過去記事一部修正再掲 Klein Modellbahn ÖBB 1046 シーズンクラックと車体破断防止対策

 当方ブログの2013年の古い記事ですが、苦労した話ですので、一部加筆、写真を追加して、備忘録として投稿致します。

 Klein Modellbahnは、1947年に設立されたオーストリアKleinbahn社が、1984年に分割されて生まれたプラ量産製品のメーカーでした。

 あまり他社が手掛けない自国の車両や、出来の良い貨車モデルで知られておりましたが、2008年に製造終了し、2010年には販売も終了しております。

 初期の製品は玩具っぽさが残りましたが、後年の製品には優れたものもあり、貨車など一部の製品はROCOに引き継がれたものもありました。

 日本にも少し入っておりました。


 さて、Kleinbahn/Kleinmodellbahnの両社製品とも大きな問題がありました。

 それは、ダイカストがシーズンクラックで膨張、崩壊して、車体が破断してしまうという、およそ模型鉄道には絶対にあってはならない重大なものです。

 この大トラブルは、私が知る限りではÖBB Rh 1046とRh 2043で発生しました。

 これは特定の個体ではなく、同時期の製品全てがだめという致命的なものでした。

 実際に私は閉店してしまったEGSで、シーズンクラックにより車体が破断した同社のÖBB1046が積まれているのを見たことがあります。

 そして、私の模型趣味界の先輩が被害に遭いました。

 こちらがその際に破断したプラ車体です。

 床下部品は中央で真っ二つです。

 ダイカストが膨張したため、ボディも耐えきれず、裾部分が破断しています。

 内側から押されたことがわかりますね。

 両全面裾部分が破損しています。

 一方のRh 2143については、有名なbr 1822さんのブログに詳しい記述を見ることができます。

 こちらの記載によると、経営難となった2002年頃の製品に多いとのことでした。ただし、Rh 1046は1995年頃の製品です。

 上記のように、この破断の原因は、車体を構成しているダイカストが経年で劣化・膨張してしまうシーズンクラックという現象です。

 これはダイカスト鋳造時の管理が不十分なために発生するものであり、具体的には浮いている不純物(酸化物等)をきちんと除去しないため、系内に取り込まれてしまい、経年で酸化が進行し、膨張、破裂に至るという、絶対に不可避の現象です。

 また一般的には外観から不純物の混入を判断することが出来ないため、不良が出ても、発覚したときには完全に手遅れです。

 当然のことながら、対策も皆無であり、実はダイカストとは、製造者側に全てが委ねられているという大変恐ろしい材料でもあるのです。

 それで私が知る限り、シーズンクラックは、以下でも発生しています。

・香港トミーナインスケールのED75ダイカストブロック崩壊

・Liliput旧製品(BR 38等)の動輪破断

・16番ギアーボックスの経年破断

・マイクロエースのNゲージ製品のダイカストブロック膨張・崩壊(初代C53が有名ですが、他にも多数例あり)

・TOMIX、モデモのダイカスト膨張、変形、崩壊。

・メルクリンアメリカ型貨車の床下部品の劣化・変形

シーズンクラックとは言わないのかもしれませんが、下記も酸化劣化現象です。

・ミクロウェイト膨張によるブラス製品の膨張・破壊


 さて、Klein Modellbahn ÖBB Rh 1046のトラブルは、上述の通り、今から約10年前に先輩から話を聞きました。

 気づいた時にはもう車体が破断していたそうです。

 この話を聞いて、1995年に初めて個人輸入したKlein modellbahn ÖBB Rh 1046を急いで点検したところ、幸いなことに破断には至っておりませんでした。

