ドイツ国鉄 DRG 旅客用蒸気機関車 BR 38.10-40 2609号機 (Fleischmann 4160)

 今回はドイツで最も大量に作られた旅客用蒸気機関車で、また50年以上の長きに渡り、ドイツ蒸気機関車終焉まで活躍した名機、BR 38.10-40について紹介したいと思います。

 BR 38.10-40は、プロイセン王国邦有鉄道が開発したP 8形旅客用蒸気機関車です。

<BR 38.10-40 主要諸元>

 型式:2'C h2、バッファ間距離:18,585 mm、運転重量:76.69 t、動輪径:1,750 mm、軸配置:2C1、軸重:17.36 t、過熱式2気筒、出力:868kW、ボイラー圧力:12bar、最高速度:前進 100 km/h、後進:50 km/h(原型テンダー)、85 km/h(船底型テンダー)

  BR 38.10-40 は、1906年 - 1923年までの間、ドイツ諸国で総計 3,556 (3,561) 輌が製造されましたが、ルーマニア等で製造された仲間を加えると 3,948輌というとてつもない数字となります。

 P 8は失敗したP 6 (BR 37) に変わり、ロベルト・ガルベの設計で製作されました。

 ちょうどこの頃実用化された過熱式を採用しておりますが、それ以外は堅実な設計でした。

 本機はいくつかの欠点もありましたが、それを上回るメリットがあり、またちょうど第一次世界大戦期にもあって、ドイツだけで4,000輌近くが量産されました。

 これは旅客用蒸機としては世界一の数字だそうです。

 本機の欠点としては最高速度が95km/h以上になると原因不明の振動が発生し、それ以上に速度を上げられないこと、軸受が過熱すること、炭水車に問題があり、水漏れすることや後進時の最高速度が50km/hまでしか出せないこと等が挙げられますが、反面、燃費が良く、非常に使いやすかったようで、現場では好評を博し、ラインゴルトから貨物列車まで多種多様な列車を牽きました。

 そして作られた約4,000輌のうちの500輌以上が、製造から50年以上の長きに渡り、使用されました。

 端的な例として、本機の後継機として作られた1-C-1のBR 23ですが、DRG機は2両のみ、軸配置以外は全くの改設計となったDB機は、既に電機やDLの時代となっていたこともあり、105輌の生産にとどまりました。

 そのDB BR 23は、1975年に引退しましたが、それはP 8の引退よりわずか一年後のことでした。

 このように30年以上の長きに渡り、4,000輌もの大勢が作られた本形式は、Länderbahn(プロイセン、バーデン)、DRG、DB、DR、諸外国でそれぞれ多数のバリエーションがあります。

 これらの内、特徴的なのは、上記の炭水車の問題を解決すべく、廃車になった戦時型貨物機BR 52の船底テンダー(Wannentender)と交換したものです。

 どう見てもアンバランスでかっこ悪いですが、この交換により、後進時の最高速度が85km/hに向上したこともあり、DB機の多数が炭水車交換を行いました。

 DRにおいても同様にBR 17の炭水車と交換したものがあります。

 1968年のコンピューターナンバー化の時点において、DBにおけるBR 38.10-40の残存車は1,000輌を切っておりました(Die P8-Baureihe 38.10-40 Sonderausgabe IV/95によると159輌)ので、型式番号は038となりました。

 ところで、コンピューターナンバーでは下三桁は現車のものを使いますが、P 8は全部で4,000輌弱が製造されたため、番号が重なるものが出てしまいました。(例:473、1743)

 これらについては重複を避けるために下3桁を廃車された号機の空き番号へ変更したものがあります。

38 2383→038 382、38 2770→038 769)

 BR 38.10-40はPreußische P 8(プロイセンのP 8)と呼ばれていたそうで、向こうの説明を見ても、制式名 BR 38.10-40ではなく、邦有鉄道型式で呼ばれることが多いようです。

 以上、Wikipedia 日本語版 プロイセン邦有鉄道P8型蒸気機関車 より、引用、参照いたしました。

 さて、あまりも有名なP 8ですが、Modellbau-Wiki によりますと、模型の方は案外少ないかもしれません。

 もっと古いのがLiliputで、Modelbauwikiによると1964年初回生産だそうです。

 さすがにいかにも昔の模型といった感じです。

 ところで、この世界の大先輩からお伺いしましたが、古いLiliput製品にはダイカストが経年劣化で崩壊する(シーズンクラック)ものがあるそうです。

 実際、動輪がバラバラに割れたBR 38を見せてもらいました。

 全ての製品が崩壊するわけでもなさそうですが。

 このダイカストの劣化は、合金鋳造時に発生する不純物(鉱滓)をきちんと捨てず、再利用してしまうことが原因です。

 このため、合金が腐食して崩壊してしまうそうで、海外製品はもちろん、日本製品でもかつてはよくありましたが、大変残念なことに、最近の鉄道模型、ミニカー、飛行機モデルでも特に中国製品において発生しております。

