怪奇!ならぬ改軌!大作戦
先日、某所で25~30年くらい前の古い時代のBemoのスイス型製品を大量に入手しました。
はい。
率直に言って、欠品、破損、接着汚れなど状態の悪いものばかりで、ほぼ現状・ジャンク品と言って差し支えないものでした。
まあ、その状態ですので、お値段の方も相応でしたけど。
それはともかく、これらは全て、9mm仕様の製品だったのです!!
それで、ご存じの方も多いと思いますが、昔のBemoは、基本、同一の車両の軌間12mm仕様と9mm仕様を発売しておりました。
これには当然、理由があり、Bemoが最初期に発売したドイツ=ヴュルテンベルク地方の狭軌線車両は、1979年にBemoが発売したDB BR V 51/V 52など、実際に1000mm軌間と750mm軌間でほぼ同じ車両が使われることがあったからです。
そしてこの原則は、実際には750/760mm軌間が存在しないRhBなどのスイスのメーターゲージの製品にも応用されました。
恐らくですが、この理由は1980年代には、まだまだ12mmについて、レールなどの走行環境が未整備だったことも挙げられると思います。
なお、Bemoの12mm/9mm軌間の製品は見分けやすく、当時の4桁品番の上から2桁目が「0」は9mm軌間、「2」は12mm軌間を表します。
上の箱写真の箱右上にHOe-HOmと記されているのと、品番の違いがおわかりになると思います。
当然のことながら、この2種類の造り分けは、車輪の軌間だけです。
軸受や台車枠、そして車軸や車輪も12mm/9mmで全く変わりません。
貨車の車輪の脇に穴が各4個空いています。
この穴はブレーキシューを取り付ける穴です。
内側が軌間9mm用、外側が12mm用になっています。
なお、ボギー有蓋車は12mm用の穴しか空いていませんでした。
余談ですが、ブレーキシューの部品ですが、欠品していることが実に多いです。
今まで中古車でブレーキシューが欠品だったことが相当ありました。
もし中古車を購入される際には、ブレーキシュー/エアホース部品のランナーが入っているか、取り付けられているようでしたら、欠品がないか確認することをお勧めします。
話を戻しまして、上記の通り、基本的には機関車/客車/貨車共に、12mm/9mm仕様は全く同じで、軌間だけが変更されております。
ということは、車輪の間隔を9mm→12mm、あるいはその逆にすれば、改軌が可能ということです!!
私が思い切ったのも、色々ありましたが、過去になんとか出来たという経験があったからです。
<9mm対応車輪>
バックゲージ 約7.3mm
<12mm対応車輪>
バックゲージ 約10.3mm
車輪も車軸も全く同じ。
バックゲージだけが違います。
なお、青部分はプラ製の絶縁ブッシュです、
今回のケースのように、9→12mmとするのなら、片側1.5mmずつ、外側に移動してあげれば良いことになります。
しかし……、ことは簡単ではありません。
模型鉄道の車輪は大変精密に出来ています。
無理に引っ張れば、曲がってしまいます。
ましてBemoの動力車の軸はギア一体の真鍮製。
当方の過去記事のように、無理な力を加えたら折れてしまうのです。
実は改軌について、例外車種を除き、動力車の方がずっと楽です。
これについては、いずれ他の記事にて書くつもりです。
他方、今回実施した非動力車は、車軸が1.5mmの鉄製という、動力車に比べると大きなメリットがあります。
反面、動力車にはない(一部ある)以下の重大な問題があります。
1)軸端がピボットになっていて、以前使用したギア抜きは使えない。
2)車軸は片絶になっており、絶縁側は輪芯が樹脂なので、比較的簡単に動かせるが、非絶側は、
金属同士なのでとても硬いことがある。
普段、このような場合に使うこの道具は、ピボット端面を潰してしまうので、使えません。
また以前、端末が平坦な駆動軸から、車輪を抜こうとした際、非絶側を押した際に押し切れず、フレームが歪んでしまいました。
それでこの作業ですが、ともかく軸や車輪を固定することが第一です。
ここが動いてしまうと、余計な力がかかり、軸や車輪が歪んでしまいます。
実際、以前、簡易な道具や方法で行い、少し軸が振れてしまったことがありました。
ともかく非絶側を動かすのには相当大きな力がかかりますので、車輪をガッチリと固定する必要があるのです。
車輪を固定するのに、今回はこの治具を使いました。
以前、会社の方の知り合いの方に作ってもらったもので、上の車輪抜きの本格的なものです。
ただし、車輪抜きとしては種々問題があり、お蔵入りになっていました。
