ドイツ連邦鉄道 DB 貨物用テンダ式蒸気機関車 BR 56.20-29 2659号機 (Fleischmann 4157)
今回はプロイセン王国邦有鉄道 K.P.St.B、ドイツ国鉄 DRG、ドイツ連邦鉄道 DBで幅広く使われた軸配置1Dの貨物用蒸気機関車 BR 56.24-26について紹介したいと思います。
<BR 56.20-29 主要諸元>
型式:1’D h2、全長:16.995m、重量:83.5t、軸重:17.7t、動輪径:1.4m、過熱式二気筒、出力:1,022kW、ボイラー圧:14bar、最高速度:65km/h (一部75km/h)
本形式は元々、プロイセン王国邦有鉄道 G 8.2形として、軸配置1Eの G 12形(後のBR 58)を元に開発されました。
当初、三気筒式のG 8.3形と比較検討されましたが、三気筒は構造が複雑になる割には利点が少なく、G 8.2が採用されるに至りました。
1919年にプロイセン王国邦有鉄道より生産が開始されましたが、ドイツ国鉄DRGにおいても引き続き生産されました。
1928年までに846輌が製造され、56 2001-2485、2551-2916の車番を割り当てました。
1930年、うち4輌はAEGの手により、微粉炭燃焼方式に改造されています。
ほぼ同一形式がルーマニア国鉄 CFR及びトルコ国鉄 TCDDにおいても製造、使用されました。
本機の用途は貨物用でしたが、後には最高速を75km/hまで高め、旅客用にも使用したそうです。
なお、DRG BR 56(56形式)とは、軸配置1Dの貨物用テンダ式蒸気機関車を表すものであり、この形式以外にBR 56.2(BR 55に先輪を追加し最高速度を上げたもの)、LBE鉄道のG 8.2などが存在します。
邦有鉄道時代のドイツ貨物機は、先輪のないタイプBR 55やBR 57が圧倒的に多数であり、先輪付きのタイプBR 56、BR 58は少数派です。
Einheitsの時代になると、先輪のないタイプは小型機以外作られませんでした。
BR 56.20-29は、1945年のドイツ敗戦時にも650両が残存しており、ドイツ連邦鉄道 DB及び東独国鉄 DRへ継承されました。
しかしながら、本線機としては最高速が遅く、支線機としては軸重が大きいという中途半端な性格が災いし、DBでは1963年には用途廃止となりました。
確かに3,000両以上が大量生産されたBR 50は軸重 15.2tで最高速度は 80km/hですから、うなずけますね。
ほとんどの形式が保存されているドイツですが、本形式は保存されていないようです。
しかし、戦後ポーランドに残った1輌がワルシャワで保存されているそうです。
以上、Wikipedia 独語版 Preußische G 8.2 より引用、参照いたしました。
それで模型の方ですが、Modellbau-Wikiによりますと、BR 56.20-29を最初に模型化したのは東独のPiko/Guetzoldのようです。
同社製品としては比較的新しいもの (1986年?) で、感じも悪くなく、1990年頃でしたか、天賞堂で試験的に扱っていたこともありました。
AEGの微粉炭燃焼改造機が置いてあったように記憶しています。
ただし同社製品は、動輪やロッドがプラなのはイマイチに感じましたね。
それで、こちらで紹介するFleischmann製品(以下FLMと略)は、1986年の発売です。
同社の蒸気機関車が一作毎に際立ってグレードアップしていた頃の製品なので、フルスケールですし、とても感じが良いと思います。
まず最初に、DRG仕様の 4156が出た後、こちらのDB仕様 4157が1988年に発売されました。
同社製品らしく、この他にも限定で1920年頃のP.St.B仕様もありました。
上記の通り、4157はDB エポックIII仕様です。
4156が原形、石油ランプになっているのに対し、こちらは電灯化されたスタイルで発電機を装備しています。
FLM製品はBR 78など、キャブなどを仕様により変更しているものもありますが、ライト周り以外にはDRG仕様との変更点はないようです。
伝統のテンダーモーター/テンダ駆動を採用しておりますので、走りはスムーズです。
