ドイツ連邦鉄道 DB 復水式戦時形テンダ式貨物用蒸気機関車 BR 52 Kon 1860号機 (Märklin 37175)
今日はドイツ連邦鉄道 DB の珍機種、復水式戦時形テンダ式蒸気機関車 BR 52 Konを紹介します。
BR 52 Konは、ドイツ国鉄DRGが開発した復水式戦時形テンダ式貨物機関車です。
<BR 52.19 主要諸元>
型式:1'E h2、バッファ間距離:27.535m、運転重量:89.1t(炭水車除く)、軸重:?、過熱式二気筒、出力:1,620PS、ボイラー圧:16bar、最高速度:80km/h、動輪径:1,400mm
以上のDATAは、Dampfmaschinen und Lokomotiven Baureihe 52 Kon T16 より引用しました。
以前もご紹介しましたが、第2次世界大戦中の輸送力増強のため、戦時急増されたBR 52は、合計6,100輌以上が製造されました。
これらは各戦線に投入されましたが、中でも水の少ない南部ロシアのステップ地方で使用するために作られたのが、こちらのBR 52 Konです。
蒸気機関車は、ボイラーで水蒸気を発生させ、その力でシリンダーを動かします。
普通、シリンダーを出た蒸気は捨ててしまいますが、一度使った水蒸気を空冷塔で再度凝縮して水に戻し、再利用するのがこの復水式機関車です。
火力発電所では高価なボイラー水を再利用するために、このような再冷装置を持っておりますが、当然のことながら冷却源(冷却水=海水等)が必要となるため、設備が過大となり、重量制限を受ける蒸気機関車ではこのような例は殆どありません。
実際、BR 52Konで使用された復水式テンダーは5軸ないし4軸であり、こちらの1860号機が装備している5軸型3'2' T16 Konは、連結長さが27.5mと非常に大きなものになり、標準機とは変わった威容を示しています。
最初、5軸型の3'2' T16 Konを装備しましたが、全長があまりにも長すぎて、既存の転車台に乗らないため、長さを減じた4軸型2'2' T13.5 Konに変更されました。
それでもこのBR 52 Kon T13.5の長さは、26.205mあり、標準型のBR 52の22.975mよりは、3.23mも長くなっております。
Wikipedia DR-Baureihe 52によると、BR 52 KonはHenschelで1850-2027までの177輌が作られました。
しかし、Dampfmaschinen und Lokomotivenでは、
5軸テンダーT16装備:1850~1986
4軸テンダーT13装備:1987~2021
となっておりました。
さて、Modellbau-Wiki によりますと、BR 52 Konですが、特殊な機関車ながら、既に1973年にPikoが製品化 (2006号機) しております。
この模型は日本の模型店でも扱っていたので、ご覧になった方も多いと思います。
長らくPikoの独壇場でしたが、Märklinが1997年にBR 52の派生形として1911号機を発売しました。 (デルタ:34171、デジタル:37171)
それから二線版をTRIXが発売するなど、この製品のバリエーションモデルが発売されましたが、こちらの37175はmfxフルサウンド機として2013年に発売されたものです。
標準価格は449ユーロでした。
模型の方は、1994年代製品のBR 52に復水テンダーを追加したものです。
単に炭水車を交換しただけでなく、シリンダーからの排蒸気を回収する配管等、BR 52 Konならではの装備が追加されております。
ただし、走りに影響する部分は、適宜、省略されているようです。
これらの部品はプラ製ですが、ボイラー及びテンダーのいずれもが定評あるダイカスト製ですので、グレードの高い塗装と相まって、ご覧のように重量感がある好ましい仕上がりとなっていると思います。
なおキャブやテンダー台車枠、ディテール部品は従来通りプラ製です。
メルクリンのHPによると、37175の設定は1950年頃のDB時代だそうです。
そのためか、Witteデフを装備しています。
なお、Dampfmaschinen und Lokomotivenによると、こちらの1860号機はBw Duisburg-Wedauで1951年11月14日に廃車とありました。
BR 52 Konは第2次大戦中の機関車ですが、路線設備の整備されているドイツでは、復水式機関車はほとんど有効性がなかったため、戦後、早々に一般型に改造されたり、廃車になったようですが、それでもDBで1949年に運用されている写真を見たことがあります。
BR 52 Konの仲間にはベルギーやポーランドなど、他のヨーロッパ諸国に渡ったものもいたようで、Pikoが模型化していますね。
機関車公式側です。
右側の配管類や煙室上部への配管が、標準型とは異なっています。
配管類はプラ製ですが違和感はないですね。
ダイカスト製のボイラーは、艶があって重厚感がありますね。
テンダーからキャブ下の大きな配管は、排蒸気を空冷塔へ送るためのものでしょうか?