 ですが、予防に越したことはないと思い、あわてて車体を分解し、ダイカストのシャーシーを上部及び下部車体から外して保管しておきました。

 これなら、万一ダイカストがシーズンクラックで膨張しても、プラ車体が壊れることはありませんので。


 さて、それから約9年が経ちました。

 昨年末に突然デジタルを始め、その魅力に取り憑かれた私は、手持ちを整理・売却しております。

 残念ですが、昨今の社会情勢下において、これ以外に購入資金を作る手段がありませんので。

 また、我が家は狭いのでこれ以上、車輌を置けません。

 そこで、段ボール箱に詰めた手持ちを整理しているときに、この車両を見つけました。

 ドイツ型に注力する中、ÖBB Rh 1046は9年間、ずっと分解したままでしたので、もう使うこともないだろうと思い、この際、処分することにしたのです。

 さすがに分解したままでは、値がつかないと思い、再組み立てすることにしました。


 ところが……、プラの下部車体にダイカストのシャーシーが入らないのです。

 よく調べてみたら……、なんと長さで2mm弱プラ部品が小さくなっているではありませんか!

 このまま無理して入れたら、下部車体は間違いなく割れてしまいます。

 そこで、シャーシーをやすりで削り、長さを短くすることにしました。

 幸いなことに削り代はたくさんありますので。

 なお、削っている際、他の部品を破損しないように、外せるものはすべて外すことにしました。

 この際、あとでわからなくなってしまうと困るので、分解前に必ず配線関係がわかるように写真を撮影しておきます。

この製品は台車モーター×2個(昨年発売されたKATOのEF510と同じ)ですので、台車を全部外します。

 兄弟会社のRh 1063とは異なり、モーターは接着されていませんでした。

 ついでにモーターと一緒に基板を外してしまいますが、車体下部にある架線集電切り替えSWの配線がダイカストを貫通しているので、はんだごてでリード線を外してしまいます。

 こうしてようやくダイカストのシャーシーを裸にしましたので、金属やすりで削りました。

 ダイカストが固く、また、うちには工作机がなく、左手で抑えるしかなかったので、これは本当に疲れました。

 おまけに指の一部を痛めてしまいました。

 都合1時間以上を要して、何とか削ることができました。

今後また、プラが縮む可能性もありますので、少々大目に削りました。

 ここは大目に削っても、何ら影響はありませんので。

 それで、削ってみた感想ですが、ダイカストがシーズンクラックで劣化して脆くなっている兆候はありませんでした。

 なぜならば削っている最中にシャーシーが割れることもありませんでしたし、ダイカストの硬度も変わりませんでしたから。

 色も銀色で酸化したような跡もありませんでした。


 と言うことで、今回のトラブルの原因を私なりに考えたのですが、少なくとも当方のÖBB Rh 1046に関しては、ダイカストが膨張したのではなく、プラの下部車体が収縮したことによるものと思います。

