東ドイツ国鉄 DR 断熱冷凍車 Gknw 17-52-70 (Piko 5/6445-015)

 今回は旧東独国鉄 DRの断熱冷凍車 Gknw 17-52-70について紹介します。

 と言いながら、実はこの車両そのものについては、やはり何もわかりませんでした。

 DR型式の「17」は以前紹介したGk (Hg)と同じ、断熱車を意味します。

 残りは、n:冷凍車で「冷凍食品に適さない」、w:「15 t 未満の負荷重量で、kippfähigではない」という意味でしょうか? 

 それで今回、こちらを紹介したのは、この車は元々DRの断熱冷凍車Gkではなく、以前紹介したドイツで最も大量に生産されたVerbandsbauart A2の元となったLänderbahnbauart の有蓋車、プロイセン邦有鉄道標準図 IId 8だからです。

 模型の方も、単純なIId 8の塗り替えであり、冷凍車としての装備は特にないように感じます。

 残念ながらGkns 17の実車については、全く情報を得られなかったので、詳細はわかりませんが、流石に冷凍車なのですから、有蓋車と全く同じということはなかったんじゃないかと個人的には思います。

 それはともかく、19世紀の終わり頃、プロイセン邦有鉄道は、機関車、炭水車、客貨車などの車輌や、鉄道施設などの標準化を進めました。

 その中において、15t積み有蓋車 標準図 IId 8として定められたのが、この車です。

 ドイツの鉄道は1920年に統一される前に、8つの(王国)邦有鉄道に分かれており、それぞれが独自に車輌を開発しておりました。

 しかし、共通乗り入れ等には問題があったため、標準化が求められました。

 これを受け、1909年にドイツ国立鉄道協会(Der Deutscher Staatsbahnwagenverband、DWV)が設立され、代表的な一般仕様の貨車11種類について、標準化を行いました。

 この際、ドイツで最も車両が多く、かつ標準化の進んでいたプロイセン王国邦有鉄道の設計が11種類中9種類も採用されました。

 その一つ、ドイツで最も多く生産された有蓋車A2は、標準図 IId8が元となり、そして世界一(約20万輌!)生産された20t積み無蓋車 A10は、標準図 IId 2IIIが元となりました。

 それでこちらのIId 8ですが、1890-1919年の間に、ブレーキ室の有無をあわせ約4,600輌が製造されたようです。(期間・数量には諸説あり)

 型式は、K.P.St.E.:Gml、DRG:G Hanover、G Stettin、DB:G 02、DR:G 03となりました。

 DBでは最後の一両が1960年に引退しました。

 上記のようにIId 8は、A2の基礎となった車ですので、非常によく似ており、外見上の見分け方が難しいですが、A2の記事で書きましたように、下記の差異があります。

・IId 8:右側が換気ガラリ、左側がローディングフラップ、位置は両方とも端から二番目のスパン、ブレーキ室屋根は丸い

・A2: 左側が換気ガラリ、右側がローディングフラップ、換気ガラリは端から二番目のスパン、ローディングフラップは右端のスパンにある、ブレーキ室屋根は尖っている

 前回紹介した下写真のメルクリンのA2と比べると違いがわかりますよね。

 ところでIId 8についての情報は、ドイツでも少なかったようで、Pikoのモデルについて、G 10と記しているページも多く、また、「換気ガラリとローディングハッチが逆になっている」のが残念と記載されているHPもありました。

 IId 8なら正しい配置なのですが。

 換気ガラリとローディングハッチのサイズと形状は、メルクリンよりもずっと古いPikoの方が実物には似ていますね。

 Pikoの製品は1960年代のものらしいですが、こちらで何回か説明いたしましたように、当時としては相当良い出来だったと思います。

 ただし欧州製品にはよくあるのですが、シャーシーを他と共用したため、長さが短いという欠点があるそうです。

 古いPikoなので、塗装やレタリングは良くないですし、成形品の車輪もだめですね。

 ですが、全体の感じはそれほど悪くありません。

 少なくとも、ROCOのリニューアル製品よりは、ずっと実車らしいですし、背の低さが再現されていると思います。

  この製品は、2017年になっても、ショートカプラー化されてPikoから発売されているようですね。

 上記のように、こちらのGknw 17は単なる塗替え製品で、塗装やレタリングがイマイチなので、レタリングを入手できれば、DBかDRG仕様に塗り替えたいです。

 見た感じが良いですし。

2000/3/22 入線

2021/7/10 記

 

<2021/7/24追記>

 他に習って採寸してみました。

 まず、バッファ間距離ですが、実測の結果、4.5mmも短いことがわかりました。

 しかし、車体の長さは1.4mm短いだけなので、Lilipiutのようにおかしいものではありません。

 実際、上写真を見るとわかりますように、PikoのIId 8は、台枠からのバッファの長さが異様に短いのです。これはシャーシーと他と兼用したためと考えられますが、バッファを基部ごと他と交換するだけで随分改善されるように思います。

 各部分の高さは相当正確と思います。そのためか側面から見たイメージは悪くないと思います。

 ただし、バッファ中心が高く、荷室ドアの幅が広いです。

 幅も1.3mm広いです。



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