ヴュルテンベルク王国邦有鉄道 K. W. St. E 貨物用テンダ式蒸気機関車 K型 1806号機 (Märklin 31021-02)

 今回は、ヴュルテンベルク王国邦有鉄道 K. W. St. E. の勾配線用の貨物用テンダ式蒸気機関車K型について紹介します。

 K. W. St. E. K型は勾配線用の貨物機関車で、量産されたドイツの蒸気機関車で唯一の1F機です。

<Württ K 主要諸元>

 型式:1'f H4V、バッファ間距離:20.19m、運転重量:108.0t、軸重:16.0t、動輪径:1,350mm、軸配置:1F、過熱式二気筒、出力:1,412kW、ボイラー圧力:15bar、最高速度:60km/h

 1917-1924年の間、エスリンゲン社で合計44両が製造されました。

 Württ Kは、有名な勾配線区であるGeislinger Steigeとバーデンの黒い森鉄道での運用のために作られました。

 なぜ1F軸配置が採用されたかと言うと、当時、同じ軸配置のオーストリアの kkStB 100が成功を収めていたことと、軸重を16tに抑える必要があったからのようです。

 本機は、5パーミル勾配で1,310t列車を40km/hで牽引するように、勾配線区では、期待通りの強力かつ優秀な性能を発揮したようですが、丘陵地では良いものの、平地での速度が遅く、燃費が悪いと言う欠点がありました。

 それに何より、運用を想定した勾配線区の電化や、路盤改良による許容軸重の増加により、より軸重の大きい5軸蒸機が入線可能になったことにより、それ以上の生産は行われませんでした。

 このあたりは同時期の勾配線用大型マレー機BR 96と状況が似ていますね。

 それでも1933年のGeislinger Steigeの電化後においても、1両が残されたそうです。

 電気機関車が故障した場合の予備用でしょうか?

 さてWürtt Kは、1920年のDRG発足に際し、BR 59となりました。

 そして、第二次世界大戦に相前後して、オストマルク地域(東部オーストリア)、そしてユーゴスラビアやハンガリーへ移動しました。

 第二次世界大戦の終結後、ドイツに残った機種、あるいは帰国した機種は、DBに移管されましたが、早くも1953年に用途廃止となりました。

 ÖBBには30輌が残り、Rh 659となりましたが、殆どは売却され、最後に残った4輌は1957年に廃車になりました。

 その他、ハンガリー国鉄 MAVや、ユーゴスラビア国鉄 JZ、ソ連国鉄 SZDに渡ったものもいました。

 以上、Wikipedia Württembergische K より引用、参照いたしました。

 いずれにしても、特殊な形式だったWürtt Kは、それなりの数量が作られた割には、同時代の機関車に比べて、十分に活躍することなく消えたと言えましょう。

 実際、Württ Kの写真は非常に少なく、特に運用中のものはあまり見たことがありません。

 さて、Württ KのHO模型ですが、早い時期に消えた特殊な形式で、また他の製品の部品がほとんど転用できないこともあり、決して多くはありません。

 Modellbau-Wiki Württembergische K によると、最初に模型化されたのは1987年のModellocoのホワイトメタルキットでした。

 同社にとっても初期の製品に当たります。

 機関車駆動で、テンダーはFleischmannのBR 38.10-40を転用するものもありました。

 実は私もかつて、メーカー完成品?を持っていました。

 この製品はマシマのモーターを使うなど、奢っているところもありましたが、何と言っても欧州の一般的なKleinserien製品ですので、非常に高額ながら、出来の方は荒いものであり、私には満足しうるものではなく、早々に手放してしまいました。