非公式側は標準型とそれほど差異はないように感じます。
先輪や動輪、弁装置や足回りは従来のBR 52と全く同じです。
ダイカスト製のシャープな車輪には好感を持っています。
デフもブリキ製と思いますが、金属製だけに薄さと質感は勝っていますね。
表記類は少ないですが、きれいですね。
テンダーへ行く太いパイプは、蒸気の移送管でしょうか?
キャブは側面の前方の窓が省略されたÜK(Überkreig)タイプです。
BR 52は冬季の東部戦線での使用のため、密閉型キャブになっています。
いつものことですが、夏や暑い地域では大変だったでしょうね。
キャブの後方から。
Wikipediaによると、本機は視界不良のため、後退運転ができなかったとありますが、この写真を見ると理由がわかりますね。
確かに炭庫が邪魔をして後方は全く見えません。
誘導員の合図に従って後退するのが関の山ですね。
3'2' T16 Konテンダー諸元
バッファ間距離:13.695m、運転重量:74.3t、軸重:15.55t、石炭積載量:9t、水搭載量:16m3
EJ Danmpflok-Report Band No.3によると、3'2' T16 Konテンダーは137両製造されたそうです。
復水式蒸機の廃車後、うち66両が、DBの大型貨車KKt 44、KKt 46、OOt 53に再改造されたとありました。
模型のテンダーの重量もかなりありますので、実際には運用上、結構な足かせになったことが想像できます。
それにしても空冷塔を含んだテンダーは巨大ですね。
ありていに言えば、ビルの屋上の空調用のファンを載せているわけですし。
メルクリンのBR 52 Konでちょっと残念なのは、ボイラー前面下部のステップ?の足が設計ミスでシャーシーから浮いてしまっていることです。
最初、何かの部品が欠品なのかと思いましたが、メーカー写真等を見た限りでは、元々、このような形になってしまっているようですね。
なお、私のは先台車の担いばねが片方折れていました。(涙)
取りあえず修理はしましたが、天下のメルクリンでも破損や欠品はよくあります。
私は個人輸入及び国内販売店の両方で、もう何度も経験しました。
この手のトラブルは海外製品にはつきものなので、こういうものだと思う以外にはないですね。
なお、この部品は後ほど販売店が送ってくれました。
助かりました。
走り装置の方は、以前のBR 52そのままです。
急曲線対応のため台枠が二分割になっています。
これまた定評のあるDCMモーターから、1990年代までの製品によく使われた平ギアで全ての駆動軸に動力を伝達する方法です。
近年の製品に比べますと、金属ギアを多用する分、騒音は高くなりますが、モーターに無理な負荷がかかりにくく、またスムーズに走るので私はむしろこちらの方が好きです。
また、私の拙い経験では、メルクリンの蒸機は現在のウォームギア+ロッド駆動方式よりも、昔の全軸ギア駆動方式の方が走行時の揺れが小さい気がしますね。
それで、37175はmfxフルサウンド機なのですが、サウンドには驚かされました。
と言いますのも、この機関車はドラフト音がしないのです。
運転音はテンダーの空冷塔ファンの回転する音が中心であり、まるでタービン機関車か、ターボ付きのディーゼル機関車のような音がします。
復水式機関車自体、極めて珍しいものなので、私にはこの音で正しいのかさっぱりわかりませんが、ドラフト音というのはシリンダから蒸気を排出する音のはずですから、配管で回収するのであれば、音が変わるような気も致します。
このあたり、詳しい方のご指導をお待ちしております。
音量は十分すぎるほどで、夜間にはちょっと運転できないくらいです。
空冷塔ファンは専用モーターで回転しますし、それも機関車が停止すると回転速度が低下するというかなり凝ったギミックになっております。
ただし、吸気ファンのモーターノイズはかなり高いです。
ドイツ型の機関車としては、とびっきりの威容を誇るこの機関車は欲しくて仕方ありませんでしたが、別格製品のため簡単には手が出ませんでした。
ドイツの模型店でバーゲンになっていたので購入できましたが、今となってはDCアナログ機を買えばよかったです。
というわけで実車は短い一生でしたが、模型の世界ではいつまでもこの威容を活躍させたいところです。
2015/10/14 記
2019/12/15 写真全面更新、文章見直しの上、再録
2020/7/24 Blogger用に再構成
2025/8/25 写真配置変更、一部加筆
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