UP GTEL 26 動態復活作戦 その1
先日入手しました「Nゲージ KATO」ですが、5月23、24日に、時間が取れましたので、現状確認と応急修理を行いました。
私は小さなダンボール箱に立てて、3輌入れています。
取り出したのが26Bでしたので、これから現状把握を行い、修理を検討することにいたしました。
なお、GTELですが、電気式DLとは異なり、二輌で一ユニットを構成しています。
よって、こちらでは車番で呼ぶことにします。
26:運転台付、26B運転台なし
まず車体を外します。
ブラス製品は多数の小ねじでシャーシーとボディが停められていることが多いのですが、こちらは6本のネジで止められておりました。
恐らく2mmネジですね。
これ、こちらでは入手が難しいです。
いつものことながら、ネジは回しにくい場所にあります。
特にこの26Bは真ん中の2本はともかくとして、車端の4本は台車の影で回しにくいです。
この際、ドライバーが車体に下手に当たると、色が剥げてしまいますので、慎重に行いました。
ようやくの思いでネジが抜けました。
このネジ、腐食防止のためか、ステンレスなのですが、ステンレスネジは磁石につかないので、こういう狭い場所への取り付けが大変難しいです。
今回、止める相手が真鍮のL材ですからまだ良いのですが、ステンレスネジはかじりやすいので使いたくないですね。
とは言うもののこのサイズは持っていないので、また使うことにします。
次にボディとシャーシーを分離します。
真鍮製品は抜けにくいことが多いですが、こちらは転落事故の影響か、車端に変形があるため、より抜けにくかったです。
写真が悪くてすいません。ボディ左側の梁下が曲がっているのがわかると思います。
ともかく壊さないように、傷つけないように作業は慎重に行いました。
それはともかくご開帳です。
あっ……、これはひどい。
なんとゴムジョイントが完全にぐずぐずになって破断しているじゃないですか!
これじゃあ、絶対に動きませんね。
更に……、なんとマシマの缶モーターを装備しています。
どう見ても1960年代の製品と思うのですが……。
動力自体は、両軸モーターを平ギアで受け、下部に伝達し、それから横に動力を伝え、動軸に取り付けられた各軸のウォームを回す方式です。
いわゆる「○○(モーター型式)+ウォーム」という昔の天賞堂の標準的な動力で、70年代以前の日本形(例えば珊瑚)などでも使われていました。
熊田が使ったのももっともです。
しかしながらこの動力はよくないです。
理由として、ウォームは減速比が大きいのは良いのですが、伝達ロスが大変大きく、また抵抗も大きい、その上、かみ合わせがずれると異音や摩耗の原因となってしまいます。
それでもこちらはウォームとウォームホイールの位置が固定ですから、まだいいですけど。
よくウォームの遊びが大きいことを利用して、ウォームとウォームホイール間で台車を振らせているのがありますが、個人的には伝達効率が変化するので嫌いですね。
あと、よくわからないのが、車体の前後で、伝達方向が異なります。
一般的には、ユニバーサルジョイントを入れるために、外側へ伝達するものなのですが。
更に良く観察すると、前後で軸径が変えてあるのも、理由が全くわかりませんでした。
現状が把握できたので、修理にかかります。
まずボディの変形ですが、大きな凹みはなかったのは助かりました。
車端部の変形については、細いヤットコを持っていないので、入手後にチャレンジすることとし、ボディをはめるための最低限の修理に留めることにしました。
修理後の写真です。
両方とも左側が変形しているのがわかると思います。
次に動力ですが、ギアに問題がなければ、モーターが回ればなんとかなります。
そこで思い切って分解することにしました。
幸いなことにこのへんは昔の天賞堂のEF58を分解したことがありますので。
日本製はネジで組まれているのでこういうときには助かります。
灰色に見えるのが恐らくゴムチューブが劣化して溶け出した部分です。
ボディやシャーシーにこびりついていました。
それからまずモーターの動作を確認します。
給電してやると、快調に回りました。
これで第一関門突破です。
次に、台車駆動部を確認しますと、見た感じ、ギアの欠損とか脱落はありません。
これならなんとか行けると思い、スパーギア部を取り外してみました。
すると、茶色い物体が付着していました。
調べてみるとゴム系接着剤です。
ゴムジョイントの劣化物ではありません。
さらに調べて想像がつきました。
一番上のギアは駆動軸の動力を伝達しますが、このギアが抜けてしまったのです。
恐らく空転を防ぐためにゴム系接着剤を使ったのでしょう。
しかし、周囲にも付着してしまったのではないでしょうか?
