ドイツ連邦鉄道 DB 貨物用テンダ式蒸気機関車 BR 50 051 369-7号機 (ROCO 43294)
今回は、ドイツ連邦鉄道 DBの汎用貨物用蒸気機関車 BR 50 ”Kabinentender" について紹介をしたいと思います。
BR 50は、1936-1948年までの間、3,000輌以上が製造されたDRG制式貨物用蒸機です。
<BR 50 主要諸元>
型式:1' Eh2、バッファ間距離:22,940mm、運転重量:88.2t(テンダー除く)、軸重:15.2t、過熱式二気筒、ボイラー圧力:16 bar、出力:1,625PSi、軸配置:1E、動輪径:1,500mm、最高速度:80km/h(前後進共)。
ちょうど第二次世界大戦にあたり、貨物用機関車が大量に必要とされたため、3,000輌以上が生産されました。
戦争の激化に伴い、製作工数削減のためキャブ窓省略、デフ省略、角型ドームなどの省略化を実施した戦時型 ÜK (Über Krieg) も製造されております。
2,000輌以上が製造された重貨物機 BR 44 (バッファ間距離 22,620mm、運転重量 110.2t、軸重 19.3t、三気筒、出力 1910PSi)に比べると、同じ軸配置ながら軸重の小さい本機は、幹線からローカル線まで幅広い線区で客貨両用に活躍しました。
言わばドイツのD51と言ったところでしょうか?
敗戦後、2,000輌がDBに継承され、1977年まで活躍しただけでなく、他のヨーロッパ諸国でも幅広く使われました。
以前も記しましたが、その後、622号機がDBの動態保存機として縦横の活躍をしてきましたが、惜しくも2008年のニュルンベルク交通博物館機関庫の大火災により、炎上してしまいました。
このままスクラップになってしまうかと危ぶまれましたが、なんとか免れ、2018年現在、外観だけは復元され博物館に展示されております。
なお、3,000両以上作られたBR 50ですが、DBでは622号機以外は動態保存されず、静態機もほとんど残っていないのは意外な気がします。
話を戻しまして、1950年代、DBでは合理化のため、貨物列車の車掌車を省略することになりました。
このためにBR 50を改造して作られたのがKabinetenderです。
要は炭水車に車掌室を設置したわけです。
この改造は、735台に対し実施されましたが、改造に際して、特段、車番の変更はありませんでした。
面白い試みと思いますが、車掌室が狭かったのか、あるいは貨物列車車掌そのものが省略されたのか、私にはわかりかねますが、DBではKabinenntenderはBR50だけで、他の形式では行われませんでした。
私が知る限りですが、同様な試みは、ÖBBでもBR 42、52に対して実施されました。
Kabinenntenderは短期間で用途廃止となりましたが、原型に復することなく、この形態のまま、廃車まで使用されました。
ところで、こちらの369-7号機は、1941年にBR 50 1369として製造され、1968年のコンピューターNo.化により、051 369-7となりました。
そして誕生から33年後の1974年まで使われたそうです。
よってこの姿は、廃止までの最晩年となりますね。
なおBR 051 369-7の来歴については、こちらを参照いたしました。
すごいHPです! 興味のある方は訪問してみてください。きっと驚かれると思います。
それで、以前も書きましたが、DBのコンピューターNo.では、型式3桁、車番3桁となりました。
しかし、BR 50だけは1968年の時点で、1,000輌以上が残存していたため、BR 50 ***では番号がダブってしまいます。
そこで、BR 50のみはBR 050、051、052と型式No.を分けることになりました。
約7,000輌が生産された戦時型量産蒸機BR 52は、DBでは1963年に全廃されていたため、本機と型式がダブることはありませんでした。
なお、同様に1,000輌以上が生産された、BR 38.10-40(K. P. St. E. P 8)、BR 44、BR 55.25-56(K. P. St. E. G 8)、BR 57.5-27(K. P. St. E. G10)については、1968年の時点で、DBの残存車は1,000輌以下でしたので、新しい型式No.は設定されませんでした。
