ドイツ連邦鉄道 DB 支線旅客用タンク式蒸気機関車 BR 98.3 「グラスカステン」 301号機 (ROCO 43030)

 今回は、日本でも有名なドイツ連邦鉄道 DBの支線用タンク式蒸気機関車BR 98.3 「グラスカステン」を紹介します。

 BR 98.3は、バイエルン王国邦有鉄道 K.Bay.Sts.B. が開発した支線旅客用タンク式蒸気機関車です。

<BR 98.3初期型主要諸元>

 型式:Bh2t、バッファ間距離:7.004m、軸配置:B、運転重量:22.7t、軸重:13.5t、過熱式二気筒、出力:155kW、ボイラー圧力:12bar、動輪径:1.008m、最高速度50km/h

 車番:バイエルン邦有鉄道:4507-4535、ドイツ国鉄DRG:98 301-309

 キャブがボイラーに覆いかぶさる特異なスタイルのこの機関車は、Glasskasten=ガラス箱と愛称されています。

 20世紀の初頭、バイエルン国鉄邦有鉄道 K.Bay.Sts.B. は、ローカル線用の新型機関車を開発しました。

 開発にあたっては、ローカル線での合理化が目標とされ、具体的には、1)運転手のみでワンマン運転が可能なように半自動重力式給炭装置を装備、2)終点での転回を不要とする、3)運転手がデッキを通じて、連結された客車へ安全に移動できることが必要とされました。

 この要求に対し、マファイ社が開発したのがML 2/2、そしてクラウス社が開発したのが、こちらのPtL 2/2です。

 1906年から1908年までの間、24両が作られたML 2/2は一見普通の蒸気機関車のような形状をしておりましたが、クラウスのPtL 2/2は、上記の要求を達成するために、キャブがボイラーに覆いかぶさる他に例を見ない特異なスタイルとなりました。

 そのためこの機関車は、Glasskasten=ガラス箱と愛称されています。

 ML 2/2は一見、普通の機関車のような形状をしておりましたが、車体の中央にシリンダーを配置し、前後の車輪を別個に駆動するという特殊な形式でした。

 一方、1905年から1906年に6両が作られたPtL 2/2は、上記のような特殊なスタイルの上、シリンダそのものを内側に置いた、これまた特殊なものとなりました。

 なお、PtL 2/2は一見、古典機のように見えますが、実は1905年から1914年にかけて製造されたバイエルン王国邦有鉄道として最初の過熱式蒸気機関車であり、どちらかと言うと新しい部類に属します。

 ML 2/2は良好な性能を発揮したようですが、やはり特殊シリンダーを用いた複雑な構造が災いとなり、それ以上生産されず、結果として、番号 98 361~384が予定されたものの、ドイツ国鉄 DRGには継承されませんでした。

 その点、こちらのPtL 2/2は改良を重ね、日本でも知られるクラウス社で王立バイエルン邦有鉄道向けとして、ML 2/2の2倍となる各型合計48両が製造されました。

 そして試作機の誕生から58年後の1963年まで使われたのです。

 それで、PtL 2/2には大きく分けて3つのシリーズから成ります。

 1905-1906年に4501~4506の6両が製造された第一シリーズは、上記のように台枠の内側にシリンダーなどの動力装置が収められていたことから、保守に難があると判定され、ML 2/2と同様、番号98 301~306が予定されたものの、DRGに継承されることはなく、1923年に廃車になりました。

 次の第二シリーズは、動力装置を通常の機関車と同様、台枠の外側に配置したもので、1908-1909年の間に、4507~4535までの29輌が製造されました。

 ただし第一シリーズと同様、シリンダーからの動力を直接動輪に伝えるのではなく、古いディーゼル機関車などに見られるように、車軸の間に置かれたジャック軸を介して駆動する形式でした。

