ドイツ国鉄 DRG 急行用旅客用蒸気機関車 BR 18.1 137号機 (ROCO 43218)

 今回はドイツ国鉄 DRGの急行用蒸気機関車  BR 18.1について紹介したいと思います。

 BR 18.1は、もともとヴュルテンベルク王国邦有鉄道が開発したC形旅客用蒸気機関車であり、もっとも美しい蒸気機関車と称されました。

<BR 18.1主要諸元>

 型式:2'C1' h4v、バッファ間距離:21,855 mm、運転重量:85.2 t、動輪径:1,800 mm、軸重:15.9 t、過熱式四気筒、ボイラー圧力:15bar、出力:1,353kW、最高速度:120 km/h

 1908年 - 1918年までの間、エスリンゲンで41輌が製造されました。

 以前も紹介しましたが、ドイツの鉄道統一に際し、DRGは各王国邦有鉄道が開発した急行旅客用多気筒パシフィック機に型式 BR 18を割り当てました。

 その内訳は下記の通りです。

 BR 18.0 ザクセン XVIII H  三気筒 10輌 製造初年1917~18年製造 1969年引退

 BR 18.1 ヴュルテンベルクC 四気筒 41輌 1909~21年製造 1955年引退

 BR 18.2 バーデンIVf 四気筒 35輌 1907~13年製造 1930年引退

 BR 18.3 バーデンIVh 四気筒 20輌 1918~20年製造 1948年引退

 BR 18.4-5バイエルン S 3/6 四気筒 89輌、DRG生産型 70輌 1908~31年製造 1962年引退

 BR 18.6 18.5のDB Umbau 四気筒 30輌改造 1953~56年改造製造 1965年引退

例外

 BR 18.201 DR高速試験機 1輌 DRがBR 61の動輪等から1960年新製、動態

 BR 18.314 バーデン4hのDR改造機試験機 保存

 BR 18.316、319、323 バーデン4hのDB改造試験機 1969年引退 2輌保存

 BR 18.505 S 3/6、DB試験機として1969年引退 保存

 どの機種も各邦有鉄道の顔とも言える代表機種であり、高性能を発揮するために複式多気筒を採用し(ザクセンXVIIIHを除くと全て四気筒機)、当時の技術の粋を集められ作られましたが、一方、大変高額な特殊機関車であることも事実なようで、新造された機種は上記を合計してもわずか265輌でしかありません。

 これは先日紹介したプロイセン王国邦有鉄道のP 8の3,948輌と比べると、僅か1/10以下です。

 ちょうど第一次世界大戦と敗戦、及びドイツ鉄道の統一、国有化の時期にあたったため、これら高性能急行機関車は早期に製造が打ち切られることになってしまいました。

 そんな中で、BR 18.4-5だけは、後継機BR 03の開発遅延もありましたが、優秀さを認められ、1931年まで作られました。

 このような背景から、BR 18の生産は抑制されたものになりましたし、多気筒機ゆえの整備の困難はありましたが、DRG時代、BR 18各形は制式機BR 01と並び、その高性能を遺憾なく発揮し、ドイツ各地で大活躍しました。

 特にBR 18.3とBR 18.4-5は、戦前期の豪華列車F-Zugラインゴルトの牽引でその名を轟かせました。

 BR 18は戦争を生き残った機種も多いものの、後に作られたEinheitsの高性能機があったことや、やはり四気筒機ゆえの整備の困難さもあり、VXIII HとS 3/6を除き、そうそうに引退してしまいました。

 さて、本題のヴュルテンベルクCですが、「ヴュルテンベルクの貴婦人」とあだ名されていたように、大変流麗なスタイルをしております。

 それもそのはず、煙室扉やキャブ前端が流線形となっている他、前部やランボードもカバーが付けられております。

 どことなく1907年に客車4両を牽いて154.5km/h!を記録したバイエルンの高速試験機S 2/6に似ておりますが、それもそのはず、設計者は同じアントン・ハンメルだそうです。

 ヴュルテンベルクCは一段目のシリンダ排蒸気を二段目のシリンダで使用する複式四気筒機ですが、内側シリンダーを含め、全て第二動輪のクランク軸へ伝達される仕組みとなっております。

 特徴的なのは動輪径で、他鉄道のBR 18と比べると一回り小さい1,800mmが採用されましたが、これはヴュルテンベルクがドイツ南部の丘陵地帯に位置し、勾配線区が多いからだそうです。

 上記の通り、ヴュルテンベルクCは41両が作られましたが、4両が戦時賠償でフランスとポーランドに渡り、DRGにはBR 18.1(101~137)として、37両が継承されました。

