ドイツ連邦鉄道 DB 特急用電気機関車 BR 103 195-4号機 (Märklin 37573)
今回はドイツ連邦鉄道 DBの歴史に残る特急用電気機関車 DB BR 103.1について紹介します。
BR 103.1は1960年代に開発されたドイツ連邦鉄道 DBを代表する特急用電気機関車です。
DB全盛時代の主力電機として、TEEやICなどの優等列車を牽引し、全世界にその名を轟かせました。
引退してから約20年が経過した今でも、その人気は高く、ドイツの鉄道車両では1、2を争う有名な車両であることは間違いないでしょう。
<BR 103.1 主要諸元>
バッファ間距離:19.5m、運転重量:114.0t、軸重:19.0t、実用最高速度:200km/h、短時間出力:12,000kW、連続出力:7,440kW
1965年に試作車が4両製造され、長期にわたるテストが行われた後、さらなる高出力化が図られた量産機が1970年から1974年の間、合計145両製造されました。
車番:103 101-2~103 245-7
1950年西ドイツ国鉄 DBの技術委員会は、これからの電気機関車として、BR E 94を基礎とした6軸機及びE 44のような客貨両用の汎用機を計画しました。
この目的に沿ってE 46が計画されましたが、急行用に最高速度を上げることになり、1952年、汎用機関車の試作型E 10.0 (E 10 001~005)が5輌作られました。
しかし、広範な試験の結果、一機種で全ての目的を達成するのは、得策ではないとの結論を得、その結果、急行旅客用 E 10、汎用貨物用 E 40、近郊旅客用 E 41、重貨物用 E 50の4種類の制式電気機関車 (Einheitselektrolokomotive) が作られることになり、同時に特急用BR E 01も計画されましたが、当時の線路状況ではBR E 10で十分とみなされ、開発はキャンセルされました。
この計画は1961年に最高速度180km/h、出力5,000kwの6軸機関車として復活しますが、やはりE 10が優先され、中止されました。
そして、最高時速200km/hながら軸重18tに変更され、E 03となりました。
上記のように、E 03は4両の試作機が作られ、1965 年 6 月にミュンヘンで開催された国際輸送展示会 (IVA) で公開されるとともに、ミュンヘンとアウグスブルクの間の鉄道路線を時速 200 km で走行する 2 組の急行列車 (D 10/11、D 12/13)を牽引しました。
この運用が、ドイツではじめて時速 200 km に達した乗客を乗せた定期列車となります。
そうは言うものの、何分にも初めての高速運転の試みであり、トラブルが続出したようですね。
その後も広範な試験が繰り返されましたが、1969 年、DBは量産型BR 103(1968年のコンピューターナンバー化によりE 03はBR 103になりました)について、試作型の200km/hで300t から480tへ、また160 km/hで800t の急行列車を牽引できるように更なる性能向上を要求しました。
これに伴い、必然的に主変圧器とモーターの負荷が上がったので、冷却効果を増大する必要が生じました。
そこで量産型 BR 103.1は、換気ガラリを2段に増設、そしてモーターにも改良を加えました。


量産機も次第に改良が加えられました。
一番目立つ変化はパンタグラフで、1976年から当初のひし形パンタDBS 54が、より高速運転に適したシングルアームパンタ SBS 65に交換されています。
なお、このパンタですが、新造だけでなく当時生産されていたBR 111と交換したものがあります。
また運転室が狭いと不評だったので、216号機から、バッファ間距離が700mm延長され、運転室が広がっています。
このタイプ(7次形以降)は、長胴型と呼ばれることもありますが、これは日本での呼称かもしれません。
それ以外には、1981/82年に着雪の障害のあったバッファー下部のスカートが撤去され、また高速運転時の揺れ防止のために台車にヨーダンパーを装備しました。
更に時代が下り、1990年代に特徴あるバッファーカバーを撤去した機種もあります。
そして外見上、一番の変化は塗装です。
当初、車体がTEE塗装(クリーム/マルーン)、裾部が灰色でしたが、1980年代の半ばになると、裾部がマルーンになる車両や、当初鋳物だったDBマーク「DB Kek」が塗装になる機種もありました。
そして1980年代の終り、それまでとは全く違う、赤一色(Orient Rot)で、運転室前面下に白の警戒色(よだれかけ)という塗装に変更される機種が出始めました。
この塗装は角張った形状のBR 111やBR 120ならともかく、BR 103には全くに合わないと感じた人が多く、現地でも評判が悪かったそうです。
また、本項をまとめるのに引用、参考にさせていただいているWikipedia 独語版 DB Baureihe 103によりますと短時間で劣化してしまう欠点があったようです。

そのせいかどうかわかりませんが、塗り替えの速度は遅く、本機は廃車までTEE塗装のものも多かったように感じます。
なお、これ以外にも特殊塗装機がありますが、ここでは省略します。
洗練された空力形状、最高速度 時速 200 km、何よりもその高出力を備えた BR 103の生産型は1970年代初頭の機関車の頂点に位置するものでした。
実際、質量対出力比 15.6 kg/kWのBR 103.1 は最も強力な DBの電気機関車であり、 単相交流で従来の技術を使用して達成できる最高のものと見なされていました。