 DRGにより、PtL 2/2には支線用タンク機関車の型式 BR 98の300番台が割り当てられました。

 この第二シリーズはDRGへ29両中、9両が継承され、98 301~309となっています。

 残りの20両がどうなったのかはわかりませんでした。

 こちらで紹介するROCOのモデルはこの第二シリーズとなります。

 また第二シリーズの機関車は、プロイセン王国邦有鉄道K.P.St.E.でも3輌が型式T2のアルトナ 6081 と 6082 およびエルバーフェルト 6041としても使われました。。

 これらは上記の29輌には含まれていません。

 その後、ジャック軸を廃して、後ろの動輪に直接伝達されるようにした第三のシリーズが1911、1914年に4536~4548までの13輌が製造されました。
 この動力伝達方式の変更に伴い、ホイールベースが500mm短縮され、それに伴い全長もやや短く、また重量も軽くなっています。
第三シリーズは13両が全車がDRGへ継承され、98 310~322となっています。
 またこれ以外にも、第三シリーズはスイスの私鉄で2両が使われました。

 DRGに継承された22輌の内、戦災で1輌廃車、2輌が工場へ売却、オーストリアへ1両(98 304)が渡りました。

 1945年以降、DBには残りの18輌全車が継承され、ドイツ南部の支線で使用されていましたが、さすがに特殊な小型機だけに1950年代にほぼ引退しました。

 Georgensgmünd–Spalt線で使われた最後の一輌98 307は、「シュパルトのヤギ」 (SpalterBockel) と呼ばれていましたが、1963年に引退しました。

 現在、同機は静態保存されています。


 以上、Wikipedia独語版  Bayerische PtL 2/2より引用、参照いたしました。

 それで模型の方ですが、Modellbau-Wikiによると、古くは1979年のRaimoのキット (非動力) があったようです。

 この模型は日本でも売られていたのを記憶しております。

 そして、どういうわけか1986年にMinitrix (N) 、1987年にTRIX、1988年にROCO が連続して模型化しました。

 マイナー車両が何故かバッティングするのは欧州型ではよくある話なのですが、BR 103や特急用客車などの有名車両があまり入手できなかった当時、何でこんなマイマー極まりない機種が競作になるのか、私にはさっぱりわかりませんでした。

 当時まだ私は駆け出しでしたが、何しろ売っているものが少なかった当時のこと、高額だったTRIXの単品とROCO のDBのBR 98とバイエルンローカル客車セットを買いました。

 しかしながら、今とは異なり、実車の資料など全くない時代にこのようなマイナー機の価値がわかるはずもなく、それから7年ほど後の1995年に、開店したばかりのEGSで手放してしまいました。

 委託販売ゆえ、約半額強しか戻らなかったですね。 (涙) 

 それから時間が相当経過して、コレクションが充実してきた2007年になって、一度は手放したROCO のセットをまた入手したわけです。


 それがこちらです。

 数あるROCOのグラスカステンでは一番最初の製品であり、1988年にこちらのBR 98 301とバイエルン2軸客車4両セットが発売になっております。

 HOではTRIXと競作となったROCO製品は、一回り小さいのが特徴です。

 また小さい分でしょうか、灯火が省略されています。

 もっとも私が入手したこちらは、前のオーナーの方がLEDで点灯するように改造してありました。

 しかし購入時点から調子が悪かったので撤去してしまいました。

 1980年代のROCO製品なので、黒は完全つや消しです。

 ROCO製品の精度が向上した1980年代後半の製品ですので、細密感が増しています。

 また走りもスムーズです。

 なおこちらですが、前オーナーの手により各部が色差しされています。

 寸づまりなボイラーではなく、ボイラーもキャブ内にあります。

 弁装置など、プラ製ですが、シャープですね。

 本機の特徴として、重力を利用した自動給炭装置が装備されています。


 このセットには同時代のバイエルンの短い2軸客車が4両、1980~1990年代の同社特製品らしくBR 98.3の本が含まれておりました。

 残念ながら再入手したものにこの本はありませんでした。

 BR 98.3はWikiにもそれほど詳しい記載はなく、結構珍しい写真が載っていたので手放さなければと思う、今日このごろです。


2007/6/18 入線


2022/9/22 記


 

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