 珍しい三線式でしたが、逆転機が壊れてしまったこともあります。

 なお、Modellocoの名誉のために付言しますと、このキット自体は決して粗末なものではなく、丁寧に組めば、満足しうる出来になると思います。

 もちろんそれには自分で補強等しなければなりませんが。

 次に発売されたのは、当時より珍しい機種を選んで発売していたRivarossiで、1993年です。

 同社の常にて、非常に多くのバリエーションがありました。

 機関車そのものは似ておりますし、繊細なディテールですが、この製品には致命的な欠陥があります。

 というのは、この機関車は炭水車駆動なのですが、モーターから車軸への伝導がゴムベルトなのです。

 それも一般的なOリングではなく、キャタピラのような特殊なベルトです。

 ゴムは必然的に経年劣化しますが、こんな特殊な形状のベルトはまず入手できません。

 したがって、切れてしまったらそこでおしまいです。

 なお、Rivarossiは、私も静態覚悟で1両持っていますので、またの機会に紹介したいと思います。

 それで、今回紹介するMärklinですが、初回発売は2000年で、青/灰塗装の1801号機だそうです。

 同時にTRIXからも発売されています。

 この製品は異彩を放つためか、爾来、邦有鉄道各色、DRG、DB、ÖBB仕様など、沢山の塗装違いが発売されました。

 またサンドドームの長いものとこちらの短いものも生産されています。

 実車は決して大活躍したとは言えませんが、模型の世界では比較的優遇された形式と思います。

 それでこちらの1806号機ですが、2012年の発売で、2000個限定の"Stuttgarter Bahnhof"セットとして、Württ C (BR 18.1) との2両セットで販売された限定商品です。

 私はドイツの模型店で、1806号機のみセットバラシの新品で入手しました。

 この機関車にはかねてから興味を持っていましたし、それまで入手したBR 59の2台が、いずれも問題ありだったので、嬉しかったです。

 1920年頃のスタイルとのことですので、金線とかは入っていない地味な塗装です。

 ヴュルテンベルクは緑が独特ですね。

 なにか米軍戦車のオリーブドラブのようにも見えます。

 1806号機は1918年製で、メーカー製番:3833、K.W.St.E K 1806号機、後にDRG 59 006→ÖBB 659.06となったそうです。

 上のレタリングにも、エスリンゲンの製番が書いてありますね。

 最終的にはBR 59の最後を飾り、1957年に廃車になりました。

 2000年代のMärklinスタンダードで、小型モーターで一軸をギア駆動し、残りにはロッドで動力を伝える方式です。

 炭水車も含め全てダイカスト製なので、質感のばらつきがなく、塗装の質が良いことも相まって、とてもいい感じに仕上がっています。

 Märklinの常で、車輪が全てダイカストなのは大変良いと思います。

 ボイラー周りは配管もあまりなくあっさりしていますね。

 レタリングもきれいです。

 ディテールは標準的なものですね。

 私はこれで十分と思います。

 キャブの運転室側。

 独特の形状ですね。

 梯子はドイツ型の中でも同じK.W.St.E のC形(BR 18.1)に似ています。

 キャブはダイカスト製のため肉厚で、少々ごつい感じもします。

 下回りの赤というかマルーンも独特ですね。

 リベットは良い感じです。

 テンダーはヴュルテンベルクのwü 2'2' T 20と思われます。

 Württ Kはこの他にも、プロイセンの炭水車 pr 2'2' T 21,5 や pr 2'2' T 31,5を装備したようです。

 走行の方はいかにも現代のメルクリンと言った感じで、静かにかつスムーズに走行します。

 一方、少し揺れるもの通例とは言え、残念です。

 mfxフルサウンドですが、BR 59は当然のことながら実車が存在しないため、他の蒸機と同じ音です。


 さて上記のように、この機関車はドイツから個人輸入しましたが、テストを行ったところ、mfxなのにレールに乗せても全く反応しませんでした。

 販売店に問い合わせましたが、テストでは問題なかったと言うばかりで全く要領を得ず、仕方なく分解点検したところ、何と炭水車内のデコーダーが上から押されて、ピンプラグが外れていました。

 恐る恐る取り付けたところ全く問題なく動作し、事なきを得ました。

 壊れていたら最悪、修理の手立てもないところでしたので、ほんと命拾いをしました。

 ただし、この経験も結果的にデジタルから遠ざかる大きな一因となりましたね。


 それはともかく、もともと短命な上、こちらの姿は1920年頃の限定されたものだったようですが、模型の世界では、Ep.1等の旧型貨車を牽かせて活躍させたいものです。

2020/7/19 記

2025/8/25 写真配置変更、一部加筆修正

 


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