemoやBrekinaには、同様に1,000mm軌間の16.5mm仕様がありますが、これらは最初からそうだったのではなく、あくまで12mmの派生品であり、上とは意味合いが違うため、除きます。)

 2023/7/3 記

 

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