ドイツ連邦鉄道 DB 旅客用電気機関車 BR 110 233-4号機 (ROCO 43382)

 今回は戦後ドイツを代表する旅客用電気機関車BR 110について紹介します。

 BR E10 (110) は、軸配置B-Bの旅客用電気機関車です。

<BR 110主要諸元>

 バッファ間距離:16,490mm、運転重量:85t、軸配置:Bo'Bo'、軸重:21.3t、動輪径:1,250mm、定格出力:3,700kW、最高運転速度:150km/h

 1956年から1969年の間、379輌が製造されました。

 西ドイツ全土で旅客列車を牽き、幅広く使われましたが、BR 110としては、2000年に引退しました。

 ただし、改造型のBR 115はその後も使用されています。

 なお、BR 110は、途中で大きくスタイルが変わっておりますが、こちらで紹介するのは、当初量産された箱型 (Kasten) です。

 BR E 10も先日紹介したしましたBR 141と同様の経緯で生まれました。

 1950年西ドイツ国鉄 DBの技術委員会は、これからの電気機関車として、BR E 94を基礎とした6軸機及びE 44のような客貨両用の汎用機を計画しました。

 この目的に沿ってE 46が計画されましたが、急行用に最高速度を上げることになり、1952年、汎用機関車の試作型E 10.0 (E 10 001~005)が5輌作られました。

 この5輌は、製作メーカーや、構造、スタイルが異なるものでしたが、広範な試験の結果、一機種で全ての目的を達成するのは、得策ではないとの結論を得、その結果、急行旅客用 E 10、汎用貨物用 E 40、近郊旅客用 E 41、重貨物用 E 50の4種類の制式電気機関車 (Einheitselektrolokomotive) が作られることになりました。

 なお、E 40はE 10のギア比変更で作られました。

 また特急用BR E 01も計画されましたが、BR E 10で十分とみなされ、開発はキャンセルされました。

 本格的な特急用はE 03の登場を待つことになったわけです。

 上記の試作車E 10 001~005は、1952年より製作されました。

 これらは1975-79年にかけて引退しました。

 現在でも002と005の2輌が保存されています。

 これら5輌は、試作機という性格上、動力伝達装置等、それぞれ異なっていたようですが、外見上、E10 001は他の4両とは全く異なる形態をしております。

 うちにも試作機は2輌おりますので、そのうち紹介したいと思います。

 1956年より生産開始された量産型は、BR E 10.1となり、101からの車番が与えられました。

 BR E 10は総計379輌製造されましたので、生産に伴い、いくつかの変更があります。

 まず当初、前照灯は尾灯と一体で大型のものが設置されておりましたが、216号機から、別個に配置されるようになりました。

 下側が前照灯、上側が尾灯です。

 このタイプはE 10.2と呼ばれることもあるとWikipedia には記載がありますが、私はみたことがありません。 

 また、288号機からは、特急用にギア比を変更した高速型 E 10.12新造車と同様、流線型ボディ (Bügelfalte) になりました。

 これに対し今までの機種は、箱型 (Kasten) と称されるようです。

 この改良は、大がかかりなものであり、E 10は全く別のスタイルに変貌を遂げました。

 EF 64とEF64 1000よりもより変わっていると思います。

 まず前面により傾斜がつき、かつ流線形になりました。

 そして前面のバッファーがカバーで覆われ、その下のスカートも取り付けられています。

 また、それまでの側面には6個の独立したエアフィルタと真ん中に窓がありましたが、E 10.3は個別のフィルタ同士をつないだ様な造形になり、大きく印象が変わりました。

 ここまで来ると完全に別機ですね。

 なお、こちらはE 10.3と呼ばれています。

 E 10.3は私がもっとも好きな電機であり、また何両か保有しておりますので、またの機会に紹介したいと思います。

  