 それも安価なものではなく、高額商品で起きているので救いがありません。

 シーズンクラックに対する防衛手段は皆無ですので、諦める以外にはありません。

 次に発売されたのは1967年初回生産のMärklinの製品です。

 こちらは、いかにもメルクリンらしい製品であり、ごついですが、実用性は高そうです。

 邦有鉄道仕様や二線式を含め、多様なバリエーションが出ておりました。

 さて、上記の古典2種類の次に出たのが、こちらで紹介するFleischmann製品で、1980年のことになります。

 最初に出たのがDRG、原型、箱型テンダーのこちらであり、この後、プロイセン王国邦有鉄道仕様、DRGデフなし、DRG Rhur快速、DB Vannentender、DB Witte、欧州各国など、各種の仕様が多数発売されております。

 Märklin、Liliputからは玩具的な印象を受けましたが、こちらはご覧の通り、かなりのハイディテールを誇ります。

 シャープな動輪やロッド周り、配管にはとても良い印象を持ちます。

 こちらは恐らく初回製品ですので、黒は成型色のまま、前側連結器が特殊、炭水車連結器はNEM362になっていない。赤の色合いが異なる、レタリングが白で、きれいなのですが、車番の書体と大きさがいまいちなどの特徴があります。

 2020年の今日、未塗装と言うと奇異な感を受けますが、この当時はこのような製品が多くありました。

 と言いますか、塗ってある方が珍しかったかもしれません。

 その塗装も今日のようなものではありませんでした。

 全体形はよく、感じを掴んでいるように思います。

 細部はとてもよく出来ていると思います。

 P 8を特徴づけているのが、不均等配置の動輪です。

 重量配分がいまいちな感じがしますが、滑ったりしなかったのでしょうか?

 さて、この製品は箱がだめです。

 まだブリスターパックになる前の時代ですので、発泡スチロールの下箱に寝かせて入れるのですが、取り出しの指のかかる部分が切り欠いてあります。

 しかしその部分には、繊細なランボード下の配線や配管があるのです。

 私のはイギリスから取り寄せた中古ですが、案の定、その部分の配管や配線が折れてしました。

 これは当然の帰結であり、こんな微妙な場所に指のかかるような切り欠きを作ること自体、間違っています。

 更には、FLMのプラは接着が効きません。

 瞬接でも、とりあえずついているだけで、接着力は期待できません。

 よって、修理はしたものの、すぐに壊れてしまいます。

  これでがっかりしました。

 FLMですので、動力はテンダー駆動です。

 伝統の3極円形モーターで、スパーのみでテンダーの3軸に伝導しております。

 スパーのみの伝導は、ウォームを介するよりも、抵抗が低く、実感的ですが、今の目で見ると、モーターの性能が悪いので、走りは普通~やや重いと言ったところです。

 特に私のは重い感じがありましたが、これはコミュテーターに付着していたカーボンを取り除くことにより、大分改善しました。

 この際、炭水車の車体は爪ではまっているので、非常に外しにくいです。

 これは他社のようにネジ止めとして欲しいところです。

 また、炭水車のステップが繊細で折れやすいので十分注意して下さい。

 折れてしまうと接着は効かないので。

 上記の通り、4160の後に多数のバリエーションが出ましたが、基本構造は一緒です。

 ただし、塗装やレタリングは格段に進化しています。

 さて、BR 38はこの後、Märklin/TRIXから完全新規製品が出ました。(2007年?)

 こちらは前作とは全く異なる繊細なモデルです。

 一方、古くからのファンにとっては、メルクリンらしくないとも言われているようで、牽引力も低いそうです。

 こちらは持っていません。

 ところでうちのBR 38はみんな訳ありですので、もう一台欲しいところです。

 しかし、メルクリンの改良製品の中古はほとんど見ることがありません。

 FLMのアナログLänderbahn仕様は見た目、美しいので欲しいかも。

 1995/5/1 入線

 2018/7/4 記

 2019/12/7 写真追加の上、再録

 2020/8/28 写真全更新の上、Blogger用に再構成


 

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