 DBには23両が引き継がれたものの、上記のような理由から1955年には全機が引退しました。

 引退時期が早かったためか、残念ながら保存機は存在しません。

 以上、Wikipedia 日本語版 王立ヴュルテンベルク邦有鉄道C型蒸気機関車 より参照、引用しました。

 さて、ヴュルテンベルクCの模型ですが、Modellbau-Wiki によると、量産模型では、ROCOの1986年製品が最初だったようです。

 確か、現在の同社標準となっている機関車+テンダー駆動の最初の製品ではなかったかと記憶しております。

 まず、DB仕様と限定のヴュルテンベルク邦有鉄道仕様が発売されて、1990年にDRG仕様が追加になったように記憶しております。

 また機関車と同時に、ヴュルテンベルクの急行客車も新製品として供給されました。

 こちらもDB Ep.III仕様が最初でしたが、同時に限定でEp.Iのお召し客車の付属した5セットも出ました。

 ROCOの1985年カタログより。

 見開きページで説明もふんだんにあり、力が入っていることがわかります。

 この44006 Württemberger Epoche I (1909-18)ですが、同じ頃に発売された、FLMのPreussen Gloria Zugと並び、話題を呼びました。

 ただし44006はレアアイテムであり、日本で中古を見ることはまずありません。

 私も30年以上の間、一度だけ見たように記憶しています。

 なお余談ですが、この44006という品番はROCOでは極めて異例なことに、全く同じ品番で、全然違う製品が出ています。

 現在、44006で検索するとほぼ、「44006 - 8-teiliges Set Güterwagen, ÖBB」がヒットすると思います。

 ROCO製品で、発売されなかった計画品は別にして、同じ品番を使い回すのはこれ以外に例を知りません。

 なお、FLMは同じ品番を使いまわしますね。

 話を戻しまして、ヴュルテンベルクCですが、引退が早かったこともあり、発売当時はあまり欲しいアイテムではありませんでした。

 また中古では邦有鉄道機はよく見かけるのですが、黒/赤機はほとんど見ることがなく、初回発売から16年後の2002年になって、ようやくDB仕様(43217)を入手することができました。

 最初に入手したDB仕様(43217)です。 

 ただし、残念なことにあまり程度が良くなくて……。

 後付部品の欠品もあったように記憶しておりますが、何よりも従輪の抑えバネが欠品で、特殊な形状ゆえ入手できなかったこと、そして従輪自体はネジ止めではなく、カバーで抑えて止めるのですが、そのカバーのはめ込みの取付が甘く、すぐに取れてしまうという問題があり、こちらを入手したときに手放しました。

 それで、こちらのDRG BR 18 137は、2003年の年末に、EGSで元箱なしの蒸機を三輌買ったときの一輌でした。

 今ほど欧州型の価格が暴落していないときでしたが、結構安かったです。

 実車の写真があまりないのでよくわからないところもありますが、古い製品ながら、実流麗なスタイルが良く再現されていると思います。

 こうして見ますと、同時代や後年の機関車と比べても大変スマートに見えますね。

 後付部品がとても多いのがいかにもROCOですが、古い製品のためか、取り付けの甘い部品が多く、接着しないと紛失してしまいそうです。

 キャブ屋根は延長部分が長短の二種類入っています。

 弁装置周り。

 1980年代製品のため、車輪は黒染めながら、ロッドや弁装置は銀ですね。

 この当時のROCOスタンダードなので車輪の輪芯はプラ製ですが、 決してだるいモールドではないのですが、金属のシャープな車輪にはかないませんね。

 車軸端が露出しないのはいいと思いますが。

 また、未塗装の赤なので、何か安っぽい感じがします。

 ここは、赤く塗ってやると良くなると思います。

 なお、私は知らなかったのですが、Modellbauwikiによると、ヴュルテンベルクCは2005年頃に再生産されたようで、こちらの製品は金属車輪に変更されているようです。

 ナンバーははめ込み式の後付ですが、曲がってしまうのと、下地がテカテカなのであまり好きにはなれませんね。

 これは印刷の方がいいと思います。

 レタリングは今に比べると大分劣ります。

 ステップは、ヴュルテンベルク邦有鉄道機ならではの形状をしていますね。

 煙室扉上の前照灯と炭水車中央上部の尾灯は後付部品であり、点灯しません。

 説明書では取り付けることになっておりますが、私の知る限り、DRG時代の蒸機は原則2灯であり、この場所は両方共ランプ掛けだったのではないでしょうか?

 私のはガッチリと接着してあり、簡単に取れそうもないなので、このままにしておくつもりです。

 KPEV S 10など、この時代の蒸機にはランボード下に動輪が露出しない機種が多いですが、整備上は好ましくなかったでしょうね。

 これまたROCO製品の例に違わず、箱がだめなので、部品が取れたり、壊れたりしそうです。

 私のは元箱なしなので、手放した43217の箱に入れておりましたが、先ごろようやく、IMONの箱に入替えました。 

 ややキャブが傾いているように見えますね。

 流線型のキャブがかっこいいですね!