 この他、Wikipedia には記載がありませんが、前面手すりの有無、そして、雨樋の有無があります。

 BR E 10.1も長年の使用に伴い、更新工事が実施されました。

 上記のように、216号機から前照灯が2灯化されましたが、古い号機でも同様な改造を行ったものがあります。

 また、BR 141と同様、雨樋が撤去され、張上屋根になりました。

 雨樋の撤去でやや野暮ったかった外見がとてもスマートになったように思います。

 以前も書いたとおりで、日本の旧国とは逆で面白いですね。

 また前面に全周手すりを配置した機種は、撤去され、小型の手すりに変わっています。

 ただしドイツだけあって、これらの改造が施されないまま、使われた機種もいるようです。

 さらには輸送形態の変更により、Wendezug (プッシュ・プルトレイン) 対応改造がなされた機種があります。

 これにより同様の用途のBR 140.8やBR 141と交代しました。

 しかし寄る年波には勝てず、2013年にいったん引退しました。

 にもかかわらず、再度車籍を得たものもあり、誕生から60年以上経過しておりますが、現在、DBAutoZugにBR 115として引き継がれたBR E10が残っているそうです。

  以上、Wikipedia 独語版 DB-Baureihe E 10 より、引用、参照いたしました。

 それで模型の方ですが、E 10.1は実車の登場がHO勃興期に当たり、各社から模型化されております。 

 Modellbau-Wiki によりますと、もっとも古いのがFleischmannで1959年の初回発売です。(1337、E 10 134 雨樋有、大型前尾灯一体)

 私も写真でしか見たことがないですが、今の目で見ると流石に大時代的な出来であり、後のBR 110.3とは違い、実車にあまり似てないように感じました。

 この製品は、1965年で生産を終了したので、日本にはあまり入っていないと思います。

  次がTRIXの1964年製品(2243、E 10 138 雨樋有、大型前尾灯一体)ですが、製造が1969年までですので、私は見たことはありません。

 写真で見た限りではショートスケールの玩具的な製品に見えました。

 続いて、Märklinの1965年の初回発売製品(3039、E 10 238、後に110 234-2 雨樋有、前尾灯分離)になります。

 この製品は1965年から91年までの長きに渡り生産されたこともあり、ヤフオクやメルカリの常連で、お目にかかることも多いと思います。

 大時代的な出来ですが、感じは悪くないと思います。

 なお、中古を購入される際には、側面中央窓ガラスを紛失していることが多いので、注意して下さい。  

 その次はROCOの1976年製品となります。(4135A、110 147-6 張上屋根、雨樋なし、前尾灯分離)

 色替え製品のBR 140は時々見かけますが、こちらの方は生産時期が短かったためか、まず見ることがありません。

 かくいう私も、もう35年以上やっていますが、一度も見たことがありません。

 なお、パンタを現行に取り替えたものが、2009年に発売されており、こちらは持っています。

 当時のRÖWA/ROCO製品なので、ダイカストのシャーシーにプラのギアボックスの組み合わせです。 

 ROCOに続き、Jouefが1977年に発売しました(8863、110 234-2 雨樋有、前尾灯分離)が、これも少なかったようで、見たことはないですね。 

 欧州の場合、先行製品があるとそれが出来が悪くても、後継製品がないことがよくありますが、ドイツで最も一般的な電機BR E 10.1/110.1については、本当にひどいものでした。

 すなわち、次の製品は1990年のLiliput(Herpa-Liliput 141231等 E 10 216 青、雨樋有、前尾灯分離)でしたが、この製品の発売直後にLiliputは倒産したので、本製品は殆ど出回っていないと思います。

 またBachmann-Liliputは本形式を発売していません。

 よってまともに流通したのは、1991年のメルクリン(3344 110 249-0 青、3340 110 217-7Orient Rot 張上屋根、雨樋なし、前尾灯分離)でした。  

 まして2線式で言えば、こちらで紹介するROCOの1993年製品 233-4まで、ほぼ15年間、入手できませんでした。

 これはメーカーの怠慢以外の何物でもないと思います。

 更に言うならば、233-4は雨樋有りの1960年代スタイルであり、BR 110.1として最も一般的な張上屋根、雨樋なしの2線式は、何と、2010年(110 188-0、ただし雨樋なしでは少数派の大型前尾灯一体!)であり、最も一般的な張上屋根、雨樋なし、前尾灯分離型は、2011年(110 185-6、ただしO.Rot!)、本命とも言えるタルキスベージュは、それから4年後の2016年(259-9)、青塗装は未だにROCOは発売していないという、もう嫌がらせとしか言えない状態なのです。

