大嫌い! 模型鉄道用 ゴム動力の巻

 こちらを見てくださる方は、模型鉄道を嗜んでいらっしゃる方が多いと思います。

 そして殆どの方が、模型鉄道はお金がかかる趣味だと思っているのではないでしょうか?

 かくいう私もその通りで、率直な話、模型鉄道って、相当高額な買い物だと思います。

 その対価としての模型鉄道に何を求めるのか……、

  スケール、軌間スケール

  全体の形状把握、ディテール、質感

  走行性能

  サウンド

  収集しやすさ

などなど……、もちろん、この全てを追求される方も多いと思います。

 もちろん模型鉄道のジャンルによって異なるでしょうし、何よりもこの趣味を嗜む一人ひとり、全く違うと言っても過言ではないと思います。

 このように求めるものは違えども、恐らくですが、殆どのファンは、高額な模型鉄道は長持ちして欲しいと思うのではないでしょうか?

 ところが……、特に欧州型において、これと全く反する動力が未だに使われていることは、存外知られていないと思い、本稿を記すことにいたしました。


 さてその問題の動力とは……、動力伝達にゴム製部品(ベルト等)を使っているものです。

 私は「ゴム動力」と呼んでいます。

 ゴム動力の最大の欠点は、なんと言っても動力伝達部品であるゴムが、経年劣化により、遅かれ早かれ切断してしまうことです。

 相手がゴムである以上、速度に差異はありますが、経年劣化しないゴムはありません。

 またゴムベルトは、常に変形とストレスにさらされておりますので、物理的に必ず劣化します。

 つまりゴムベルトは、はじめから「消耗品」であり、だめになったら取り替えるものなのです。

 従って、産業用のベルトは、交換前提で設計されています。

 しかし、模型鉄道で使用されるゴムベルトは、僅かな例外を除きますと、一般的に入手可能な規格のものはありません。

 むしろ、その模型特有のものばかりであり、切れてしまえばそこでもう完全におしまいなのです。

 上記の通り、経年劣化しないゴムは存在しません*ので、ベルトの買い置きも殆ど意味はないと思われます。

 劣化して交換する際には、買い置き分も劣化してしまっていると思われますので。

*シリコーンゴムやフッ素ゴムは合成ゴムに比べると経年「劣化」しにくいです。

 ですが、シリコーンゴムはゴムとしての強度が一般的な合成ゴムに比べると格段に低いため、ストレスには弱く、また、フッ素ゴムも成形がしにくいため、ベルトに使われることはありません。

 そしてゴム動力=ゴムベルトにはさらに下記の欠点があります。

・トルクの低いモーターの軸にテンションを掛けなくてはならないので、モーターに余計な負荷がかかる。

・必然的に軸受が摩耗する

・上記を嫌い、テンションを緩めるとゴムベルトが滑る。(特に低速時)

などなど、模型鉄道用の動力として、これほどふさわしくないものはないと私は思います。

 では、なぜこれ程までに問題のあるプアーな動力を採用するかと言えば、はっきり言って、コストダウンに名を借りたメーカーのユーザー軽視(売ったもん勝ち)、怠慢、及び技術力の欠如以外には私は思いつきません。

 確かに狭い場所で確実に動力伝達を行い、十分なる減速比を得るには、高精度のギアと設計の妙を要求され、必然的にコストがかかりますから。

 技術力の低い無責任なメーカーが、ギアに比べると精度の低い可撓性を有するゴム動力へ安易に逃げるのでしょう。

 何れにしても、模型鉄道のように高額で長寿命のアイテムが、早晩動かなくなってしまうというのは、少なくとも私にとっては大問題であり、このような情報は共有すべきと考えました。

 ちなみに、私が保有している(いた)、または伝聞ではなく事実として把握しているゴム動力の車輌は下記のとおりです。

 個人の経験ですので僅かな例であり、他にもあると思います。


1)ROCO 72564 ÖBB 1189 オーストリアン・クロコダイル

 工業用のOリング(DINサイズ?)使用

 部品表2P目の18 "O-Ring 16X1.5 Material NBR 70" と明記されている。

 こちらは最新製品だが、発売当初からこの構造は変わらないはず。


2)○TRIX 22444 DB BR 217 

 工業用のOリング(DINサイズ?)使用


3) ○TRIX 53224701 DB BR 184

 BR 217と全く同じ構造の動力。


4)○Rivarossi 1363 K.Bay.Sts.B S 3/6(DRG/DB BR 18.4、5、6)

