Zinkpest発生! Zillertal鉄道 蒸気機関車 2号機 整備 (Liliput 701)
Liliput の Zillertal 鉄道 2号機を整備中、重大なトラブルに遭遇しました。
オーストリア西部に位置するZillertal鉄道は、現在でも蒸気機関車の保存運転が行われることから、「世界の車窓から」等でも良く取り上げられるので、ご存じの方も多いと思います。
この鉄道をはじめとするオーストリアのナローゲージ模型は、古くからオーストリアLiliputで発売されており、中でもこちらの2号機は、ナローの機関車であるためでしょうか、海外鉄道模型を完全無視してきたTMS等でも取り上げられることがあり、また少数ながら日本にも入っておりましたので、ご欄になった方も多いのではないでしょうか。
かくいう私も、古くから存在は知っておりましたが、売っているのは見たことがなく、1980年代になって共立工芸で扱っているのは知ったものの、どうもC1というスタイルに馴染めずに、入手せずにおりました。
その後欲しいと思ったときには、なかなか機会がありませんでした。
なお、本機はBachmannブランドでも発売されておりますが、中身は相当変わっているようです。
それでこちらを手に入れたのは今年2022年のことになります。
さて、こちらですが大変古い製品でありながら、ご覧のように前のオーナーの方が大切にされていたようで、とても綺麗な状態でした。
うちに来た当初は、集電不良気味でしたが、シューが車輪に上手く接していなかったことが原因で、直した後はうるさいながらも快調に走りました。
しかし、運転時の騒音が高いことが気になり、給脂しようと思ったのが今回のきっかけでした。
この機関車は入手時より説明書がなかったので、分解するために情報を集めました。
しかし……、欧州型の製品の恒で、ともかく情報がありません。
ようやく探し当てたWebページに、リアの爪を押して、それから車体内部の爪を押せというのがありましたが……、
どうにも抜けません。
でもよく見ると吸水蓋の周りを押せとありましたが、裏側には何もありません。
こういうのは無理をするのは絶対にだめですので、考えました。
そういえば、この製品は煙突が取り替えられるはず……、案の定でした。
実は上記のページ、取り上げている製品はBachmannになってからの改良製品であり、こちらのオーストリア版とは完全に構造が違うのです。
オーストリア版は、煙突がねじになっており、まずこれを外します。
それから車体を抜くのです。
すると、いとも簡単に下回りが外れました。
しかし、無理をしなくてよかったです。
完全に破壊してしまうところでした。
いつも言っていることですが、本当に情報は大切ですね。
こんな感じです。
リアパネルの爪は煙突を外せば、それほど障害にならずに抜けると思います。
よく見るとモーターが浮いていますね。
煙突は金属製で挽き物なんですね。
右上は補重用のウエイトです。
分解前です。
後で出てきますが、この構造が結構重要でした。
しかし……、このまま給脂して終わりにすれば……、遥かに楽でした。
その時はつゆ知らず、分解しました。
煙突脇のネジ一本をバラすとここまで分解できます。
集電板を一つにまとめて、モーターとの接点を形成している部品は、導通不良がないため、大変優れていますね。
そんでもって各部に給脂し、組み上げましたが……、なんと走りがかえって重くなってしまいました。
そんなバカなと思いましたが、側面写真を見て、ウォームの付いている軸の軸受は、上記集電板の場所のダイカストが兼ねていることに気づきました。
模型鉄道の常識ですが、走りに大きな影響があるのは、減速前の部位です。
すなわちモーターの軸受、あるいはその延長の軸受の抵抗は走りを格段に悪化させてしまいます。
側面写真からわかるように、この製品は集電板のダイカストブロックを、上部のダイカスト部品で抑えることにより軸受を形成しています。
分解時にここがずれたと思い、まずは給脂しました。
しかし……、ほとんど効果なし。
そこで、よくこの部品を観察しました。
単体の写真を撮っておかなかったので、分解写真のアップです。
よく見ると……、
そうなんです。
忌むべきZinkpest (シーズンクラック)が発生していたのです。
下の集電板基部プラ部品の取付穴に入る、このダイカストブロックですが、上写真のようにやや膨張し、かつ曲がっています。
これにより写真裏側の軸受が変形し、かつ曲がりと膨張により、集電板を破壊したのです!
