鉄道模型 未だに解決されません J/16番の車両収納箱について その1

 

  HOやJをたしなんでいる方の大きな悩みの一つが、車両をいかに収納するかということだと思います。


 今まで何回も書きましたように、HOやJの箱にはいくつかの大きな問題があります。 

 と言いますか、問題が全く無い箱と言うのが存在し無いといった方が正しいと思います。

 模型メーカーも全く工夫をしていないわけではありませんが、HO/Jが誕生して60年以上経つのに、未だに全く解決されない状態にあります。

 特に重大なのが、箱を構成する物質により、車両の塗装が侵されてしまうことであり、多くの場合、再起不能な重大トラブルになってしまいます。

  具体的には下記が知られています。 


1)スポンジ

 主に真鍮製品の箱の緩衝用に使用されているスポンジが、経年により分解し、その際に発生する有機ガス等により、塗装が痛んだり、スポンジが塗装に貼り付いてぼろぼろになってしまいます。

 さらには分解時に生成する酸?により、真鍮が腐食することもあります。 

 よく中古屋さんに、スポンジのこびりついた古いブラス製品が並んでることがありますが、まさしくあの状態です。 

 この原因ですが、一番代表的なポリウレタンスポンジは、組成内にエステル-COO-結合を持っています。このエステル結合は、スポンジの特性を表現するために必須の成分であると同時に、経年と水分により加水分解されてしまいます。

 するとスポンジ自体がボロボロになったり、べたついたりしますし、更に加水分解反応により、カルボン酸-COOHやアルコールR-OHが副生されるため、塗装が侵されてしまうのです。

 実際、古い箱を開けるとアルコールっぽい匂いがすることがありますよね。

 また原料に使われているイソシアネートのC-N結合は紫外線により切断され、分解したり、黄変の原因にもなります。

 いずれにしても、加水分解反応を止めることはできません。

 程度の差はあるにせよ、ポリウレタンスポンジは程度の差こそあれ、絶対に劣化するということです。

 ただし水分が滞留しないように、換気することは延命にはなりそうですし、また副生したアルコールやカルボン酸を箱の中に滞留させないためにも、換気は極めて重要でしょう。

  実際、天賞堂さんは、

1)年に最低数回、箱を開け、模型を取り出して換気すること

2)スポンジの劣化が見られたら直ちに廃棄するように

と言っておりました。 

 とは言いましても、ポリウレタンの天日干しは紫外線による悪影響があるので、避けた方が良さそうです。

 なお、一口にスポンジと言っても、化学組成が全く異なる場合があるそうで、天賞堂さんの情報によると、特に劣化しやすいのが、車体を包んでいる柔らかいもの(石炭原料由来)だそうです。

 これは私の拙い経験にも合致しますね。

 更に私の経験ですが、スポンジの劣化は欧州型でもよく起きており、日本型でよく使われる黄色のスポンジだけでなく、Rivarossiの灰色やスイスの高級品HAGの黒いスポンジもぼろぼろになりました。 

 上の写真はHAGの実例ですし、また以前、某オクに劣化した灰色のスポンジがベロベロに付着したHAGが並んでおりましたね。

 下記の通り、発泡スチロールで大きな問題を起こしているROCOは、近年、動力車の箱に黒いスポンジを使っています。

 今のところ、劣化したことはありませんが、何れはダメになるのだと思います。

  なお、シリコーンスポンジは安定性が極めて高く、少なくとも加水分解しませんが、価格が高く、また所望の柔らかさが得られず、また大きなものが作れないためか、使われていないようですね。

 もっとも工夫すれば使い方はあるはずで、単に模型メーカーが知らないだけかもしれません。


 それで対策ですが、上記のように換気は一時的な対策にはなりますが、加水分解反応自体を止めることは出来ません。

 またアルコール等の有機溶剤で侵された塗装は、回復しようがなく、再塗装以外に修理の方法はありません。

 以上のように、スポンジの箱は模型鉄道に致命的な損害を与えることが多いので、早急に他の箱に入れることをお勧めします。

 以下続きます。


2023/7/9 記


 

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