イメージ 2

 特殊サイズの超小型Oリング 1mmφ使用? 日本では入手不可能


5)○Lima 149790 DRG BR 61001 ヘンシェルヴェグマン列車用流線型蒸機

  

 上のRivarossiと同じ特殊Oリング使用


5)○Rivarossi 1314 K.W.St.E K(DRG/DB BR 59)

 歯付ゴムベルト

 幅数mmの歯付きベルトで駆動。調べた限りであるが、全く見つからなかった。

 特殊サイズで入手できないと思う。


6)○Liliput 104001 Baden IVc(DB BR 18.3)


 幅約2mmの歯付ベルト使用、調べた限りでは調達不可。

 なお、この製品ですが、オーストリアLiliput時代にはギア駆動だったそうです。

 つまりBachmannになってから動力が改悪されたわけですね。

 古い方がましだったなんて……、知りませんでした。


7)○Piko 0233 DB Kö 0233 貨車移動機

 超小型平ベルト使用 車輪用ゴムタイヤの転用か? 調べた限りでは調達不可。

 モーター側の駆動軸にはプーリーを使っておらず、モーター軸そのもので駆動しているという、ひどい製品です。

 一方、ギアやモーターには、まともなものが遣われております。

 こうなるとコスト要因ではなく、単なる技術力の欠如としか思えません。


8)○Sachsenmodelle 13001 DR VT2.02 

イメージ 7

9)○Sachsenmodelle 13003 DBAG BR 772/972 レールバス

イメージ 8

 Rivarossiと類似した形状の極細Oリングだが、サイズは異なる。

 調べた限りでは調達不可。なお、Tillig版も同じか不明です。

 この車はモーターが車体中央になく中心線から偏心して取り付けられており、極細Oリングで駆動しています。

 なんで一般的なモーターを中心に置き、ウォーム駆動にしなかったんでしょうか?

 さっぱりわかりません。


 上記○印は、当方現在保有、または過去に保有歴あり。

 古い製品が多いようにも思いますが、中にはPikoのKö 1などの現役製品も混じっています。

 いまだにこんな粗悪なものが売られているとは……、「欧州型は走行第一」なんていう神話には、大いに例外がありそうですね。

 1)~3)の2つも許されるものではありませんが、太いサイズですし、産業用に類似品がありそうなので、切れてしまってもまだ救いがありそうですが、それ以外は切れたらそこで終わりです。

 その点、私はメルクリン信者ではありませんが、私が知る限り、同社はゴム動力を採用していないと思いますし、それはFleischmannも同様と思われます。

(何分にも情報が少ないので間違っている可能性が多々あります。違っていたらごめんなさい)

 このあたり、メーカーの姿勢がかいま見えるように感じますね。

 ちなみに16番のメーカー完成品、そしてNの量産製品ではゴム動力は見たことはありません。

 なお、上記の車両には、手放したものもありますが、一部まだ残っています。

 これらは、何れ不動になってしまうでしょう。

 実際、過去記事の通り、LimaのBR 61001はベルトが切れてしまいましたが、なんとか通常の平ギア駆動へ改造することが出来ました。

 しかしゴム動力を大改造なしにギア駆動へ改造するのは、一般的には相当難しいと思いますので、切れたら終わりでしょうね。


 ところで正直な話、これらの殆どは知らなくて買ったものばかりです。

 もし知っていたのなら、長持ちを重視する私は、買わなかったでしょう。

 ですが、以前はこのような売り手(販売店)にとって不利となるような情報は、まず表に出ることはありませんでした。

 しかし模型鉄道は、決して安価なものではありません。

 ゴムベルトが切れたらそこでおしまいというわけには行かないのです。

 確かに古い模型が多いですが、今は中古入手が増えておりますので、決して他人ごとではありません。

 そう思い、くどいとは思いますが、敢えて繰り返し記事にいたしました。

 どうかよろしくお願いします。


<付記>

 ここに挙げた以外で耐久性に大いに問題があるゴム動力を採用している製品がありましたら、お知らせいただけましたら幸いです。


2018/9/18 記、2022/8/20 一部改訂の上、再録


 

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