軸を押すにはこの卓上バイスを使います。
ここで重要なのは押す物体(この場合は軸)に対し、押し面が垂直を保ち移動することです。
そういう意味ではこの道具はマシといった程度であり、推奨しません。
上写真のような、いわゆる万力は、口金が平行に移動しないので、推し面が傾いてしまい、車輪が曲がってしまいます。
絶対に使用しないで下さい。
上記の通り、卓上バイスですが、本当はこんな安物ではなく、もっと精度の高い、しっかりした圧入バイスを使うべきです。
とは言っても、素人にはなかなか手に入らないと思いますが。
私も入手方法はわかりませんでした。
しかし、バイスだけでは軸を押し込めません。
それでどうやったかと言いますと、
先程の治具に、車輪を取り付けます。
ここで大切なのは、車輪が押す側に対し垂直になっていることです。
また車輪が動くと、トラブルのもとなので、溝にNの余ったウレタンを埋め、固定しました。
車軸の中心が口金のセンターに来るように高さを調節します。
そして問題はピボットを押す側です。
金属で押したのでは頭が潰れてしまいます。
樹脂でも当たり面が平面だったら同様にだめでしょう。
そこで、5mmプラ角棒に0.7mmで貫通口を開け、更に1.2mmで浅く拡径しました。
これにより、ピボット先端は0.7mm穴に逃げ、斜面が1.2mmに当たって押せるはずです。
治具をバイスにセットした様子。
再現写真のため、車輪は改軌後を使用しています。
プラの角棒が口金中心位置(幅・高さともに)に来るように調整します。
一点に力を集中させ、斜めの方向に無駄な力が働いて、軸が曲がらないようにです。
決して無理をせずに、ゆっくりと押して行きます。
最初に非絶の嵌合側から押します。
ともかく慎重に作業を進めました。
渋いのもありますが、動き出すと簡単でした。
この際、注意しなくてはならないのは、プラの穴が負けて、ピボットが穴に潜り組んでしまうのです。
そのたびに穴を開け直しの繰り返しです。
プラ棒も変形したら取り替えます。
ピボット受けが一定なら押した距離も測れるのですが、上記のようにプラは柔らかいので、ピボットが食い込んでしまうため、目分量で少しずつ押しては、治具から外して位置を確認し、また軸に取り付けるの繰り返しです。
この際、大切なのは押し込みすぎないこと。
車輪を軸に押し込む修正は危険を伴いますので。
とは言うものの、何しろ目分量しかない世界なので、何回か押し込みすぎました。
非絶側が終わったら絶縁側を移動しますが、こちらは樹脂なので簡単に動きました。
押し込み過ぎに注意です。
いずれにしても、軸から取り外して、ノギスでバックゲージを計測しつつ、また治具にセットし、押すの繰り返し作業ですので、時間が大変かかりました。
外から車輪を押すのであれば危険は伴いますが、バックゲージ分の障害物を入れておけば、いいですが、広げる側はそうは行かないので。
広げすぎてしまった場合の修正方法。
これは悪い方法です。
ですが、他に方法がありませんでした。
上写真左で上記のプラ角棒でピボットを受けます。
右側は2mm穴を開けておいて軸が埋まるようにしておきます。
こうすると写真右の車輪が押されて左に移動するのです。
なぜこの方法が危険かというと、おわかりかと思いますが、軸の保護がされていません。
右から力で押すのですから、軸の抑えがなくては最悪曲がってしまうのです。
また上記の軸に比べると車輪の垂直も出にくいです。
今思えば、上の道具で押せばちょっとはマシだったかも。
それでも軸の変形防御はありません。
私は軸を指で押さえながらハンドルを動かしましたが、危険すぎますね。
どうしてもこの方法を取るのなら、やはり遥かに小さい力で動く絶縁側で調整すべきでしょう。
ということで、今回入手した車両について改軌作業を行うのに、6時間以上かかりました。
幸いなことに今回、車輪が大きく振れたものはありませんでした。
これにはほんとホッとしましたよ。
以前やったときは、上記の道具を使わなかったこともあり、見事に失敗してますので。
でも、こんな面倒極まることはしたくないですよね。
とは言うものの、Bemoの車輪って、まず売っていないし、ドイツでも10軸25ユーロ以上!!します。
こんなの全部変えたら、いくら掛かるんだって話です。
背に腹は変えられないってやつですね。
ともかくこんな真似はしない方がいいですよ。
特に下の方の車輪を押し込む方法は絶対に真似しないことをお勧めします。
2023/1/29 記
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