デアゴスティーニ 鉄道車両金属モデルコレクション 全国発売けって〜い!

 今年のはじめに、限定地区で試験販売されていた デアゴスティーニ 鉄道車両金属モデルコレクションですが、なんと全国発売が決定したそうです!

 いや〜、試験販売からろくに時間が経たないうちにHPから消えてしまったので、私はてっきり発売中止になったんだと思ってました。

 実は私、普段、こういうコレクションものにはあまり興味を惹かれないのですが、今回のシリーズは話が別です。

 と言いますのもこのシリーズは待望のHO 1/87!!なのです。

  そう、日本では一般的な1/80ではありません。

 これぞまさしく世界標準規格HOスケール1/87 (3.5mmスケール)であり、なおかつ軌間は1067mmを1/87にした12mmとなっているのです。

 この日本型HO(HOjとも言われます)は、16番とは異なり、世界標準の縮尺を採用し、かつ、車体と軌間の縮尺も一致している大変優れた模型なのですが、16番が圧倒的に普及している日本では、なぜかあまり顧みられることがありませんでした。

 今では数少ない愛好者のための高級ブラスモデルが供給されるようになってきましたが、これらはもはや美術工芸品といった趣きの少量生産、超ハイスペックモデルだけに、価格も一般人からは遥かに遠い、完全な高嶺の花です。

 大変残念ながら、私のようなものには全く手も足の出るようなものではありません。


 そういう意味でこのシリーズは、史上初、手が届くHOj 12mmなんです。

 初めて日本形と欧州形と横に並べて比較することが出来るんですよ。

 うれしいじゃありませんか?


 実際に並べてみればわかりますが、1/87と1/80は似て非なるもの。

 と言うか、全く別物なのです。

 元々起源が異なるのですから当たり前の話ですが。

 車体1/87のメリットは上記の通りですが、更に軌間12mmはフルスケールであり、日本型特有のすぼまり感が再現できるだけでなく、台車と車体の違和感も払拭できます。

 1/80 16.5mmは実物に換算すると1320mmとなります。

 1067mmとの誤差は24%であり、これは到底許容できる公差ではありません。

 またそれだけでなく、軌間1320mmに合わせるため、車体の寸法を変える必要があり、私はよく知りませんが、車幅等が1/80ではない例があるそうです。

(EF55、C53/C55流線型等がよく知られますが、蒸機のテンダーにもあるそうです。)

 日本型の世界では、この制約の中、「いかにらしく見せるか」と言うのが、設計の妙だそうですが、HOjは軌間も車体も1/87なので、そんな配慮は一切不要です。

 少なくともスケールモデルとして、HOjは16番より優れています。

 

 それでHOj 1/87 12mmという規格について考えてみましたが、規格自体に問題になる点は何もありません。

 もともと3’6”という軌間を選択したのは、日本は山地が多く、急カーブを曲がるためでした。

 だとすれば日本の苦しい住宅事情では、16.5mmよりも12mmの方が絶対に適すことになります。

 

 HOjに問題があるとすれば、規格ではなく、私のように欧米型(や新幹線、近鉄本線等)を嗜む場合にはレールを2式持たなければならないことですが、確かに障害ではあります。

 でも(大変残念なことに)日本では16番と欧州型を併用している方はとても少ないので、殆どの方には共存は関係ない話でしょう。

 それよりも私、そして大多数の方にとって唯一、そして最大の問題は、HOjがあまりにも高すぎて買えないことです。

 確かに優れた模型であることは間違いありません。

 でも、機関車40万円!!では全く手も足も出ません。

 仮に手持ちをたくさん売って、無理して買ったとしても、壊れるのが怖くて遊べないですよ。

 これでは本末転倒ですよね。

 何れにしても以前の記事通り、いくら良くても買えないものは趣味にはなり得ません。

 よって私はため息ばかりでした。


 その点、こちらの鉄道車両金属モデルコレクションは、7,000円と言うデアゴのシリーズでは思い切った破格の値段です。

 とは言うものの、上記の通り、HOjの一般的な機関車の完成品は40万円ですから、それから考えたら出来は全く比較にならないにしろ、破格の価格です。

 ただし、このシリーズは静態模型です。

 何とか走らせられないものか?

