ドイツ国鉄 DRG マレー式貨物用蒸気機関車 BR 96 019号機 (TRIX 22509)
ドイツ国鉄96型は、実用化されたドイツ最大のマレー式タンク蒸気機関車です。
ますます増大する輸送需要に対応するための大型機関車として、1台の機関車に複数の走り装置を持つ、いわゆる複式機関車が20世紀の初頭に考案され、実用化されました。
このうち有名なのが、同じ方向に走り装置を持つマレー式で、全世界で多数が使われました。
そんな複式機関車が一番活躍したのは、許容軸重が大きく線形が大きく取れるアメリカ大陸で、世界最大の実用蒸機Big-Boyや高速旅客機チャレンジャーなどが製造され、大活躍しました。
その一方、欧州や日本では勾配線区の軸重軽減や急曲線通過対策として用いられましたが、複式故の整備や保守の手間もあり、優秀な単式機関車の登場や何よりも電化の進展の結果、早々に消える運命にありました。
その点興味深いのは狭軌線で、こちらでは最末期まで複式機関車が多用され、DBでは1960年代末まで(Württembergische Tssd、後に BR 99.63、マレー式)、DRではなんと1990年頃まで現役でした。(Sächsische IV K、後に BR 99.51-60、マイヤー式)
余談ですが、後者はドイツで最も多く作られた狭軌機関車で、96輌が1892-1921年に製造されました。
さて、今回紹介するBR 96型はドイツ国鉄で使用された複式タンク機関車としては最も大きく、またある意味、もっとも有名な機種と言えるでしょう。
BR 96(2次車)主要諸元
バッファ間距離:17.7m、運転重量:131.1t、軸重:16.4t、過熱式四気筒、ボイラー圧力:15bar、動輪径:1,216mm、出力:1,199kW、最高速度:50km/h、40km/h(25パーミル勾配)
BR 96はバイエルン王国邦有鉄道 Gt 4/4×2型として、有名な四気筒急行用蒸機S 3/6型を設計したJAマッファイ社のアントン・ハンメルにより設計され、1次車が1913~14年にかけて15輌、2次車が1923~24年にかけて10輌製造されました。
ちなみにタンク機ではBR 85(1E1)が16.3m、133.6t、BR 95(1E1)が、15.1m、127.4t、高速機BR 61 001が18.475m、129.1tとなりますので、かなり大きいですね。
また、本線用急行機関車BR 01の運転重量は108.9t、高速試験機BR 05が129.9t、最大の貨物機BR 45が125.5tですが、これらは炭水車を除いた重量なので、約60tを加えた数字が同一条件となります。
1次車と2次車では仕様が僅かに異なりますが、後に1次車も2次車と同一の仕様に改造されたようです。
BR 96はバイエルン地方の勾配線区に投入され、優秀な成績を収めたようですが、日本と同様、勾配線区の電化や、保守の煩雑さもあり、案外短命でした。
すなわち、6輌が1945年までに廃車、1輌が戦災廃車となりました。
残った18輌も西側ではDB発足前の1948年まで、DRでも1954年に廃車となりました。
廃車の時期が早かったこともあり、ほとんどの車種が保存されていると言っても過言ではないドイツにおいても、BR 96は現存しておりません。
以上、Wikipedia Bayerische Gt 2×4/4 参照
さて、実車は必ずしも成功とは言えなかったBR 96ですが、ドイツ最大のマレータンク機ということもあり、現地での人気は高いようで、古くから模型化されております。
有名なのは高級ブラス製品で、Metropolitan、Flugulex、Lemacoなど、著名なメーカーが古くから何度も製品化したようですね。
一方の量産品は、Modellbau-wikiによりますと、HOではRivarossiが、NではArnoldが共に1981年に発売しました。
当時としては、驚異的ともいえる出来ですが、Rivarossiは当時製品の常としてオーバースケールです。
実車と同様、バリエーションが非常に多かったのですが、当時の常で日本では非常に高価であり、簡単に買えるような代物ではありませんでした。
さて、HOの量産品は長らくRivarossiの独壇場でしたが、1996年にこちらで紹介するMärklin製品が発売されました。(アナログ 3396、デジタル 3796、ハモ(DC 2線式)8396)
当時のメルクリンの標準的な構成のボイラー、台枠、動輪がダイカスト、キャブがプラで、DCMモーターで後ろ側の4軸を駆動します。前4軸はフリーです。
もちろん1/87スケールですので、Rivarossiに比べると小さく感じましたが、Rivarossiは見ただけで実際に並べたことはありません。
なおMärklin以降、量産品では新規発売されておりません。
それだけ完成度が高かったのかもしれませんね。
Rivarossi同様、Märklin/TRIX両社からも、多数のバリエーションが発売されました。
こちらで紹介するBR 96 019号機は2013年に発売されたTRIXブランドのもので、DCCフルサウンド仕様になっています。
模型自身は1996年製品と全く変わっていないようですが、あくまで私感ながら、実物の持つ重量感をよく再現していると思います。
構造的には、ボイラーと台枠がダイカスト、キャブがプラという当時の同社の一般的な構造となっています。
ただし、塗装が良いので、プラとの質感の差はそれほど感じません。
でも、もし2019年に模型化したなら、恐らく、全部をダイカスト製にしたでしょうね。
メルクリンの黒は本当にいい感じです!
反面、ライトは電球のようです。
私は、マレー機ということでサウンドに期待しましたが、メルクリンの一般的な二気筒機のものでした。
もっとも、四気筒とは言っても、シリンダは90度ずつの位相で動くのではなく、2個ずつ動くから二気筒と同じ音になるようです。それにBR 96は実車が現存しないので、音をサンプリングすることができません。
私的には、超低速において動輪とドラフト音がシンクロしないことや、DCMモーターの宿命でノイズが高いのが残念ですし、出来れば8軸駆動にして欲しかったような気もします。
模型自体は20年以上前の製品ですので、現在のものと比べてしまうと、ディテール面がやや見劣りするようにも感じますが、実用的にはこれでも十分と思います。
また、炭庫後方の梯子やハンドレールに金属が使われているのは、直線が出てすごくいいと思います。
その一方、当方のように、梯子は曲がりやすいのでご注意ください。
メルクリン伝統のダイカスト動輪です。
とてもいい感じに思います。
初回製品は弁装置がメッキでしたが、こちらは実物のような色に変更されているのも、好感が持てますね。
なお、運転室の梯子は曲線通過のために、かなりはみ出しています。
随分昔のことですが、当時所属していた模型クラブのレイアウトで、駅にぶつかったことがありました。
当時、8396を持っていたんですね。
こちらが初代製品です。
発売当時に趣味界の大先輩に個人輸入していただきました。確か、35,000円だったような記憶があります。
上記のように、銀メッキのロッドや弁装置だったのと、今のと比べると、ボイラーとキャブの質感に差があるように感じます。
密閉式のキャブ。
この当時としては異例だったのではないでしょうか?
でも夏は大変だったでしょうね。
古いところもありますが、この製品は、感じがすごくよいのでお気に入りの一台です。
ところで、これ実はメルクリンとTRIXを間違えて買ってしまったのは内緒です。(爆)
2013/6/21 入線
2015/8/27 記
2019/12/8 写真及び文面 全面更新
2020/8/14 Blogger用に再構成
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