いずれにしても、異物が歯面に付着していると、異音や抵抗になったり、最悪、歯が折れてしまいます。
案の定、手回ししてみると、硬いです。
これは危険な徴候ですね。
幸いなことに相手はゴム系接着剤、KATOのプラドライバーと古歯ブラシで丹念に取り除きます。
手持ちと交換しようと思ったのですが、何と歯数13という特殊ギアのため、叶いませんでした。
本当は溶剤を使いたいところですが、樹脂を破壊する可能性があるため、この方法でシコシコやります。
ジョイントの劣化物と、ゴム系接着剤を取り除いているところです。
ともかく無理できないので、除去には相当時間がかかりましたが、きれいになりました。
緩み止めに僅かな瞬接を使いました。
次に台車下のカバーを外し、ウォームギア関係を整備します
こちらも一般的な構造ですので、問題はありませんでした。
踏面は汚れていたものの思いの外、傷はありませんでしたので、綿棒できれいにしました。
ウォームもあまり摩耗していないようです。
グリスの付着も少なかったですね
これらからするとあまり走っていなかったのではないでしょうか?
片側を組み上げ、反対側も同じように作業します。
やはりギアの清掃に多大な時間を要しましたが、なんとか出来ました。
次にはジョイントの再生です。
もともとゴムジョイントなので、今回もゴムジョイントを使います。
こんなときのために(ではないのですが……)IMONのシリコーンチューブを買ってありました。
とは言っても私が持っているのは0.9-2.0mmだけですが。
しかし、その前に、劣化したゴムジョイントやギアの付着物をきれいに取り除きます。
モーターの軸にくっついているものは軟化したゲル状のものと、ガチガチに固まったものがありました。
合成ゴムの経年劣化によく見られる現象ですね。
これは爪やKATOのプラドライバー、カッターの背を使って除去しました。
電極側の軸は完全に固化していました。
単純な形状なので、それほど時間をかけずにきれいになりました。
前側台車の延長軸も同様にきれいにします。
それで組み上げです。
まず前方側ですが、こちらは延長軸を使って伝達しています。
2.3mm軸なので、手持ちのシリコーンチューブで問題なく組めました。
しかし、後部はなぜか3.5mm程度の軸になっており、おまけに滑り止めのラチェットが切ってありました。
台車側はテーパーが付いていたのでなんとか入りましたが、それでも抜けてしまいます。
何よりもモーター側は全く入らず、無理に差し込もうとするとゴムが切れてしまいました。
やはり穴径0.9mmでは小さすぎで、もっと太いシリコーンチューブでないとだめですね。
無理は模型にとって最も避けるべきことですので、今回はここまでとしました。
後部台車のウォーム軸を外してしまえば、片台車駆動となりますが、多分走らないので、やめました。
外した部品がなくなったりもしますしね。
今回もネジがどこかへ行ったり大変でした。
探すのに無駄な時間を多く使ってしまいましたよ。
この状態で通電してやると、この方式とは思えないくらい静かにかつスムーズに回りました。
これにはマシマの缶モーターの威力もありますね。
前側台車は伝達軸距に余裕があるので、台車の首振りも全く問題ありません。
ただし後部は、伝達軸距が短いので、首振りには不安が残ります。
それにしてもなぜ、前後で伝達方式を変え、なかんずく軸径を変えたのか、私にはさっぱりわかりませんでした。
こんなの部品の種類を増やすだけでろくなことはないはずです。
正確には計測しておりませんが、前後で台車の位置は変わらないようですし。
ということでさらなる修理は、ゴムジョイントを入手した後となりましたが、その前に連結器の修理を行いました。
うちに来た状態では、前後とも連結器が破損しておりましたので。
後はナックルの反対側が欠損し、前はナックルに取り付けるバネがなくなっていました。
前については、手持ちのカプラーバネを取り付けたのですが、うまく連結できません。
そこでさらに確認すると、ナックル部分が曲がっていました。
