げに恐ろしやシーズンクラック…… ÖBB 1063 (Kleinbahn HQ 235)

 もう8年くらい前の話ですが、KleinbahnのÖBB 1063を久しぶりに出して、走らせようとしたところ、何か空転して走らないのです。

 この機関車は、オーストリアKleinbahnのものですので、なんとモーターの極性が逆になって!おります。

 そのため、以前分解したことがありますので、今回も車体をバラしてみました。

 上から見た図ですが、何か左側のモーターが曲がっているように見えます。

 更に調べてみようと思い、左の台車を外し、モーターを外しました。

 このとき初めて気づいたのですが、なんとKleinの1063はダイカストシャーシーにモーターが接着してありました!

 長年模型鉄道を嗜んでいますが、モーターが接着してあったのは初めてです。

 台車をボディから外し、モーターを取り除きますと……、なんとこんな悲惨な状態になっていました。

 そうです。

 ダイカストが経年劣化し、崩壊していたのです!!

 いわゆるシーズンクラックというもので、ダイカスト精錬中、スラグ(不純物)の除去が不十分だと、組成内に酸化物が残り、経年でダイカストが酸化してもろくなるとともに膨張して、崩壊してしまうというものです。

 マイクロやTOMIX、メルクリンでも起きている致命的なトラブルであり、対策は一切ありません。

 正直、これには青くなりました。

 シーズンクラックにより、ダイカストが膨張した分、車軸やギアの軸を圧迫して、回転しなかったのです。

 何につけてもこのままでは置物にしかなりません。

 しかし、幸いなことに反対側の台車は崩壊した側ほど状態がひどくなく、モーターや車輪も正常に作動しました。

 そこで何とか復旧を目指し、まず崩壊したダイカストブロックから、車輪とギアを抜くことにしました。

 抜く際に力を入れたので、崩壊したダイカストが何箇所も砕けましたし、当時、車輪抜きを持っていなかったので、苦労しましたが、幸いなことに車輪及びギア類は全て抜く事が出来ました。