そしてBR 103.1は登場するやいなや、TEEやIC運用に入れられました。
また上記Wikipediaによりますと、登場当時のBR 103.1は、「それは高価であると考えられていたので、そのメンテナンスの高い費用が報われるように、常に運転されなければなりませんでした。ギャップを埋めるために、鉄道はそれを使用して急行列車と普通列車を走らせ、時にはその日の郊外で貨物列車さえも走らせました。平均して、月間 35,000 ~ 42,000 km、年間約 350,000 km が走行されました。したがって、103 は今でもドイツで最高の走行距離の記録を保持しています。」とあります。
実際ドイツの本を見るとUmbauwagenを牽いたり、保線用の砂利運搬車(Schotterwagen)を連ねている写真がありました。
このようにBR 103.1はDBを代表する名機として内外に宣伝されました。
当時の子供向け絵本には同色の客車とともによく取り上げられていたこともあり、私自身、1970年代には既に知っておりました。
何を隠そう、私が欧州型を志向した最大の理由が、当時のドイツ国鉄 DBの花形スターである BR 103.1と’63 ラインゴルトだったのです。
そして、私と同じ理由で欧州型にはまった方は、決して少なくないように思います。
さて、そんなBR 103.1ですが、上記の通りの大変長い走行距離に反し、その寿命は思いの外、長いものとなりました。
理由として、後継機として考えられていたサイリスタ電機 BR 120の失敗、ICE 1の大事故が挙げられます。
しかし大変長い走行距離の上に、代替機がないことによる酷使、老朽化、またペンデルツーク運用ができないため、ローカル運用に転用できないこと、そして1996年にBR 101が使用され始めたこともあり、引退が始まりました。
最終的には2003年8月を持ってインターシティ運用を離脱しております。
その後も運用は続きましたが、現在では定期運用はなく、上記Wikipediaによりますと、動態を含む17両(試作機3両含む)が保存されたようです。
ただし、中には状態が非常に悪い機種もあり、2022年現在の保存機の数はわかりませんでした。
駆け足でBR 103.1を紹介してきました。
それで模型の方ですが、上記の通り、DBを代表する名機関車であり、登場時期がドイツでの模型鉄道勃興期にあたったこともあり、量産品でもHO、TT、Nのほぼすべてのメーカーが製品を発売しておりました。
反面、目の肥えたファンの数も多く、どうしても厳しい目で見られますので、なかなか良い点を得る模型がなかったことも事実です。
当方の過去記事にもありますように、BR 103.1は一人ひとりの思い入れがとても強い上に、写真の角度によって見え方が全く違うという、特徴的でありながら形態把握が非常に難しい機種に思います。
また(特に日本では)一部の声の大きい方の評価が絶対視されたように思います。
その代表的なものが1972年のフライシュマン製品の異常なまでの神格化ですが、以前の当方の記事の通り、少なくとも私は同社のBR 103.1にはあまり高い点は与えられないですね。
太り過ぎで丸すぎて、前から見たときにバッファの間隔が広すぎます。
そんな中、今まで製品化されてたHOではもっとも良い出来と思っておりましたのが、こちらのメルクリンの新しい製品です。
とは言っても初回発売は2003年ですので、もう20年も前の製品になるのですね。
同社のそれまでのプラ製品の試作型や量産型も感じは悪くありませんでしたが、こちらは見た感じですが、よく似ていると思います。
また、ダイカストの質感や重厚な塗装にも好感が持てます。
それまでの製品が集電第一で実感的ではなかったパンタグラフの形態も良くなりました。
ちょっと気になる点として、前面をアップにするとクリーム色の上部車体とマルーンの下部車体の大きさが僅かに異なるため、段差を生じること、そしてあらゆる仕様で台車にヨーダンパーが取り付けられていないことが私的には気になりますね。
もっともあるメルクリンの大家の方のお話では、このプラの台車枠は前回製品からの流用かもしれないとのことでした。
こちらの写真でも丸すぎず、角ばってもおらず、いい感じに見えます。
なお、こちらは2011年に製造されたmfxフルサウンド仕様です。
それまでのC-Sineモーターから、定評ある伝統的なDCMモーターに戻されています。
お陰でうるさいながら大変良く走ります。
力も十分と思います。
ただし私としてはサウンドには不満があります。
と言いますのも、(うちにある)メルクリンのBR 103/E 03は全て、速度にかかわらず、モーター音が一定なのです。
これはおかしいですよね。
実際、以前Youtubeで見たBR 103.1の動画は、モーター音は速度に比例して変わっておりましたから。
もっとも最近の製品は全然わかりませんので、サウンドが変わっているのかもしれません。
ところで、BR 103.1ですが、メルクリンの後にも、2015年にPiko、そして2017年にESUから高級仕様機が発売されております。
これらについては、残念ながら保有しておりませんので紹介できないのが残念です。
まあ、中古しか買えない私にとっては、Pikoはともかく、ESUの入手は絶望的でしょう。
と言うか、私はあんな高額でかつ壊れやすいものには手は出せないですね。
2013年 入線
2022/9/14 記
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