 バタフライスクリーンの形状が一風変わっていますね。

 邦有鉄道形式の炭水車。ヴュルテンベルク2'2' T 20形。

 Einheitsのテンダーとは明らかに形状が違います。

 

 上記の通り、ROCOのBR 18.1は、炭水車と機関車の両方を駆動します。

 本方式の最初期製品ですので、走りの方は相応ですし、モーターのせいかわかりませんが、うちのは速度が低めです。

 今回久しぶりに走らせたのですが、速度が遅い上に、騒音もあったので、給脂することにしました。

 こちらは購入以来、あまり使うこともなく、一度も整備していなかったのです。

 いかにもROCO製品らしく、一筋縄では分解できませんでした。

 まず機炭の解結ですが、機炭間に配線がないので、炭水車は炭水車側のネジを外すと、簡単に外れました。

 デジタルでは無理な構造ですが、これはとても良いと思いました。

 それから炭水車のボディを外しますが、ネジがないので、炭水車の幅を広げて爪を外すと思い、やってみました。

 しかし、どうにも外れません。

 こういうのは無理すると100%壊しますので、説明書を見ることにしました。

 その結果、方法は間違っていなかったのですが、よく見ますと……、炭水車のライトを外す絵がありました。

 そうなんです。

 この製品は炭水車のライトがボディを貫通しているため、ライトケースを外さないとボディが外れないのです!

 でも、無理しないで良かったです。

 光学繊維を折ってしまっては、ライトがつかなくなってしまいますので。

 ということでライトを外しますが、存外きつく、細い光学繊維が折れないかドキドキでした。

 おまけにライトケースは抜きにくいんです。

 どうも、抜け防止に光学繊維に引っかかるようになっているようですので。

 ようやくの思いでライトケースが抜けますと、ボディは簡単に外れました。

 それにしても普通の製品のように、ライトを下部車体側に固定すればいいだけのことで、どうしてこんな面倒な構造にするのか……、相変わらずよくわかりません。

 炭水車ボディが外れると、後はネジ2本を外せばモーターカバーを兼ねたおもりが外れ、簡単に分解できました。

 分解してみると面白い構造で、両軸モーターの前側にフライホイール付きのユニバーサルカップリングがあり、機関車を駆動します。

 と同時に、後ろ側のウォームで炭水車後方台車の二軸を駆動します。

 炭水車の二軸の伝導は等価でした。

 昔の日本型で、片方の台車からもう片方の台車へ伝導するのがありましたが、動力が等価にならないのでスムーズな走りが期待できません。

 やはり、モーターから等価で動力を伝達することが望ましいと思います。

 走行性能がいまいちなので、昔の低性能な85009と思いましたが、そうではなく開放型の85060系でした。

 モーター軸に直結しているウォームギアが引っ込んでおり、ウォームホイールとずれてしましたので、位置を調整しました。

 この際の注意事項ですが、85060は絶対にモーターコイルを抑えて軸を回してはいけません!

 これをやるとモーター軸が空回りし、モーターコイルからコミュテーターにつながる細い配線を切ってしまいます。

 こうなるとモーターは絶対に回りません。

 大昔分解した記憶では、マブチモーターはFA-130Aでも、モーター軸とモーターコイルはしっかりと固定され、簡単には空回りしないような構造になっていたと思います。

 確か、コイルの位置する場所のモーター軸は断面が円形ではなく、四角になっており、空回りしなかったのでは?

(何分にももう半世紀近く前の話ですので、あまり良く覚えておりません)

 ところがROCOの85060はコイルの中心は断面が円形の樹脂であり、コイルを抑えて軸を回すと、簡単に回ってしまうのです。

 その際、整流子は別体の樹脂ですので、軸と一緒に回るため、配線が切れてしまいます。

 一度切れてしまうと修理は不可能です。

 以上、かつてモーターに直結しているフライホイールを外そうとして、モーターコイルを抑えてフライホイールを回した結果、モーターを壊したことがありますので、絶対に間違いありません。

 その時の残骸です。

 わかりにくですがコイルの中心にはプラ製のパイプが通っており、ここに軸がセットされます。

 左のコミュテーターも軸にセットされますが、相互には接続されていないため、コイルを持って軸を回すと、簡単に共回りして配線が切れてしまうのです。

 こんな話は、どこを見ても書いてありませんが、100円のモーターでさえ、絶対に空回りしないようになっているのに、高額な模型鉄道用モーターがこんなでたらめな構造ではだめすぎますね。

 それで、片台車が集電のため、集電がよく、炭水車単体だけでも走りました。

 いつも通り、ウォームはタミヤのシリコーングリス、その他にはKATOのユニクリーンオイルを給油・給脂しておきましたが、残念ながら整備前後であまり変わりませんでした。

 LiliputのDRG Rheingoldを牽かせましたが、客車が重いためか、動き出しは低電圧ですが、パックを振ってもあまり速度が上がりません。

 なお、本機は機関車駆動でもありますので、ウォームへ給脂したかったですが、機関車側の分解は大変そうだったのでやめました。

  写真が少ない故、BR 18.1がどんな客車を牽いたのか、いまいち判然としませんが、ROCOのヴュルテンベルク客車が似合うのでしょう。

 残念ながらうちには三輌しかないので、ちと寂しいですね。

 なぜか持っているLiliputのバーデン客車(DRG Ep.II)も似合いそうに思いますし、Ep.3aのDB客車でもそれほどおかしくないのかも。

2003/12/29 入線

2018/7/27 記  2020/3/18 写真全更新、文章を一部見直しの上、再録

2020/6/24 Blogger用に再構成


 

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