これには参りました。
この部品は集電板を抑え、かつウォームの軸受になっている極めて重要な部品です。
そこで、まず曲がりを修正すべく、バイスで咥え修正しようとしましたが、案の定、ダイカストが破断してしまいました。
しかし、何よりも幸いなことに、Zinkpestが一部にしか発生していなかったので、この部品を加工して使うことにしました。
単に合わせたところ、入りません。
やはり単に曲がっただけでなく、膨張していることも確認できました。
そこでまず、破断してしまった集電板基部のプラ部品を修理します。
こんな感じで真っ二つです。
単に接着してもすぐに取れてしまうと思い、写真のように0.4mmドリルで穴を開け、0.4mm真鍮線を通してから、瞬接で接着しました。
これにより強度が相当上がったと思います。
さて、集電板が治ったので、先程の破断したダイカスト部品を取り付けようとしましたが、やはり入りません。
そこで、ダイカスト部品の破断面や前後を相当削りました。
破断面は明らかに酸化しておりましたが、削ったら金属面が出ましたので、一安心。
相当削って、穴に入るようになりました。
破断した部品はそのままで組み立てました。
本当は接着してしまいたかったですが、そうなるともう分解できないので。
再組み立ても大変でした。
折れてしまった部品が取り付けにくかったり、ロッドがシリンダーから外れたり、集電板が変形して車輪から離れてしまったり……。
後方下部のプラ部品を入れ忘れて組み直したり。
何度やったかわからないほどです。
本来の目的である給脂には、いつものシリコーングリスを使いました。
給脂後に分解、組み立てを繰り返したので、周囲に付着してしまい、何度も拭き取る羽目になりました。
写真右のシリンダーへのロッドが外れやすく、参りました。
シリンダーブロックは最後にねじで固定するので、組み立て途中では固定できないのです。
走行抵抗のポイントである、ユニバーサルジョイントのゴムチューブと筐体が接触しないように、かつ、ウォームの位置がウォームホイールに合うように位置決めします。
ウォームの位置決めは極めて重要で、特にこちらのようにウォームが金属の場合、位置がずれるとプラの歯が摩耗してしまいます。
上の写真でもモーターが浮いておりましたが、上記のシーズンクラックによる変形と、上写真のダイカスト抑え部品にも変形があるのかもしれません。
この部品ですが、上写真右側のネジ一本で固定されていますが、本来、何らかの形で右側でも固定すべきですね。
下から見た図。
約50年前の製品ですが、よく出来ていますね。
ピンボケですが、上からの図。
右のネジで抑えているのがわかると思います。
抑えの部品自体も浮いていますが、本来は水平なのでしょう。
その右のネジ穴は煙突用ですね。
と言うことで、単なる給脂に終わるはずが、予想もしなかった悪戦苦闘の結果ですが、走りの方はあまり変わりませんでした。
残念ながらモーターには負荷がかかっていますし。
しかし、走行音は格段に静かになりました。
これはやはり給脂の効果だと思います。
であれば、分解せずに給脂だけしておけばよかったというのは、アフター・ザ・フェスティバルですね。
やはり古いLiliput製品には、Zinkpestが出るのですね。
話には聞いていましたし、実際に見せてもらったこともありますが、自分のコレクションではLiliputは初めての経験でした。
今回、集電板の抑え・ウォーム基部部品には被害があったものの、幸いなことにメインフレーム等には大きな被害がありませんでしたから救われましたが、たまたま運が良かっただけでしょう。
そう考えますと、Zinkpestの恐れのあるLiliputの古い製品には、手を出さない方が良さそうですね。
そう言いつつ欲しいのもあるのですけど。
2022/12/19 記
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