ドイツ国鉄 DRG 運用 私有貨車 Erfurt 544 076 P (Märklin 47895)

 今回は、DRGで運用された私有貨車 Erfurt 544 076 Pについて紹介いたします。

 と言いましても、残念ながらこちらの私有貨車の由来や経歴については全くわかりませんでした。

 ただしこちらもVerbandsbauart A2ですので、一連の紹介記事の続きとなります。

 A2はブレーキ室付きとブレーキ室なしが作られましたが、この車はブレーキ室なしです。

 なんて見ればわかるじゃんということではなく、ブレーキ室付きとブレーキ室なしは、シャーシーの長さが300mm違うのです。

 しかし、ホイールベースは同じ4,500mmですから、両者ではフレームの端から車軸までの距離が異なります。ブレーキ室あり:1,900mm、なし:1,750mm

 製造当初は貫通ブレーキがなかったため、このような形になりましたが、1920年代の半ばに貫通ブレーキが設置されるとブレーキ室が不要になりました。

 そのため、ブレーキ室を撤去したA2も数多くあります。

 これらは片側の車体からシャーシーがはみ出しているので、識別できますね。

 こちらのメルクリン製品は、同社としては新しい製品で、前に紹介したM.F.E.E. のA2とは全く別の新しい金型で、車体端部に斜めの補強ブレスの入った1930年代以降の姿になっています。

 まず第一印象としては、よく似ていると思います。

 そして、以前の製品にはエラーがあった換気ガラリやローディングフラップの位置は修正され、その形状も正しいものになりました。

 また塗装やレタリングも現代のグレードになってます。

 ただし、荷室ドアを可動にしたため、上側のレールがゴツくなってしまったこと、また、ドアの背の高さが低くなってしまったのが残念です。

 また、前回のROCOの記事通り、A2の側面の一番下は、車体の骨組みの側枠になっており、上の木製の側板に比べると高さが半分以下に見えますが、本製品の側枠は少々高すぎるように感じます。

 側面の一番上はやはり金属製の側枠になっておりますが、こちらは一番下の側枠と違って、幅がずっと広いです。

 仮に一番上の側枠の幅を木の側板と同じとした場合、メルクリンの木の側板は13枚あるので、高さは140mmになるはずです。

 一方、最下部の側枠は、床板厚と同じとすると55mmであり、側板の約40%になりますので。

 なお、Wikipediaの図面では木の側板は13枚でしたので、実物にも色々あったのかもしれません。

 Web写真ではBRAWAは13枚でした。

 一方、端面は側面とは違います。

 と言いますのも、実車の端梁の上面は床上面よりも低いため、側面と端面では側板がずれて配置されています。

 こちらの写真がわかりやすいですね。

 また端面の一番下は側面と違って木の側板が入っているようです。なお、復元車には側面と同様、金属の側板になっているものもありました。

 ROCOの新しい製品とは感じが全く違いますね。

 屋根板の車体からのはみ出し具合も、こちらの方が良いと感じます。

 他の例に従って、こちらについても、感じでは面白くないので、実測してみました。

 いつも通り、黒が実車の1/87、赤が採寸結果です。

 素人採寸なので、測定値には相当な誤差を含むものと思っていただけましたら幸いです。

 その結果ですが、ご覧の通り、他の模型とは異なり、実物との乖離がほとんどありませんでした。

 車体側面も僅かに高いようですが、 見た感じ、違和感はありません。

 一方、参考数値のレール踏面から床下までの距離は、ROCOと同様、約0.5mm短い結果でした。

 にも拘わらすROCOとは感じが違うように見えるのは、メルクリンの車輪径が0.5mm小さいからかもしれません。

 踏面からの高さが低い分、他の車輌とバッファーの位置を合わせるためか、バッファーが上に移動しており、結果としてサイドフレームの中心とバッファーの芯が合っていないのは気になると言えば気になりますね。

 図面では、バッファーの中心線はサイドフレームの中心と一致しております。

 これは強度的にもそうなるはずですよね。

 バッファーの高さを合わせるためか、端梁が上に移動してしまっています。

 図面では、メインフレームは、C235×90×10、端梁はC260×10×90と記載されております。

 施工上、C260の端梁にC235のサイドフレームが挿入されるはずなので、端梁とサイドフレームは面一にはならず、Cチャンの厚み分だけ段差ができます。

 前回紹介した保存車の解体整備中の写真では、端梁の上端とサイドフレーム+補強板が面一になっていました。

 このあたり、こちらの記事が大変参考になりました。

 1/16の手作り品だそうですが……、すごいですね!

 ただし、シャーシー端面の端梁の補強板は、復元車ではサイドフレームの上についていました。上記HPの模型のように、下にもあるのかは写真からはわかりませんでした。

 何度も記した通り、G 10のベストモデルはBRAWAだそうですが、こちらのMärkinも決して悪くないように感じます。

 しかし……、この製品の最大の問題は、入手できないことです。

 こちらは47985 Güterwagen-Satz "650 Jahre Sonneberg" 5輌セットのひとつなのですが、Märkinの新G 10は私が知る限り、何らかのセット売りばかりで、単品販売されていないのです!!

 そのセットも、こちらのような実車においては圧倒的少数、ないしファンタジーの広告車ばかりで、素のG 10は殆どありません。

 G 10はDBにおいて、1960年代まで圧倒的多数を誇った貨車です。

 ただのG 10の発売を切に望みます。

 DRGの私有貨車には、1)車番、2)所属鉄道総局 (Bahndirektion)、3)常備駅、4)積荷が記載されておりました。

 こちらの例では、Erfurt が所属総局、544 076 が車番、「P」は 私有貨車となります。

 ちなみにErfurtの所属私有貨車には、車番544 000 ~ 544 999が付番されたそうですので、こちらの模型は合っていますね。

 そして車番の右下に書かれているのが、日本で言うところの常備駅 (Heimatbahnhof)で、白地に黒文字で書かれることなっています。

 さらに積荷(Ladegut)が書かれていたそうですが、有蓋車で積荷が一定ではなかったからか、こちらにはその記載はないですね。

 なお、タンク車などは上記4つの項目が、両サイドに配置された2×0.8mの黒字の板に書かれています。

 私有貨車には一般的にGなどの型式標記はなく、またErfurtは所属総局であり、Gattungsbezirkではありません。

 このあたり上写真の左上に積載荷重等は記載されておりますが、日本のように私有貨車でも型式名が与えられていないと、不便ではなかったのでしょうか?


2016/7/19 入線


2021/7/22 記 


 

 

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