 思案のしどころですね。

 IMONが走行化キット出さないかな?

 でも……、今度出るEF66用の下回りだけ分売しても、10万円以上でしょう。いや15万円かな。

 デアゴの台車枠や床下部品を転用して、真鍮板の台車枠としても、5万円とかになってしまうのでしょうね。

 いくらなんでもそれじゃお話にならないですよね。

 さりとてBemoの下回りは使えませんし、Bemo自体高いです。

 

 まあ私個人としては、EF66だけでも欲しいところではあります。

 やはりドイツや欧州、アメリカの車両と並べてみたいのです。


 それはともかく、どうして日本の主流は、戦後の妥協の産物である16番になっちゃったんでしょうね?

 毎度同じ話ばかりで申し訳ありません。

 どうも年を取るとくどくなります。お許しの程を。

 それで、日本でHOjが普及する、最初で最後のチャンスは、1980年代半ばだったと思います。

 すなわちKATOが16番に出たときです。

 あのとき、どうしてHOjにしてくれなかったのか。

 今こんなこと言っても何言ってるんだとお叱りを受けるかもしれません。

 しかし、当時はそういう時代でした。

 すなわち、当時の、すなわちKATO参入前の日本型16番界のプラアレルギーと言えば、それはそれは凄いものだったのです。

 そしてそれをまっ先に改めるべき趣味誌が、率先してプラ製品を見下して、歯牙にも掛けませんでした。

 確かにその頃のプラ製品は、今のような精度はありませでしたが、全く価値が認められず完全否定されてしまったのです。

 せめて少しでも将来の肯定的な見方をしておけば……、欧米と同様、もう少し早くプラの時代が来たでしょうに。

 ちなみにこのことがありますので、私は日本の趣味誌は読みません。


 で、それから40年、世界はもちろんのこと、日本ですら1/80スケールの模型は、プラ製が主流になっています。

 すなわちその頃の趣味誌や趣味人は、間違っていたということになります。

 で、そんな逆風だらけの1980年代、KATOがDD51とEF58、そして12系PCとコキ10000系で目指したものは、プラアレルギー真っ只中で、最初からプラ製品の価値など認める余地などない保守的極まりない当時の16番ユーザーではなく、ディテール志向極まりない日本のNゲージャーが何れ、Nには飽きたらなくなると踏んだからと思います。

 実際、それから大分時間を要しましたが、プラ製16番普及の原動力は、元からの16番愛好家ではなく、Nゲージに満足できなくなってきた層であることが明確です。

 で、基礎がなく、全く新たに始めるのなら、16.5mmだろうと12mmだろうと関係ないわけで、確かに不利はあったでしょうが、このときならまだプラ製16番は、ほとんど相手にされなかった僅かな例外以外何もなかったのだから、それがHOj 1/87 12mmだったとしても大きなチャンスがあったと思います。

 実際、KATOは当時から欧米輸出用の1/87 16.5mmを作っておりましたが、車輪や部品は全く別物であり、16番への部品転用はしていないので、不利はないと思います。

 また、これより少し前、本格的になった日本型のナローゲージは、1/80 9mm or 10.5mmではなく、1/87 9mmが主力でした。

 だから全く新しく始める世界ならば、スケールに対する障害は思いの外、なかったとも言えるような気がします。(もちろんナローの軌間は9mmですが。)