Einheitsに比べると小さいですが、ゴムタイヤ装備なので力もあります。
モーターは伝統の円形ではなく、いわゆるビューラーモーターを採用しております。
後の製品のような軽い走りではなく、至って普通の走りです。
この製品の問題はやはり箱です。
いわゆるブリスターパックですが、Maerklin/TRIXのようにブリスターの幅がないため、機関車を立てて入れるのには大変不安定ですので、収納、取り出しの何れも大変やりにくいです。
またブリスター自体も、全体を囲うものだけで、カバーもありません。
ブリスターが入る紙箱も、Märklin/TRIXのように多少なりとも衝撃吸収構造になっているものと比べて、このような高額商品にしては、何とも安っぽい折り箱で、強度も皆無です。
欧州型HOの箱にはろくなものがありませんが、FLMの蒸気機関車用のブリスター箱は、群を抜いて駄目な箱と私個人は思います。
更にBR 56の箱は、テンダーのナンバーがブリスターの当たり面の近くにあり、私の保有するDRG仕様は、ナンバーが剥げてしまっていました。
そうでなくても機関車を寝かせて入れるFLMのブリスター箱は、当たり面に力がかかりすぎて、機関車に傷をつけてしまうという大問題があり、私は大嫌いです。
後にはポリシートが入れられるようになりましたが、静電気で動いてしまうし、元々無理があるので、大した傷防止にはなりません。
私は可能な限り、この糞箱をやめてIMONの箱に入れ替えています。
ただし、FLMの蒸機の足回りは繊細なので、破損には十分注意して下さい。
シリンダ部。
1980年代の製品ですので、車輪はメッキですし、ロッド類は銀ですが、成形自体は大変優れていると思います。
尻棒カバーも繊細ですね。
動輪は伝統のダイカスト製です。シャープさが違います。
この頃、他社はプラ輪芯がまだまだあった時代です。
パイピングはプラですが、他社製品に時々見られるような変形や歪みがないのが、同社らしく、大変好ましいですね。
標記類は、相変わらずきれいなレタリングですね。
28.7.59なんて標記から使用年代もわかるわけですね。
非公式側。
色を除けば、現在でも通用するグレードと思います。
メインロッドやリターンクランク?の精度も高いですね。
ランボードがやや曲がっているように見えなくもないですが、レンズのせいかも。
キャブ脇のハンドレールや下の配管類もいい感じです。
プロイセンタイプのキャブ。P-8に似ていますね。
バックビュー。
炭水車の手すり、配管なども細かいです。
プロイセン pr 3 T20 テンダーです。
なぜ軸が不均等配置なのでしょうね。
上記の通り、伝統のテンダーモーター/テンダードライブで、長年使用された円形モーターではなく、この頃から採用されたビューラー製の缶モーター装備です。
ちなみに円形モーターは当たり外れが大きく、いいのに当たると最高なのですが、悪いのは本当にがっかりします。
DCCには向いていないようですね。
ROCOもそうですが、炭水車を分解するのがとても怖いです。
あまり紹介されることのない機種ですし、引退も早かったので、牽かせる車両には限りはありますが、どこか9600によく似たスタイルの本機、貨物機ファンの方、ぜひいかがでしょうか?
とは言うものの、ROCOと経営統合したFLMは、Nに特化するそうですので、もう出来の良いフルスケール蒸機は入手できないのでしょうか?
そう言えば昔のTMSに本機とBR 98.8(K.Bay.Sts.B GtL 4/4)を黒く塗り替えて、ライトや煙突を一部加工して日本型とした記事がありましたよ。
そう言われてみますと、腰高のスタイルが同世代の同一軸配置機9600に似てなくもありませんし。
あまり良く覚えていませんが、なかなか似合っていたように思います。
日本ではドイツ製の機関車は少数派でしたが、8800や4500など例外もありましたしね。
2012/4/20 入線
2019/1/19 記
2019/12/12 写真追加、文章修正の上、再録
2020/10/10 写真全面更新、文章修正の上、Blogger用に再構成
↓当方HPです。こちらもどうかよろしくお願いします。
↓当方も参加しております。実物、模型などいろいろな鉄道ブログがあります。
是非ご覧になってください。