 最悪の状況でしたが、何とか光明が見えてきました。

 こちらは2022年8月に崩壊した台車を再度撮影したものです。

 写真が鮮明になった分、あまりの酷さがよくわかります。

 7年前よりさらに崩壊が進んでいますね。

 今回、抜いたギアをはめてみましたが、2箇所は全く入りませんでした。

 崩壊したダイカストブロックの形状はそれほど複雑なものではなく、またギアや車輪を無事抜くことが出来ましたので、このブロックが手に入れば復活は可能です。

 しかしながら、Kleinbahnの部品など手に入るはずもありませんし、自作するにも流石にHOの動力ですので、プラ板製というわけには行かないでしょう。

 少なくともギアとモーターは金属のシャーシーに固定する必要があります。

 それには真鍮厚板を正確に曲げ、はんだ付けをし、なおかつ正確に穴を開けなければなりませんが、残念ながら、私の工作力や道具では対応不可能です。

 そこで、動力化は今後の課題とし、非動力とすることにしました。

 使うのは長年使いなれたプラ板です。

 計測してみると、軸の天面からブロック上部までは約4mmありました。

 そこで、一番基礎となる平面を1.2mmプラ板で作って、強度のある3mm角棒で補強することにしました。

 このブロックの下側に車輪を取り付けるわけです。

 プラ板のカットはPカッターで筋目を入れ、そのまま折り曲げるようにします。

 存外この方が、直線が出るような気がします。

 もちろんやすり掛けは必須ですが。

 一方、角棒を垂直に切るのは、木材同様、思いのほか難しいです。

 勝負の分かれ目は、いかに切断物を固定するかにかかっておりますが、工作用の机のない私にとっては非常に難問です。

 実際はバイスで咥えて切るべきなんでしょうが。

 案の定、写真のように長さがまちまちで、切断面も垂直が出ておりません。

 ここはあとで成型するか、薄いプラ板を貼ってぼろ隠しをします。

 車輪は3mm角棒で固定します。

 本当は間を抜いた方が走行抵抗が下がりますが、そうなると摩耗しやすくなるし、強度も心配なので、線で受けることにしました。

 裏側からプラ板を接着しても固定できますが、いざというときに外せるように裏側の板は、ねじで固定する方法にしたいと思います。

 この際、ねじ穴の位置を少しずらしておかないと、台車センターピンと干渉してしまいます。

 なお、車輪にはギアが取り付けられている関係上、台車センターピンはブロックの中心ではなく、ギアの分約2mm中心からずれています。

 ねじ止めの連結器も同様です。

 台車枠は、プラ板に穴を開けて差し込み、後で外せるようにゴム系の接着剤で接着しておきます。

 予め、台車枠の取付爪の入る場所の3mmプラ棒を短くしておけばよかったですね。

 オリジナルの集電は、動力回転を前提にしておりますので、集電板をかなり強めの圧力で車輪に押しています。

 ですが、非動力では車輪が回りませんし、走行抵抗になってしまいます。

 第一、プラでは強度が心配です。

 そこで、とりあえず非集電で組み上げ、あまりにも調子が悪ければ、何か考えることにしたのですが、試走の結果、案の定、集電不良がありましたので、元々の集電板で片側だけ集電するようにしました。

 こちら側が新製した台車です。

 オリジナルの集電板を加工して取り付けました。

 残念ながら、動力台車にも経年劣化が認められるため、いずれ動かなくなってしまうとは思いますが、取りあえずは可動になりました。

 ただし、元々の両台車駆動が片側となり、またゴムタイヤの装備がないので、牽引力はありません。


 ところでこの製品には他にも大きな問題があります。

 それは車体の反りです。

 当線導入当時(2003年)の写真ですが、車体の両端が大きく上に反っているのがわかりますね。

 この反りの原因がわからなかったのですが、今回、全部分解してわかりました。

 すなわち反っていたのは、ダイカストのシャーシーではなく、プラのシャーシーと車体でした!

 幸いなことにダイカストのシャーシーには、シーズンクラックや変形は見られませんでしたので、プラのボディとシャーシーを写真のように縛って癖をつけましたが、変形はほとんど直りませんでした。

 ところで上写真でもわかりますように、この製品は車体の4本の爪で、車体をダイカストのシャーシーに固定しています。

 しかし、当方のは最初からこの爪が一本、欠品でした。

 どうもこの爪が車体中央部を下に引き寄せているようでしたので、プラ板で爪を作り、改めて組んでみました。

 その結果、一番上写真のように車体の反りは大分軽減されたように感じます。

 ということでこちらも何とかなりました。


 今後の希望として、ギアを破損せずに抜くことができたので、動力回復を目指したいです。

 恐らくすぐに壊れてしまうでしょうが、今回のプラ板+プラ角棒シャーシーでもそれなりの強度は得られたので、更に補強して何とかならないか、検討してみたいですね。


 それにしても、経年で破裂するダイカスト、反ってしまうプラスティック……、あまりに品質の低さには呆れてものも言えません。

 決して安いものではありませんし、Kleinbahnが潰れたのは当然だと思いました。


 なお、当方におけるシーズンクラックの被害は、今のところ模型鉄道では、Kleinmodellbahn ÖBB 1046、そしてメルクリン SBB De6/6 セータールクロコダイル(先年見たときはなんとか走行可能でした、今はどうなのかわかりません)、ROCOのDB BR 23の従台車のおもりの崩壊くらいにとどまっています。


参考情報

<シーズンクラックの被害例> 

 Fleischmann DB BR 120 (Nゲージ)

 Webからの情報です。

 Kleinmodellbahn ÖBB 1046のパンタ

 パンタ台や、アームなどのダイカスト部品が、経年で脆くなり破断しています。

 Aero Classics 1/400

 シーズンクラックにより主翼部分が崩壊しています。

 一方、胴体部分は崩壊していません。同じ製品でも、ロットにより無事な場合もあるようです。


<シーズンクラックの影響による被害例>


 Kleinmodellbahn ÖBB 1046

 シーズンクラックによりシャーシが膨張し、耐えきれずにボディが破断しています。

 この製品はひどいもので、昔、EGSに同様な被害車がたくさん並んでいました。

 あんなの買った人いるんでしょうか?


 ということでまとめますと、シーズンクラックは、ダイカストを精錬する際の不純物の混入が原因であり、ユーザーでは絶対に回避できない極めて重大なトラブルです。

 そしてそれは決して過去のものではなく、2010年以降においても、マイクロ、TOMIX、モデモ、メルクリン、TRIXなどでまだ実際に発生しております。

 更に重要なことに、ほぼすべてのメーカーは知らぬ存ぜぬで、全く対応してくれません。

 模型鉄道は非常に高価なものだけに、このあまりに不誠実な態度は、正直言って腹立たしい限りです。


 しかし、今はWebの時代でもあります。

 シーズンクラックのような極めて重大なトラブルの情報は、是非、みんなで共有し、被害を受ける方を一人でも減らしたいですね。


2022/8/7 記

 


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