 これだって、本来、国鉄本線機と並べるならば、1/80でなければならなかったはずですが、当時この辺りの声はあまり聞こえなかったように記憶しています。


 しかし今となっては手遅れでしょう。

 すなわちプラ製の16番は、当時のキワモノ扱いから完全に脱却し、高額になりすぎたブラス製16番を席捲し、16番の主役の地位を確保したからです。

 そういう意味で当時の主流であるブラス製品は、今では完全に少数派……、高嶺の花になってしまったのです。

 40年前にはあり得なかったことが起きたのですね。

 それでブラスの16番とHOjのどちらが多いのか、私にはわかりませんが、その差は1980年代に比べれば小さくなっているはずです。


 話を戻しまして、プラ製の16番が普及してしまうと、いかにスケールモデルとして正しかろうが、後発は大勢には勝てません。

 極端な言い方ですが、「悪貨は良貨を駆逐する」っていうやつですね。

 ましてNが16番にとって代わったときのような決定的なコストの差異は、プラ製16番とプラ製1/87 12mmにはあり得ませんから尚更です。

 プラ製品の価格は生産量が一番の要因ですから、数が少ない限り、逆転はありません。

 そして欧州のHO/HOmとは異なり、16番と1/87 12mmは全く別規格のものであり、同時に扱えないことからも、HOjの普及は難しいでしょうね。

 まあ、私としてはHOjにプラ製品を作れるメーカーがぜひ参入して欲しいとは思いますが、元々が小さな市場だけに、無理でしょうね。

 残念ながら。


 そんなHOjに唯一、拡大のチャンスがあるとすれば、逆説的ですが、日本型のディテール志向主義でしょう。

 だって、ディテール、そしてシルエットを追求していけば、早晩、16番では物理的に解決できない問題にぶち当たります。

 実際、蒸機などはどうにもなりません。

 そしてこれはたとえ軌間を13mmにしても、模型自体が16番の転用である限り、上記の幅の問題があるため、完全解決には至りません。

 1/80 13mmとして0から設計された蒸気機関車の製品があるのか……、浅学な私にはわかりませんが。

 模型ですから限界はありますが、HOj 1/87 12mmなら、制約は一番少ないと思うのですが、いかがでしょうか?


 なお、個人的には1/80 13mm(Jスケールというのでしょうか?)は、上記の問題を除けば、軌間スケールですし、外国形と並べる必要がないのであれば、大変優れた考え方と思います。

 特に既存製品や部品を転用できるのは、大変なアドバンテージであり、コストメリットが非常に大きいでしょう。

 日本型オンリーの方にとっては、Jスケールは、メリットしかないと言っても過言ではないと思います。(貸レとかはないんでしょうね。) 

 難しいのでしょうが、Bemoのように、KATOやTOMIXが16.5mmバージョンだけでなく、13mmバージョンを出してくれたらとても嬉しいですよね。

 1/150 6.5mm同様、私もやってみたくなります。

 惜しむらくはまだまだ少数派であり、道床付きの完成レールがないのは大変残念ですけど。


 まあ、デアゴのシリーズは、これらの問題にはなんの関係もありませんが、初めて入手できるHOjであり、欧米車両と並べることができるのはとても素晴らしいことだと思います。

 

<付記>

 試験販売されたクハ481に16.5mmのパワトラを履かせ、16番のモハと一緒に運転している動画がようつべにありました。

  

 流石にこんなことやったことないのでわからなかったのですが、改めて1/87と1/80は違いますね。

 いや~、これほどはっきりわかるとは、正しく百聞は一見にしかずですね。

 で、思ったんですが、がに股気にしなきゃ、あの動画のような1/87 16.5mmもどうなんかなって。

 確かに上記のスケールモデルからはかけ離れたものになってしまいますし、HOjのファンの方には大顰蹙を買いそうですが、それでも動かないよりはね。

 やっぱり走らせたいじゃないですか。

 すげーかっこ悪くなりそうだけど、パワトラでも走りそうですよね。

 12mmの動力はともかく難しそう。

 考えてみましょう。


 なんて書いてたら、この世界のある大先輩に、12mmにもパワトラがあることを教えていただきました。

 こちら

 力がなさそうなので、EF66が走るかどうか。


2022/8/23 記 2022/8/24 一部修正



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