 樹脂は収縮が必須であり、特に質の悪いプラが経年で収縮することはよく知られておりますし。

 実際、模型鉄道では、昔のポケールの製品とか、MetropolitanのSBB旧型客車が経年収縮することで知られています。

 特に後者は、プラ製品と言いながら少量生産の高額商品であり、繊細な出来なだけに、車体が縮んで、窓ガラスが外れてしまって、がっかりされた方も多いでしょう。

 現にRh 1046を組み上げてみましたが、長さ方向だけではなく幅方向もやや狭くなったような気がしないでもありません。

 もっとも初期にどんなだったかは記憶にないのですが。

 さて、シャーシーを削ったので下部車体には入ったのですが、これ以降の再組み立ては実に大変でした。

 先述のようにこの車は2個モーターなので、配線が通常よりも多いのです。

 ばらすときも結構大変だったのを思い出しましたが、この手の常で、組み上げる方が何倍も大変です。

 結局、台車を外さないと組めず、そのためには、配線の一部を外しましたが、それでも、切れてしまって再度はんだ付けしなければならない部分がありました。

 ただし集電シューは、台車の溝に切欠きがあって、一方向にしか入らないようになっているのは、極性違いによるトラブルを防ぐのに有効な手段と思いました。

 あとリード線が色分けしてあるのは、アナログでは珍しい例ですが、間違い防止にはとても有効だと思います。

 リード線もぎりぎりの長さしかなく、はんだ付けも大変でしたが、他方、セットする向きがわかったので助かりました。

 これらは写真を撮っておいたことが有効でした。

 さて、切れては直しを繰り返し、再三はんだ付けをして、ようやく組みあがりました。

 これで試運転をしました。

 集電シューは前述のように入る方向が決まっているし、色分けがしてありますので短絡はないと思ったものの、モーターの方向は心配でしたが、ちゃんと極性通りに走りました。

 マブチモーター使用の大時代的な動力ですが、存外走りは悪くありません。

 ところが、ライトがつかないのです。

 で、ダイオードをテスターで当たったら両方向とも導通がありません。

 そこで手持ちと交換しました。

 ダイオードは外す際に両方とも壊れました。

 苦手なはんだ付けだけに苦労しましたが、何とかつけることができました。

 それで、今度こそ……、やっぱりだめ。

 電球単体ではつくのですが。 もう一度回路を調べました。

 で、よく見ると、リード線が2本で2個の電球を切り替えていることに、いまさらながら気づきました。

 当たり前のことですが、2本でどうして切り替えられるか……、ダイオードでもなければそんなことありえないですよね。

 で、もう一度ライトユニットをよく見ると、電球の片方の足がコモンになっていて、裸のリード線で結線してありました。

 つまり、こういうことだったのです。

 青と緑のリード線はサプライで、リターンがコモンだったのですね。

 そのコモンはライトユニットを取り付けると上部車体に押されて、シャーシーと接するように裸線になっていたのです。

 これではたと気づきました。

 基板の黒の端子とダイカストがはんだ付けされていたのですが、これはシャーシーに電気を通じるためだったのですね!

 ようやくわかりましたよ。

 と同時に、こんな不安定な方法は他社では見たことはありません。

 ROCO製品は基板とシャーシーの導通にはねじ止めで対応しておりますし、Märklinはそもそもすべてリード線で接合しています。

 この回路を解明するのに30分以上かかってしまいました。

 おまけにダイオードは壊れていなかったかもしれません。

 2個損しました。

 そして、ライトユニットをシャーシーとくっつけると、当たり前のことかもしれませんが、問題なく点灯しました。

 ようやくここまで来たので、あとは上部車体を取り付けます。

 少なくとも下部車体が縮んでいるので、きちんとおさまるか心配でした。

 現にライトユニットが上手く入らず焦りましたが、何とか収まり、完成しました。

 苦労しただけに喜びもひとしおです。

 ところでこの号機、もともとはシングルアームパンタ装備なのですが、このパンタは基部がダイカストで出来ています。

 しかし、ダイカストの質が非常に悪くて脆く、パンタを上げただけで基部がすぐに割れてしまいました。

 もともとパンタ基部が非常に薄いため、直しようがなかったので、困っていたところ、先輩から上述の破損車体を譲り受けることができました。

 本当は車体ごとまるまる交換できればよいのでしょうが、残念なことに膨張で破断しておりますので、屋根部品を外して、当方のと交換しました。

 こちらは、ひし形パンタを装備機でしたので、屋根ごと変える必要がありました。

 と言うわけで、ダイカストを削っていて指を痛めたり(あれから約1カ月経ちましたが、まだおかしいです)、ミスでダイオードを壊したり、ほんと大変でしたが、何とか戦力化できました。

 ÖBB Rh 1046/1146は、もともと荷物電車(Rh 4061)でしたが、改造されて電気機関車となりました。


 このあたりの経緯は、SBBのDe 4/4と同じですね。

 老朽化が進んでいたためか、一部の号機は私の所有するものと同じ角型車体に更新されております。

 実車は2003年に引退したそうです。


 それで、もしかしたらこの機種で車体が破断していないものは、世界で唯一かもしれません。

 今、売却するかどうか、思案中です。


<2022/9/7 追記>

 本機はその後、新しいオーナー様の元に旅立ちました。


2013/5/11 記、2022/9/7 再録

 


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