ただし、一部車番が重なってしまったので、ダブった車は車番変更を行ったようです。
このように必ずしも成功ではなかったKabinenntenderですが、模型の世界では形態的に面白いのか、いくつも製品化されてきました。
こちらで紹介するのはROCO製品です。
1997年に発売された本製品は、1992年の完全新規製品 BR 50のバリエーションモデルです。
ROCOのKabinentenderは何種類か出ておりますが、Modelbau-wiki によると2番目の製品とのことです。
ROCOはFLMとは別の意味で、全体の雰囲気が独特な製品もありますが、BR 50について言えば、意外と細いボイラーなど感じが出ているように思います。また、テンダーもプラ製になり、機関車と質感が統一されました。
ただし1990年代の製品ですので、つや消し黒塗装、そして車輪の輪芯はプラですし、下回りの赤が今ひとつ映えない気がします。
車輪の輪芯はプラです。
シャープですが、金属製のような質感はありません。
実物の写真や他社の模型と比べると、特に70~80年代の古いROCO製品の赤は、総じて濁っているというか黒っぽいように感じます。もっともこちらの BR 50は以前ほどではありませんが。
保存機でもなければ実物は、汚れてるなんてもんじゃないくらい真っ黒ですけど。
なお、現在流通しているBR 50は、他の製品と同様、弱点だったプラ輪芯の車輪がシャープなダイカスト製となり、質感が向上し、更に赤の色調も他社と同様になっているようですが、残念ながら、保有していないので詳しいことはわかりませんでした。
レタリングはきれいです。
369-7号機は888号機のように、レタが剥がれるようなことはありませんでした。
時代的に弁装置やロッドも明るい色です。
やっぱり赤はイマイチに感じますね。
この当時のROCO製品は、つや消し黒塗装でした。
実車も艶はないのですが、模型的にはMärklin製品のようなやや艶ありの方が、質感にすぐれるかもしれません。
ディテールは細かいですが、赤の成型色で損をしているように思います。
Einheitsキャブ。
制式機のキャブはよく似ています。
キャビネンテンダーも後退用の窓が取り付けられています。
ステップも細かいですが、脱落しやすいので紛失しないように注意してください。
テンダーの車掌室。
手すりが金属なのはいいですね!
それにしても狭いですね。
キャビネンテンダーです。
横から見ると狭さが際立ちます。
廃止されたのがわかるような気もしますね。
BR 50は現在の標準である、テンダーにモーターを装備し、機関車とテンダーの両方を駆動します。
灯火類は電球であり、発売時期からして、8ピン装備ではないと思いましたが、残念ながら記憶しておりません。
いずれにしてもテンダー/機関車駆動のため、スピーカーやデコーダーを入れる余地はあまりないように感じます。運転音が静かなため、サウンド化には適すと思いますが、サウンドデコーダーは高いし、ショートすると破損しますので、現在出ているサウンド機を購入した方が賢明と思います。
BR 50は1Eの軸配置で、いかにも重貨物機と言ったイメージですが、実際には軸重が16tと小さいことから、本線だけでなく支線区でも多用されました。
また、客車も牽きました。
そういう意味で、使い途が広いため、一台は持っている方が多いのではないでしょうか?
ところで、私は一時、アナログ機に限界を感じておりましたが、最近、電子部品の寿命は必ずしも長いものではないことを痛感することがよくあります。
そう考えますと、50年経っても問題なく使えるアナログ機(もちろんそうでないものもありますが)には、大きなメリットがあると思うのです。
そういう意味で模型として大好きなROCOのBR 50は、今後共、客貨両用に大切に使いたいと思います。
こちらもまた、寝かせておいても価値が出るモデルではありませんから。
1996/10/25 入線
2018/6/16 記
2019/12/2 再録
2020/10/16 写真全面更新、文章修正の上、Blogger用に再構成
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