 ROCOはよほどBR 110.1が嫌いなんでしょうね。

 では他社はどうかと言うと、実は似たようなもので、Märklinが2009年にE 10 190、青、雨樋有、前尾灯一体、2012年にE 10 231、青、雨樋有、前尾灯分離、TRIXは製品なし、Pikoが2017~2019年に51735、V.Rot、前尾灯分離、51736、大型前尾灯一体、タルキスベージュ、51742 タルキスベージュ、DBAG、大型前尾灯一体、51752青、1位側:大型前尾灯一体、2位側:前尾灯分離をそれぞれ発売したくらいなのです。

 要は、ドイツ人はBR 110.1の張上屋根、青ないしタルキスベージュ、前尾灯分離という、当たり前すぎる仕様に興味を示さないということが、この事実から明白にわかると思います。

 これは何もBR 110だけの話ではなく、このあたりが私個人としては大いに不満なところで、ドイツ型HOと疎遠になる大きな理由の一つになっています。

 あまり面白からぬ話はこれくらいにして、本題のROCOのBR 110 233-4ですが、雨樋付の1960年代後半から1970年代前半のスタイルです。

 前尾灯は216号機から採用され、後に既生産機も改造された、前照灯/尾灯が分離された一般的なタイプです。

 まず全体形状ですが、あくまで私の感想ですが、よく似ていると思います。

 初期スタイルのBR E 10.1としては、初めてまともなスケールモデルと言ってもよいのではないでしょうか?

 Märklin 3039は、1960年代製品ですので、全体型は悪くないものの、細部には不満が残りましたので。

 細部も、十分なディテールで、発売から37年経過しておりますが、実感的な台車や繊細な屋上機器など、私は大きな不満はありません。

 パンタも今日の高精度のものの嚆矢となりました。

 Kastenらしい、よい顔に見えますね。

 バッファーも金属で、取り付けておりませんが、運転室ドア手すりも金属なのが映えます。

 レタリングも美しいです。

 塗装ですが、この頃のROCO製品は、発泡スチロールで塗装が侵されるという、模型鉄道にとって致命的とも言える欠陥がありますが、幸いなことにこちらは大丈夫なようです。

 もちろん、従来より厳重に養生しておりましたし、遅ればせながら数年前にIMONの箱に取り替えましたけど。

  ボディはプラ、シャーシー、ギアボックスはダイカストです。

 走行は大変スムーズで、静かに走ります。

 あくまで我が家の平坦線ですが、力不足を感じることはありませんでした。

 なお、この製品はBR 140と同時に発売されました。

 BR 140の項でも書きましたが、模型的には、塗色以外、BR 110/140は全く同じとも言えるので、通常色替えで作られます。

 しかしROCO製品はこの両者でギア比を変えてあり、高速型がBR 110.1、低速型BR 140と作り分けてあるのです!!

 これはDR 112/143でもそうでしたが、恐らく他社は全くやったことはないと思います。

 また発泡スチロールによる塗装被害と並び、ROCOの致命的欠陥である、動力伝達部のカルダンボール割れによる走行不能ですが、幸いなところ本機については、現在発生しておりません。

 という訳で、この製品を含めたROCOのBR 110系は、大いに気に入っております。

 ただし上記の通り、この製品の最大の欠点は仕様です。

 繰り返しますが、この仕様は1970年代半ばまでのものであり、BR 110.1は、この後、雨樋が全面撤去され、張上屋根となりました。

 従って、使える客車は緑時代で、タルキスベージュはあまり似合わないかもしれません。

 結局、こんな用途の限られる一時的な仕様を模型化したせいで、論理的整合性のない、タルキスベージュや赤塗装は作られませんでした。

 この精度で良いので、どうか一般的な仕様を出していただきたいと思います。

<付記>

 ROCOのBR 110.1/140は、今から26年前に義理の妹が海外旅行で買って来てくれました!!

 当時、個人輸入など夢でしたし、日本にはあまり入らずまたすごく高かったので。

 でも、オーストリアでも相当高かったらしいです。

1994/6/11 入線

2020/10/24 記

2023/7/22 写真追加・一部更新

 

 

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