ドイツ連邦鉄道 DB 試験用蒸気機関車 BR 18.3 316号機 (Bachmann Liliput 104/01)

 今回はドイツ連邦鉄道の試験用蒸気機関車 BR 18 316について紹介します。

 BR 18.3は元々、バーデン大公国邦有鉄道が誇る高速四気筒式急行蒸機IVh型です。

 残念ながらDB試験機の諸元はわかりませんでしたが、原型機は、バッファ間距離23.23m、運転重量87.5t、図示出力 1950馬力、動輪径2.1m、最高速度はなんと140km/hという高性能機です。

 1918年から1920年までに20輌が製造されました。

 バーデンIVhについては以前、紹介しましたので、こちらも参照いただけましたら幸いです。

 さて、バーデンIVhの生産中の1920年、ドイツの鉄道はDRGとして統一されることになり、バーデンIVhは、急行用多気筒パシフィック機を表すBR 18の中のひとつ、300番台、BR 18.3となりました。

 しかしながら、同じ急行用四気筒パシ機バイエルンS 3/6(BR 18.4 - 5)とは異なり、DRGでは継続生産しませんでした。

 本機は当時としては画期的な高性能を発揮したものの、構造が複雑で、保守が大変だったからだそうです。

 そのため、特急ラインゴルト牽引などで高性能を発揮し、ほぼ全機が第二次世界大戦を生き残ったにもかかわらず、DB発足前の1948年には全機が廃車となってしまいました。

 しかしながらこれでBR 18.3の生涯が終わったわけではありませんでした。

 時あたかも第二次世界大戦の傷跡から立ち直ろうと復興のさなかにあった西ドイツでは、機関車需要が急増しており、とても試験用の機関車など充当できない状態にありました。

 そこで、DBが目をつけたのが、高性能機BR 18.3だったのです。

 結果として、18 316、319、323号機が選ばれ、改造を施され、各種の試験に使用されました。

 中でも有名なのは、下記ですね。

「1951年にこのうちの1両が試験走行において完全な特急編成を牽引して、こんにちに至るまで破られていないドイツにおける長距離走行記録を達成した。ハンブルク=アルトナ駅からフライラッシング(ドイツ語版)まで977 kmの区間を、1回の保守作業もなしに走り通した。この行程における最高速度は125 km/hであった。機関車は途中、水と石炭を補給するための停車をしただけであった。

1956年には18 316が、クーフシュタイン-ヴェーグル間(ドイツ語版)における電気鉄道車両のパンタグラフの試験で162 km/hを出した。このためIVh型は邦有鉄道に由来する蒸気機関車としては、王立バイエルン邦有鉄道S2/6型蒸気機関車を抜いて最高速の機関車となる。」

 以上、Wikipedia 「バーデン大公国邦有鉄道IVh型蒸気機関車」より引用

 早期に廃車となった原型機とは異なり、これらBR 18.3試験機は1960年代の終わりまで各種の試験に使われました。

 現在でも323号機が静態、こちらで紹介する316号機は、1995年に奇跡的に動態復帰しましたが、その後の重大な損傷の結果、現在は静態になっていると聞いています。

 さて、以前の記事のようにBR 18.3の模型としては、こちらで紹介する1982年のLiliput製品が長らく唯一の量産製品でした。

 また、色違い等のバージョンが非常に多いことも特徴です。

 私の記憶している限りでも、原型機で青、灰色、DRGデフなし、DRGデフあり、DRGデフあり(ライヒスアドラー)、そして、今回こちらで紹介するDB試験機316及び323が出ておりました。

 この試験機はオリジナル機とはだいぶ形状が異なるためか、現在でも他社は模型化しておりません。

 さてBR 18.3ですが、当時のLiliput製品に共通しているように、1982年当時としては驚異的とも言える大変繊細な出来であり、外見上では昨今の製品に比肩しうる製品と思います。

 当時、欧州型HOでも縮尺が固まらず、HAGやFleischmann、Rivarossiなどが、明らかにオーバースケールの製品を作っていた中で、こちらは縮尺的に正しいと思います。