転落時に連結器が床に当たって、曲がったようです。
ナックルの向きを直そうとペンチで曲げたら、根本からポッキリと折れてしまいました。
手持ちを使おうと思いましたが、考えてみれば、後部の連結器のナックル側は使えます。
そこで、ナックルを後から、そして本体を前から取り外し、二個一して使うことにしました。
カプラーボックスの接着を剥がし、DU用の棒を慎重に抜くとバレました。
そこで組み上げます。
なんとか行けそうですが、組んでみると何か連結器自体が曲がっています。
そうです、前方の連結器はナックルだけでなく基部で少し曲がっていたのですね。
ダイカストなのでナックル同様、割れてしまうかと思ったのですが、曲がりが小さかったことから、何とか戻せました。
前側には修理品、反対側はカプラーボックスを転用して手持ちを取り付けて、復旧しました。
これにも結構時間かかりましたね。
最後にボディをシャーシーに取り付けて、26Bの今回の補修は終了しました。
全てのネジを止めるのは大変なので、予期せぬ落下事故を防ぐために、2本のネジで止めておきました。
あと分解してわかったのですが、本機にはウエイトが積んでありません。
これは意外でした。
と共に、だから転落事故でもこの程度の損傷で助かったわけです。
もし当時の日本形みたく、十分なウエイトを積んでいたら……、恐らく、真鍮製の車体は完全に潰れていたでしょう。
一方、ウエイトがありませんので、全軸駆動とは言え、牽引力は全く期待できないと思います。
実際、片台車で反対側固定ですと、ほとんど動きませんでしたから。
シャーシーの真鍮板もそれほど厚いものではありませんでしたので、強度等を鑑みれば、安易な補重もしない方がいいですね。
その一方、欧州型のように、駆動軸はダイカストのギアボックスに取り付けます。
従いまして、台車は車輪とは完全に独立しています。
この方式ですと、軸の可動は出来ませんが、車重はダイカストのギアボックスの当たり面で受けるので安心です。
日本型やKATO製品には、車重を車軸端と台車の軸受で受けるタイプがあります。
日本型のように極端に重いと、車軸端や軸受に無理な力がかかり、軸受に摩耗や変形を起こしてしまいます。
繊細な台車など最悪、変形してしまうかもしれません。
軸箱可動なんて聞こえはいいですが、強度的には非常に心配です。
やはり日本型は走る模型ではなく、動く模型なのでしょうね。
それにしても合成ゴムの劣化はすごいものです。
今回も灰色の溶け出した物質は、単にこびりつくだけでなく、一部塗装さえ侵していました。
そうかと思えば、石のようにかちかちになってもいましたし。
延長軸が一部腐食していたのは、ゴムに含まれる硫黄成分のせいでしょうか?
やはり寿命の長い模型鉄道には、合成ゴムは使ってはいけませんね。
さて、今回IMONのシリコーンチューブを使いました。
同社のHPでもメリットを強調しているこの製品ですが、確かにいいと思います。
一般の加硫ゴムと異なり、通常の雰囲気(紫外線フリー)においては、シリコーンゴムの劣化はほとんど進みませんから。
おまけに化学的にも安定ですし。
でも、万能かと言うと決してそうではありません。
ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが、実はシリコーンゴムはゴム強度が合成ゴムに比べるとかなり低いのです。
また伸びや、引っ張り、引き裂き強度も合成ゴムほどの値は期待できません。
あと、あまり硬いゴムは作れません。
従いまして、せいぜい小型モーターまでであり、強力なトルクは伝達できないでしょう。
シリコーンゴムは加硫ゴムに比べて高いのが難点ですが、昔に比べてコストは大分下がりましたし、そもそも模型鉄道は高額品ですから、あまり関係ないので、やはり強度が最大のネックと思います。
本当はすぐに劣化して硬くなって切れてしまうゴムタイヤなど、シリコーンにできればいいのですけどね。
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