 また、プラ製の車輪全盛時代に、すでにダイカスト製車輪を採用し、それもシャープな出来なのも特筆されましょう。

 このような特徴を持つ同モデルですが、反面、後付部品が非常に多く、それも欠品や破損が少なからずありました。

 実は私の所有品も新品なのですが、シリンダ後方のステップ部品が欠品でした。

 販売店さんが取扱商社に尋ねてくれ、「なんとしても入手する」というお話でしたが、やっぱり無理だったようです。

 このあたりは、部品販売を行っているメルクリンやロコとは大分違いますね。

 また、部品の精度がそれほど高いわけでなく、取り付けが不安なこと、プラの材質がプアーなので見劣りする欠点もありました。

 形状が特殊なので仕方ないですが、煙室扉上部の前照灯はダミーであり、点灯しません。

 シリンダ周り。

 40年前の製品とは思えないくらいよくできていますね!

 シャープなダイカスト動輪。

 当時としては画期的だったと思いますし、現代でも十分通用しますね。

 レタリングはBachmann版なのできれいです。

 各部のディテールも豊富ですね。

 シリンダ脇の名板はいいですね!

 通常型とは大分作り変えてあるように思います。

 パイピングやハンドレールもシャープです。

 挽き物の汽笛はいいですね。

 独特のキャブ。

 バーデン機は屋根が平らですね。

 キャブ脇のハンドレールも実感的です。

 それで本機ですが、走行は良くありません。

 走行装置はこの当時の欧州形では一般的であったテンダー駆動ですが、異音が出たので、分解して初めてわかりましたが、Bachmann-LiliputのBR 18.3はゴム動力でした。

 要はモーターからの動力伝達にゴムベルトを使っており、モーター動力をベルト駆動で下部軸に伝え、下部軸からウォームギアで第1、第4炭水車車軸に動力を伝えています。

 こんなプアーな構造のため、走行性能が良くないのだと思います。

 ゴム動力は遠からずだめになってしまうでしょう。

 これには正直なところ驚くと共に、大いに失望しました。

 私は耐久性を非常に重視しますので、こんな経年劣化で切れてしまうようなベルトは大嫌いです。

 おまけによく使われるOリングタイプではなく、滑り止めの歯付きのベルトなので、切れてしまったらそこでおしまいでしょう。

 狭い空間で動力伝達を行うためでしょうが、もしはじめからこの構造だと知っていたら私は購入しなかったでしょう。

 欧州型のこの手の情報は皆無に等しいので、本当に困りますね。

 その後わかったことですが、LiliputのBR 18.3は、オーストリア生産の頃、ゴム動力ではなく、 普通のギア駆動だったそうで、LiliputがBachmannに売却され、中国生産になってから、このようなプアー極まりない構造になったらしいです。

 なんでこんな改悪を行うのでしょう、私にはさっぱりわかりません。

 決して安価なものではありませんが。

 もっとも、オーストリア時代の動力も、経年でギアが空回りするトラブルが知られていますけど。

 

 珍しい車種ですし、幸いなことに炭水車は台車まで一体成型のかぶせるだけなので、他の動力に入れ替えようと思ったのですが、こちらも今回初めて気づいたのですが、BR 18.3の炭水車の台車は、なんと前と後ろで軸距が異なる特殊なものであり、他社から発売されている動力への換装は難しいことがわかりました。

 転車台に乗せるために、炭水車全長を短くする必要があり、台車の軸距が前後で違うという記事を見たことがあります。 

 これもがっかりです。

 軸径2mmならMPギアへの変更も可能ですが、やはりモーター軸からMP軸への伝達が大いに問題ですね。

 すごいと思ったのは、炭水車の構造です。

 固定用ネジ隠しのプラ板を除き、台車枠まで含み、ダイカストの一体成型となっています。

 欧州型の一体成型技術は特筆すべきものがありますが、これは本当にすごいです。

 一体どうやって脱型したのでしょうか?

 話を戻しまして、これ以外にも走行中部品がすぐに取れてしまうという欠点があります。

 私のも走らせているうちにネジ止めされている先台車が、外れてしまったことがあります。

 ネジ自体も他と比べると細いもので心もとないです。

 というわけで本製品は、飾るのには良いと思いますが、走らせて楽しむタイプの製品ではないように個人的には思います。

2004/3/27 入線


2018/9/19 記
2019/12/6 写真追加、内容一部修正の上、再録
2020/9/13 写真全面更新、文章修正、Blogger用に再構成


 

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